自治体のデジタル広告は、どの条件で増額・継続・縮小・停止すべきか
更新日:14 時間前
広告の成果が良ければ、次年度も増額してよいのか
表示回数が増え、クリック単価も下がり、広告経由の予約も伸びた。そうした報告を前にすれば、次年度は予算を増やそうと考えるのは、ごく自然な判断です。
しかし、広告管理画面に表示される成果は、あくまで広告に接触した後に起きた行動を一定のルールで広告へ帰属させたものです。それが、その広告が存在しなければ起きなかった行動と一致するとは限りません。さらに言えば、これまで100万円で得られた平均的な成果が良かったからといって、次の50万円も同じ効率で働く保証はありません。
そう考えると、問うべきなのは「今年の広告は成功したか」だけではないのでしょう。次の予算を加えたときにも政策目的に対応する成果が増えるのか。その成果を受け止める予約枠や交通、相談体制には余力があるのか。さらに、そのために別の施策を諦める価値があるのか。次年度予算の判断は、むしろこちらから始める方が自然です。
その意味では、増額・継続・縮小・停止という選択肢は、広告そのものの良し悪しを評価した結果というより、目的、広告後の導線、計測の信頼性、広告がなかった場合との差、次の追加予算の効果、そして公共的な制約までを見た上での資源配分の結論として捉える方が妥当でしょう。
どこで判断に迷うのか
例えば、数字そのものは悪くないにもかかわらず、次年度に何を変えるべきかだけが決まらない場面があります。こうしたとき、足りないのはさらに細かな広告指標ではなく、数字と意思決定との間をつなぐ基準であることが少なくありません。
次年度も前年と同額の広告費を計上すべきか判断している
受託者から増額提案を受けたが、根拠がクリック単価や平均獲得単価にとどまっている
広告レポートはあるが、予約、相談、来訪等との関係が分からない
目標表示回数やクリック数を達成した後、予算をどう扱うか決まっていない
広告クリックは多いが、サイト閲覧後の行動が増えていない
複数の媒体間で広告費を配分し直したい
議会、財政部門、管理職へ継続・増額の根拠を説明する必要がある

「成果が出た」と「次の予算を置く」は同じ問いではない
この区別は、広告予算を考える上でかなり重要です。過去の成果を評価することと、次の一円をどこへ置くかを決めることは、似ているようで別の問いだからです。
次年度に予算を増やすのであれば、見るべきなのは、追加した予算によって政策目的に対応する成果がどれだけ新たに生まれるか、その追加成果のために払う費用を許容できるか、そして生まれた需要を地域側が受け止められるか、という三つです。現在までの平均値はその判断材料にはなりますが、それ自体が答えにはなりません。
広告管理画面は、何を見せ、何を見せないのか
広告管理画面は、運用を改善する上では極めて有用です。一方で、そこに表示されるコンバージョンを、そのまま「広告によって新しく生まれた成果」と読むと、少し話が変わってきます。管理画面が示しているのは、一定の帰属ルールの下で広告と結び付けられた行動であって、反実仮想までを自動的に示してくれるわけではありません。
例えば、もともと当該地域への旅行を検討していた人が広告を見た後に予約した場合、管理画面では広告成果として計上される可能性があります。しかし、その予約が広告によって新たに生まれたのか、広告がなくても予約されたのかは別に確認する必要があります。
オンライン広告を対象とした大規模研究では、広告接触者と非接触者の観測データを統計的に調整しても、無作為化実験で確認された効果を安定して再現できないことが報告されています。広告配信自体が、関心や行動可能性の高い人を選んで行われるためです。
この点は、Gordonほか「A Comparison of Approaches to Advertising Measurement」および、663件の大規模実験を分析したGordonほか「Close Enough? A Large-Scale Exploration of Non-Experimental Approaches to Advertising Measurement」で詳しく検討されています。
したがって、広告後に起きた行動をすべて広告の効果として扱うのではなく、「広告がなかった場合にはどうなっていたのか」という、直接には観察できない比較対象を何らかの形で置く必要があります。ここで初めて、広告によって新たに生じた増分効果という考え方が意味を持ちます。
Google広告の「コンバージョン リフト測定」公式説明も、広告による因果的な増分を確認するための実験機能として説明されています。ただし、全てのアカウントや予算規模で利用できるとは限りません。
そもそも、この広告には何を担わせていたのか
ところで、広告の成果を論じる前に、もう一つ確認しておく必要があります。その広告には、そもそも何を担わせていたのでしょうか。
観光部門だけを見ても、広告に期待される役割は一つではありません。
重点市場で地域の存在を知ってもらう
閑散期の旅行先候補として理解してもらう
公式サイト、旅行商品、予約ページへ移動してもらう
対象商品の予約、イベント申込、クーポン取得等を促す
特定地区への周遊や、需要の平準化を促す
シティプロモーション部門では、地域認知、政策や暮らしの理解、関係人口施策への参加、移住相談、採用応募等が候補になります。
認知を広げるための広告を予約件数だけで評価すれば、広告の役割を過小評価する可能性があります。他方、予約を促すことを目的とした広告を表示回数だけで成功とするなら、今度は目的から遠すぎる数字を見ていることになります。
結局、成果指標は広告媒体から与えられるものではなく、何を変えるために広告を使うのかという側から選ばなければなりません。
認知目的:重点対象者における認知、理解、想起の変化
比較・検討目的:詳細情報、商品、交通、日程等への到達
行動目的:有効な相談、予約、申込、資料請求、クーポン利用等
表示回数や動画再生、クリックが不要になるわけではありません。ただ、それらはしばしば最終的な評価そのものではなく、なぜ主成果が動いたのか、あるいは動かなかったのかを考えるための診断材料として扱う方が有用です。
観光庁「観光地域づくり法人(DMO)によるKGI・KPI計測に係る手引書」も、旅行消費額や経済波及効果等の地域全体の成果と、Webアクセス、再来訪意向、旅行商品販売等のDMO活動に近い成果を分けています。
地域全体の成果との接続を失わない一方で、広告一つに地域全体の責任まで背負わせない。その間に、広告が直接働きかけられる成果を置くことが、実務上は必要になります。
観光施策全体の指標階層については、「観光施策のKGI・KPIはどう設計すべきか」で詳しく整理しています。
広告を増やす前に、広告の外側で詰まっていないか
広告を増やしたにもかかわらず成果が伸びないとき、広告そのものを改善したくなるのは自然です。しかし、対象者が広告の先で行動できないのであれば、入口を広げても政策成果は増えません。
例えば、広告の外側に次のような行き止まりがないかを見ます。
料金、開催日、交通、所要時間、対象条件が分からない
予約ページへ進めない、または操作しにくい
予約できる商品、空室、参加枠がない
移住相談や資料請求への対応が遅い
現地で二次交通や案内が不足している
繁忙期へ需要が集中し、混雑が悪化している
こうした状態でクリック率だけを改善しても、極端に言えば、離脱する人数を効率よく増やしているだけになりかねません。
広告からの流入は十分にあるのに、その後の行動が増えていないのであれば、最初に考えるべきことは広告増額ではないでしょう。LP、商品、予約、相談対応、交通、現地受入のどこで人が止まっているのかを見た上で、必要であれば広告費の一部をその詰まりの解消へ移す方が、同じ政策目的には近づくことがあります。
実際に、日南市「令和8年度日南市デジタルプロモーション事業等業務委託仕様書」では、広告流入後のLPについて、来訪予約、クーポン取得、相談申込等へ誘導する導線と、成果計測用のサンクスページの設計を求めています。
広告配信と、その先の行動環境とは、別々に管理できても、別々の成果経路として考えることはできません。
成果が悪いとき、広告だけを疑ってよいのか
数字が良いときにも悪いときにも、広告だけを見ていると原因を取り違えます。少なくとも、次の順序で一度ほどいてみる必要があります。
1.そもそも広告が動かす範囲なのか
地域全体の来訪者数や旅行消費額には、広告以外にも、商品、価格、交通、天候、為替、報道、イベント、受入能力等が影響します。
広告だけでは動かしきれない成果を広告の責任にするのではなく、どの段階に直接働きかける施策なのかをまず切り分けます。
2.広告の先に行き止まりがないか
サイト、予約、相談、商品、在庫、空室、交通等を確認します。ここが閉じているのであれば、広告の改善より先に、需要を受け止められる状態を作る必要があります。
3.同じものを、同じ定義で測っているか
コンバージョンの定義、重複計測、計測期間、タグ変更、広告経由以外を含む全体件数との整合を確認します。
前年と今年で計測定義が違うなら、見かけ上は同じ指標でも同じものを測っているとは言えません。数字の差を施策の差として読む前に、比較可能性そのものを確認します。
4.届いてほしい相手に届いているか
クリックが安く増えたことは、運用上は好ましい変化です。しかし、その人たちが政策上の重点対象でなければ、安価であること自体の意味は限定されます。
地域、年代等の属性だけでなく、旅行時期、関心、検討段階、求める情報との適合を確認します。
5.広告がなくても起きたのではないか
可能であれば、広告を配信しない対象群を設ける実験を行います。難しい場合は、非配信地域、配信時期のずれ、段階的な予算変更、事前・事後調査等を組み合わせます。
ただし、単純な前年同月比だけでは、季節、イベント、天候、交通等の影響を除けません。複数の証拠が同じ方向を示すかを確認します。
6.次の予算でも同じ効率が続くのか
これまで100万円を投じて10件の成果が得られたとしても、次の50万円で5件が増えるとは限りません。むしろ、到達可能な対象者を取り切るほど、追加予算の効率が落ちていくことも十分に考えられます。
予算帯、対象、時期ごとに、追加支出と追加成果を確認します。
7.成果を増やすほど、別の負担が増えていないか
成果の数字が伸びていても、その裏で特定地点の混雑、住民不満、事業者や職員の負荷、情報アクセシビリティ、個人情報上の懸念が悪化しているなら、その施策を拡大することが自治体にとっての成功であるとは限りません。
平均CPAでは、次の一円を決められない
これまで使った広告費を、これまで得られた成果で割れば、平均的な成果単価は計算できます。実績を振り返るには便利な数字です。しかし、次の一円をどこへ置くかという問いに対しては、それだけでは足りません。
増額を考えるときには、平均ではなく、追加した部分が何を生んだかを見る必要があります。
追加成果1件当たりの費用 = 追加した広告・制作・分析費 ÷ 広告によって追加で生じたと推定される成果
認知目的なら、追加で認知・理解した重点対象者一人当たりの費用。予約目的なら、追加予約一件当たりの費用。相談目的なら、対象条件を満たす追加相談一件当たりの費用となります。
この費用を、次の基準と比較します。
自治体が政策上許容できる上限
過去の同一条件における追加成果単価
別媒体・別施策へ予算を振り替えた場合の成果
広告以外のボトルネックを改善する費用
成果を受け止めるために追加で必要となる運用・受入費用
業界平均より安くクリックを買えたとしても、そのことと、自治体にとって価値のある追加成果を安く得られたこととは同じではありません。
では、どの条件なら増額できるのか
ここまでを踏まえると、増額は「数字が良かったから」ではなく、少なくとも次の条件が重なったときに初めて選びやすくなります。
広告の目的と主成果が明確である
広告後に行動できる導線、商品、受入枠がある
広告がなかった場合と比べた追加効果が、少なくとも合理的に見込める
次の追加予算帯でも、追加成果の単価が許容範囲内である
対象者が飽和しておらず、追加予算が新たな重点対象へ届く
混雑、住民不満、事業者負荷等が許容範囲内である
契約上、配分変更と検証が可能である
そして、増額する場合にも、一度に大きく動かすより、段階的に増やした方が次の予算帯で何が起きたかを観察しやすくなります。
一定量を加えた後で、追加到達、対象者の質、追加成果単価、同じ対象者への接触の偏り、受入負荷をもう一度見る。増額幅に全自治体共通の正解がない以上、増額それ自体を一つの検証として扱う方がよいでしょう。
現状維持は、判断の放棄ではない
一方で、増やさず、減らさず、現状を維持することもあります。これは必ずしも判断の先送りではありません。
広告の役割が現在も必要で、成果または検証を続ける価値が認められる一方、増額・縮小を正当化する証拠が不足している場合には、現状維持が合理的です。
ただし、その場合には、次にいつ判断するのか、何を追加で見るのか、どの仮説を確かめるのかを決めておく必要があります。理由のない現状維持と、期限を持った継続とは別のものです。
認知や地域イメージ形成のように効果が遅れて現れる施策では、短期の予約だけで停止しない方がよい場合があります。その場合も、認知、理解、想起、検索、詳細情報への到達等の中間成果を測り、無期限継続を避けます。
縮小は、失敗ではなく配分変更である
広告全体に価値があったとしても、その一部を縮小することはあり得ます。縮小を失敗と捉えるより、限られた資源をより効く場所へ戻す配分変更と考えた方が、実態には近いでしょう。
一部地域、対象、時期だけ追加成果が弱い
追加予算が同じ人への反復を増やすだけになっている
クリックは増えるが、重点対象者や有効な行動が増えない
広告全体の効果はあるが、追加成果単価が代替施策より悪い
予算を減らしても必要な検証量と最低限の到達を維持できる
受入体制や住民負荷の上限へ近づいている
その際には、総額だけを削るのではなく、どの対象、地域、時期、訴求を残し、何を削ったのかが後から分かる形にします。
停止は、何をもって合理化できるか
停止もまた、成果が悪かったときだけに選ぶものではありません。目的との接続が失われた場合や、より価値の高い代替案が見つかった場合には、一定の成果が出ていても止めることがあります。
現在の政策目的と接続していない
広告後の予約、相談、商品、交通等が閉じており、改善時期も決まっていない
事前に定めた検証量を確保した後も、追加効果が許容範囲を下回る
対象、訴求、導線を改善しても、次に検証する仮説がない
重大な個人情報、契約、公平性、住民負荷上の問題がある
他の施策へ振り替えた方が、同じ政策目的へ明らかに近づける
停止時には、管理画面、元データ、クリエイティブ、対象設定、計測定義、変更履歴を保存します。
停止した施策を「失敗だった」で閉じるのではなく、どの条件では機能し、どこから機能しなくなったのかを残せれば、その停止自体が次回の発注と検証に使える知識になります。
「分からない」と「効かなかった」を同じにしない
広告の一人当たり効果が小さく、予約や購買等の変動が大きい場合、非常に大きな標本がなければ効果を精密に推定しにくいことが知られています。
LewisとRao「The Unfavorable Economics of Measuring the Returns to Advertising」は、大規模な広告実験であっても投資収益率の推定幅が広くなり得ることを示しています。
とりわけ小規模な自治体広告では、「統計的に明確な差を確認できなかった」という事実と、「効果がなかった」という結論との間には距離があります。
この場合には、次の選択肢があります。
より広告に近く、件数を確保できる中間成果を測る
対象や訴求を絞り、小さな仮説を検証する
配信期間または比較期間を見直す
地域、期間、予算帯を段階的に変える
広告費を縮小し、最低限の検証を継続する
測定費が広告費に見合わない場合は、精度の限界を明示して複数の証拠で判断する
ここでは、「効果がない」と「今のデータでは分からない」を分ける必要があります。
他方で、「分からない」ことを理由に前年度と同じ配分を続けるだけでも、判断したことにはなりません。判断を保留するなら、その保留にも期限と暫定予算上限、追加で確認するデータを持たせるべきでしょう。
観光広告とシティプロモーション広告は、同じ時間軸で測れるか
観光広告は、予約、イベント申込、旅行商品閲覧、クーポン利用、来訪後調査等へ接続できる場合があります。ただし、来訪や旅行消費には広告以外の要因も多く、広告単独の成果と断定しないことが必要です。
シティプロモーション広告では、地域認知、理解、好意、誇り、関係人口、移住相談等、異なる時間軸の成果が混在します。
好意度や動画再生数だけで政策効果とすることはできませんが、短期の移住者数だけで認知広告を停止することも適切ではありません。
扱う成果の時間軸は異なりますが、共通して必要なのは、広告が直接働きかける変化と、その先にある政策成果とを分け、その間を何がつないでいるのかを確認することです。
年度途中で変えられない広告設計は、そもそも検証可能か
ここまで予算配分を変える条件を論じても、契約上、年度途中で何も変えられないのであれば、実務ではほとんど意味を持ちません。
したがって仕様書や実施計画には、配信内容だけでなく、何が起きたら配分を変えるのかという条件まで置いておく必要があります。
広告が担う目的と主成果
基準値、目標値、指標定義、データ源
自治体が閲覧・保有するアカウントと元データ
広告費、制作費、分析費等の区分
対象、訴求、媒体、予算帯別の報告
増額、配分変更、縮小、休止を協議する条件
比較方法と、比較不能な場合の扱い
受入能力と公共的なガードレール
委託終了時に返却するデータ、設定、素材、変更履歴
栃木県「令和8年度とちぎ観光デジタルマーケティング業務」関係資料では、広告の表示、クリック、LP閲覧、広告経由コンバージョン等の報告に加え、広告アカウントの閲覧権限を県へ付与することが示されています。
数値だけが納品されるのではなく、自治体側に広告設定、元データ、変更履歴まで確認できる状態が残ること。その蓄積があって初めて、翌年度に前年を材料として判断できます。
具体的な契約変更の可否は、各自治体の契約・会計・調達担当へ確認する必要があります。
外から見る価値が生まれるのは、何を判断できないときか
広告の目的、導線、全体成果との関係、比較対象、追加成果単価、受入能力までを自治体内部で整理できるのであれば、外部の第三者を入れる必要はありません。
他方、運用の良し悪しではなく、そもそも何を評価し、どこへ予算を置くかという判断そのものが止まっている場合には、広告運用事業者とは別の立場から見る意味が生まれます。
複数の委託先で指標とデータが分断されている
増額提案を、発注者側で査定する基準がない
広告、LP、商品、予約、受入のどこが問題か分からない
次年度仕様書に、配分変更・縮小・停止条件を入れたい
管理画面の実績を、議会・財政部門へ説明できる形に変換したい
株式会社Kerzeでは、特定媒体の運用成績を評価することよりも、その数字が施策目的、導線、費用、委託範囲とどうつながり、次年度の継続・変更・終了をどう判断できるかという側から整理する支援を行っています。
ただし、契約変更、個人情報、行政文書、法令解釈等の法的判断は、自治体の担当部署または各分野の専門家へ確認すべき領域です。
記事のまとめ
ここまで見てきたように、自治体のデジタル広告は、クリック率や広告経由コンバージョンの良し悪しだけを見て増減を決められるものではありません。
そもそも何を変えるための広告だったのかを確かめ、広告の先に行き止まりがないかを見る。その上で、数字を信じてよいのか、届いてほしい相手に届いているのか、広告がなくても起きた行動ではないのか、そして次の追加予算にも同じ価値があるのかを考えていく必要があります。
増額が合理的なのは、これまでが良かったからではなく、次に置く予算にもなお政策上の価値があると考えられるときです。
その意味では、継続も、縮小も、停止も、そして期限を切って判断を保留することも、増額しなかった残余ではなく、それぞれ独立した意思決定です。
最終的に残したいのは、「今年も予算を使い切った」という事実ではなく、なぜそこへ予算を置き、何を見て、どの条件で配分を変えたのかを翌年度の担当者も説明できる状態です。
自治体広告を含め、広告予算の増額・維持・縮小・停止を他の投資先との比較まで含めて整理する場合は、「広告予算を考える記事ガイド」で関連論点を横断できます。
判断条件を一つ、先に書いておく
次年度の予算案を作る前に、「何が起きたら増額し、何が起きたら維持し、何が起きたら縮小・停止するのか」を一つでも先に書いておくと、数字はかなり読みやすくなります。
実務で使える無料テンプレート|観光KGI・KPI設計テンプレート(Google Sheets・Excel)を登録不要で利用できます。
判断を実務に戻す
状態 | 次の判断 |
目的・導線・計測が整い、追加予算でも増分成果が期待できる | 増額を検討する |
現行予算では一定成果があるが、追加分の効果が不明 | 維持し、小規模な増額検証を行う |
クリック等は良いが、広告後の行動が弱い | 広告増額より導線改善を優先する |
計測不備で成果判定ができない | 予算判断を保留し、計測条件を修正する |
目的との適合が弱い、または他施策の期待価値が高い | 縮小・用途変更・停止を検討する |
第三者の意見が必要なケースとは?
広告予算、KPI、成果説明、次年度判断を自組織の中だけでは切り分けにくい場合には、デジタルプロモーションの監査・セカンドオピニオンで、現有資料から判断可能なことと追加確認が必要なことを整理しています。
関連記事
主要参考文献・参考資料
OECD, “Public Communication Scan of France: Raising standards for measurement, evaluation, and learning in public communication,” 2025.
Gordon, B. R., Zettelmeyer, F., Bhargava, N., & Chapsky, D., “A Comparison of Approaches to Advertising Measurement: Evidence from Big Field Experiments at Facebook,” Marketing Science, 38(2), 193–225, 2019.
Gordon, B. R., Moakler, R., & Zettelmeyer, F., “Close Enough? A Large-Scale Exploration of Non-Experimental Approaches to Advertising Measurement,” Marketing Science, 42(4), 768–793, 2023.
Lewis, R. A., & Rao, J. M., “The Unfavorable Economics of Measuring the Returns to Advertising,” The Quarterly Journal of Economics, 130(4), 1941–1973, 2015.
Sethuraman, R., Tellis, G. J., & Briesch, R. A., “How Well Does Advertising Work? Generalizations from Meta-Analysis of Brand Advertising Elasticities,” Journal of Marketing Research, 48(3), 457–471, 2011.
Google広告ヘルプ「コンバージョン リフト測定について」
※本記事は2026年7月18日時点で確認できる公表資料・研究・公式情報に基づいています。広告プラットフォームの機能、制度、自治体の契約条件等は変更される可能性があるため、実務適用時には最新情報を確認してください。
広告予算の増額・継続・縮小・停止を、KGI・KPIや媒体全体の役割まで含めて判断する場合は、「自治体・DMOのデジタルプロモーションを見直す記事ガイド」で関連論点を横断できます。
株式会社Kerzeについて
なんとなく”を終わらせる。根拠を持って「続ける・見直す・止める」を判断できる状態へ。
「どう解決するか」の前に、「何を解決するか」を適切に定めることを何より大切だと考え、株式会社Kerzeは、自治体・各種組合・商社/小売店に対し、事業戦略とマーケティング実務をつなぐ支援を行ってきました。戦略・目的・KPI、予算・発注、業務実施体制を整理しながら、SNS・広告・Web・販促・データ活用などの実務まで、必要な範囲を見定め、実行も含め支援いたします。
執筆・編集:株式会社Kerze



