観光施策のKGI・KPI設計|来訪者数・SNS指標を意思決定につなげる方法【2026年版】
更新日:11 時間前
KPIを決める前に、何を決めたいのか
数字を集める前に、その数字を見た後で誰が何を変えるのかを決めておく方がよい。
地域全体の成果と、年度事業・委託業務・SNS運用が直接担う成果をどう分けるか
KGI、KSF、KPI、診断指標、活動量、ガードレールをどう使い分けるか
来訪者数、旅行消費額、フォロワー数、リーチ、予約数等をどこまで成果として説明できるか
目標値、注意水準、変更・停止条件をどのように分けるか
設計したKPIを、会議、成果報告、委託仕様書、次年度判断へどう組み込むか
観光施策では、来訪者数、旅行消費額、宿泊者数、予約数、Web流入、SNSのリーチやフォロワー数まで、実に多くの数字を取得できます。数字が多いこと自体は悪くありません。ただ、それらをKGIやKPIという名前で並べただけでは、次に何をすべきかまでは決まりません。

数字を置く前に、少なくとも四つを分けて考える
1.その数字を見た後、何を変えるのか
来訪者数や旅行消費額、フォロワー数、広告表示回数は、名前を付けただけでKPIになるわけではありません。数字が変わったときに、施策を続けるのか、対象や訴求を変えるのか、別の場所へ予算を移すのか。その判断まで接続して初めて、管理のための指標になります。
2.地域全体の成果と、一つの施策が動かせる範囲を分ける
旅行消費額や延べ宿泊者数は、地域全体を見る上では重要です。しかし、一つのSNS運用や広告、イベントだけにその数字の達成責任を持たせれば、施策が実際に動かせる範囲を越えてしまいます。上位成果との関係は失わず、それでも個別施策が直接働きかけられる範囲まで責任を近づける必要があります。
3.数字が動いたことと、その施策が動かしたことを分ける
リーチが増えた。Web流入が増えた。予約も増えた。ここまでは観測できます。しかし、それを見て「この施策が来訪を増やした」と言えるかどうかは別の問題です。観測した事実と、そこからの解釈と、因果的な説明は、できるだけ分けておく方が後の判断を誤りにくくなります。
4.目標値より先に、目標を外した後の行動を決める
目標を達成したから続ける、未達だから止める、というだけでは、KPIは評価表にしかなりません。未達なら何を疑うのか、どの水準なら内容を変えるのか、何が起きたら別の施策へ予算を移すのか。そこまで決めておくと、数字が実際の行動へつながります。
すべての数字を、同じ「KPI」と呼ばない
KGIやKPIという言葉には、領域を越えて完全に統一された一つの定義があるわけではありません。DMO登録制度には制度上の定義がありますが、個別事業では用語をそろえただけで運用までそろうわけではありません。むしろ、何のための数字なのかを役割ごとに分けた方が扱いやすくなります。
役割 | 何を表すか | 観光施策での例 |
目指す姿 | 地域や対象者をどのような状態にしたいか | 観光による利益と住民生活が両立し、地域の魅力が持続している |
KGI | 目指す姿への到達度を表す最終成果 | 旅行消費額、経済波及効果、地域利益等 |
KSF | KGIを実現するために重要な条件 | 滞在日数、消費単価、再来訪、需要平準化、地域内調達、受入能力 |
KPI | 重点施策やKSFの進展を確認する成果指標 | 閑散期宿泊、対象商品の販売、平均泊数、再来訪意向等 |
診断指標 | KPIが動いた/動かなかった原因を切り分ける | 対象者への到達、サイト遷移、予約離脱、検索、保存等 |
活動量・納品物 | 何をどれだけ実施したかを確認する | 投稿数、広告配信量、記事本数、イベント回数、商品掲載数等 |
ガードレール | 成果を追う過程で悪化させてはいけない状態 | 住民不満、混雑、苦情、従業者負荷、獲得単価、在庫・受入不足等 |
投稿本数やイベント回数のような活動量も必要です。契約どおり実施したかを見るには欠かせません。ただ、それだけでは対象者や地域に何が起きたのかは分からない。他方、旅行消費額だけを見ても、今月どこを直せばよいのかは分かりません。最終成果と日々の運用との間に、中間の指標が必要になる理由はここにあります。
そして、観測できる数字をすべて目標にしないことも重要です。目標に置かれた数字があれば、担当者も受託者も、その数字を改善する方向へ合理的に動きます。上位成果との関係が弱い数字まで目標化すれば、数字は良くなったのに事業は良くならない、ということが起こり得ます。
同じ数字でも、誰を評価しているかで意味が変わる
同じ地域で、同じ観光事業を見ていても、地域戦略を評価しているのか、年度事業を評価しているのか、委託先を評価しているのかで、見るべき数字も責任の置き方も変わります。
評価対象 | 主な問い | 指標の例 |
地域の観光戦略 | 地域全体は目指す状態へ近づいているか | 旅行消費、宿泊、住民満足、給与、需要平準化、地域内調達 |
年度重点事業 | 今年度の重点課題は改善したか | 閑散期宿泊、対象商品の販売、対象地区への周遊、再来訪意向 |
委託業務 | 委託先の活動は、合意した直接成果を生んだか | 予約ページ到達、対象者の獲得、商品販売、問合せ、データ整備 |
媒体・チャネル運用 | 媒体は与えられた役割を果たしたか | 対象者への到達、詳細閲覧、保存、サイト遷移、再接触等 |
例えば、自治体の観光戦略で旅行消費額をKGIに置くことは考えられます。しかし、SNS運用委託の受託者へ地域全体の旅行消費額の達成責任を持たせるのは、通常は範囲が広すぎます。旅行消費額には、宿泊供給、商品、価格、交通、天候、為替、他施策等も影響するためです。
この場合、SNSには「重点市場へ情報を届け、比較・検索・予約等の次の行動へ接続する」といった役割を置きます。その上で、対象者への到達、詳細閲覧、サイト遷移、予約ページ到達等を確認し、可能な範囲で予約・来訪・消費のデータと接続します。地域KGIとの関係を失わず、担当者が改善できる範囲まで指標を近づけることが要点です。
では、実際にどの順番で設計するか
1.数字より先に、詰まっている場所を探す
最初に決めるのは、どの数字を取るかではなく、何を決めたいのか、そして現状のどこが詰まっているのかです。継続・拡大・縮小・終了のほか、対象市場、訴求、商品、価格、販路、繁忙期と閑散期の予算配分、内製と外注の分担まで、KPIの先には必ず何らかの判断があります。
ここで、情報発信のKPIを考える前に、そもそも問題が情報不足なのかを確認する必要があります。予約できる商品がない、二次交通が弱い、繁忙期には受け入れきれない、Web予約が使いにくい。そうした制約が主要因なら、SNSの投稿量を増やしても上位成果は動きにくいでしょう。
2.誰が、どこまで動かせる数字なのか
地域全体、複数年度の戦略、単年度事業、個別委託、媒体運用のどれを評価するのかを決めます。あわせて、自治体、DMO、観光協会、事業者、交通事業者、委託先等について、誰がその指標へ直接働きかけられるか、誰と共同責任を持つかを整理します。
3.施策から地域成果まで、途中を飛ばさずにつなぐ
情報・商品・受入環境を整える → 対象者へ届く → 興味・比較・予約が進む → 来訪する → 滞在・周遊・購買する → 満足する → 再来訪・推奨する → 地域へ利益が残る
全ての施策がこの全工程を担うわけではありません。広告は到達から予約までの一部、現地周遊施策は来訪後の移動・購買、CRMは再接触・再来訪等、役割が異なります。どこを変える施策なのかを明示すると、必要なKPIも限定できます。
4.数字に名前を付けるのは、その後でよい
KGIは少数に絞り、KGIを動かす重要条件をKSFとして置きます。次に、重点施策が直接変えようとする成果をKPIにし、原因切り分けに必要な数値だけを診断指標として残します。投稿数等は活動量、過度な混雑や獲得単価等はガードレールへ分離します。
5.同じ名前で、違うものを測らない
同じ「来訪者数」「旅行消費額」「満足度」「エンゲージメント率」でも、算式、対象、期間、データ源が違えば同じ指標ではありません。最低限、指標名、判断目的、算式、分子・分母、単位、対象地域・対象者、除外条件、集計期間、比較期間、データ源、取得方法、取得頻度、確定時期、担当、欠測・推計・定義変更時の扱いを固定します。
制度上の比較よりも、自地域で同じ方法を継続して測れることが重要な場合もあります。定義を変更した場合には、前年と単純比較できないことが分かる履歴を残します。
6.「目標」と「見直しを始める線」を分ける
「何を測るか」と「いくつを目指すか」は別の判断です。まず指標を決め、現在値と過去推移、供給能力、施策量、季節性、外部要因等を確認した上で目標値を置きます。初年度に安定した基準値がない場合は、測定・試行期間として暫定目標を置く方法もあります。
さらに、目標値と判断閾値を分けます。目標値は到達したい水準、判断閾値は「追加確認する」「内容を変える」「予算を止める」といった行動を起こす水準です。この二つを同一視すると、目標未達だけで施策を停止したり、目標達成だけで惰性的に継続したりします。
7.成果を伸ばしても越えてはいけない線を置く
来訪・消費が増えても、混雑、住民不満、自然・文化への負荷、従業者負担、行政コスト、在庫不足等が過度に悪化すれば、施策全体として望ましいとは限りません。成果指標と同時に、悪化させてはいけない条件を監視します。
また、各指標からどこまで成果を説明できるかも先に決めます。広告クリックが増えたことから予約増加を自動的に推論しない、地域の宿泊者数増加を一つのSNS施策へ自動的に帰属しない、といった証拠の境界を設けます。
8.最後に、会議と発注へ戻す
週次・月次には広告、Web、予約、販売等の早い指標、四半期には対象・訴求・商品・販路・予算配分、年次には旅行消費、宿泊、満足度、給与等の遅い指標を確認するなど、指標の変化速度に応じて確認周期を分けます。
さらに、同じ設計を委託仕様書、提案審査、月次報告、成果報告へ反映します。年度末になって初めて「必要なデータを取得していなかった」と判明する状態を避けるには、事業開始前にデータ取得・提出・保管・権限移管まで定める必要があります。
目標未達は、直ちに失敗を意味するのか
KPI運用が形骸化する大きな原因の一つは、目標値だけがあり、その上下によって何をするかが決まっていないことです。少なくとも、基準値、目標値、注意水準、再設計・停止を検討する水準を分けます。
区分 | 役割 | 例 |
基準値 | 現在地と比較起点を固定する | 前年同月、直近12か月平均、初年度実測値等 |
目標値 | 到達したい成果水準を示す | 閑散期宿泊予約を前年比+10% |
注意水準 | 原因確認を始める条件 | 予約ページ到達は増加したが予約率が一定期間低下 |
再設計・停止水準 | 内容変更、予算移動、停止等を検討する条件 | 複数回の改善後も直接成果が改善せず、代替施策の期待値が高い |
判断閾値は、機械的な自動停止ルールである必要はありません。外部環境、データ品質、実施期間、サンプル数等を確認したうえで、再検討を開始する条件として使えます。重要なのは、結果を見た後に都合よく基準を作り替えないことです。
国の目標を、そのまま地域の目標にしてよいのか
国の数字は、地域の数字とは限らない
第5次観光立国推進基本計画は、2026年3月27日に閣議決定され、2026年度から2030年度までを計画期間としています。2030年の政府目標は11項目で、訪日外国人旅行者数・旅行消費額だけでなく、住民生活との両立に取り組む地域数、リピーター数、地方部延べ宿泊者数、国内旅行消費額、宿泊業が創出する付加価値額等を含みます。
これは、観光政策の成果を人数だけで捉えず、消費、地方滞在、再来訪、住民生活、観光産業の付加価値等まで見る方向を示しています。ただし、これらは日本全体の政府目標です。個々の自治体や観光協会が、同じ数値・伸び率をそのまま地域のKGIへ転記する義務はありません。対象区域、供給能力、旅行者構成、データ取得方法、施策主体が異なるためです。
制度上必要なKPIと、経営上必要なKPIは同じか
現行の「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」は2026年7月24日に一部改正され、更新登録要件に係る一部を除き、同年8月1日から施行されています。
新規登録時には、KGIとして旅行消費額が必須です。KPIは、一人当たり旅行消費額、延べ宿泊者数、来訪者満足度、住民満足度を必須とし、観光関連産業従事者の平均給与額、月別来訪者数の平準化率、職員満足度、安定財源確保率を含む8観点で設定・把握する体系です。DMO区分によって一部の扱いには例外があります。
更新登録要件では、旅行消費額に加えて経済波及効果がKGIに加わり、KPIにはDMO自らの活動によるマネジメント成果とマーケティング成果の自由設定KPIが加わります。この更新登録要件は2027年4月1日施行で、2027年3月31日までは旧規定が適用される移行期間です。
申請・更新の実務では、適用時期と様式を必ず観光庁のDMO登録制度ページで確認してください。移行関係は、「DMO登録・更新申請の新様式をどう読むか」でも整理しています。
DMOによるKGI・KPI計測に係る手引書 ver1.0は、地域全体の成果を確認する指標と、重点施策に応じて設定する指標を整理する際の参照資料になります。ただし、制度要件を満たすことと、自組織の意思決定に十分なKPI体系を持つことは同一ではありません。制度上の共通指標に加え、自地域の戦略・実行計画・責任範囲に対応した指標が必要です。
フォロワー数やリーチをKPIにしてはいけないのか
一律に排除する必要はありません。問題になるのは、その数字が何を確認するためにあるのか、どの上位成果へつながるのかが曖昧なまま、数字だけが目標になる場合です。
観測された数字 | 直接確認できること | その数字だけでは確認できないこと |
フォロワー数の増加 | 継続的に接触可能なアカウントが増えた | 来訪・宿泊・旅行消費が増えたか |
リーチ・表示回数の増加 | 情報へ接触したアカウント・機会が増えた | 旅行意向や来訪行動が変化したか |
Web流入の増加 | 対象ページへの訪問が増えた | 予約・来訪・購買が増えたか |
予約数の増加 | 予約という行動が増えた | 増加が当該SNS・広告によって生じたか |
地域の宿泊者数の増加 | 地域全体の宿泊実績が増えた | 一つの媒体・委託事業の因果効果か |
地域を知らない重点層への接触がボトルネックなら、対象者への到達は重要な先行・診断指標になります。再接触が媒体の役割ならフォローやメール登録、公式情報への案内が役割ならサイト遷移や資料閲覧を確認します。
一方、フォロワー数やリーチを最終目標として強く評価すると、担当者や受託者は反応を得やすい題材、広い対象、短期的なキャンペーン等へ寄せる誘因を持ちます。媒体指標は無価値なのではなく、上位成果との接続と、目標化した場合に生じる行動変化を確認する必要があります。
SNS指標を詳しく確認する場合は、「フォロワー数をKPIにすると、自治体SNSで何が起きるのか」をご確認ください。
数字が動いた。それを「施策の効果」と呼んでよいのか
観光施策の成果説明では、証拠の強さを少なくとも4段階に分けると、過大評価と過小評価の双方を避けやすくなります。
観測事実:リーチ、Web流入、予約、宿泊等の数値が実際にどう変化したか
直接説明できる範囲:その数値から確実に言える変化は何か
寄与仮説:施策が変化に寄与したと考える理由と、残る代替説明は何か
因果効果:比較対象、実験、統計的推定等によって、施策がなかった場合との差をどこまで推定できるか
全ての自治体・DMOが厳密な因果効果を推定する必要はありません。費用や期間に対して過剰になる場合があります。ただし、厳密な推定をしないことと、観測事実を因果効果として断定することは別です。現在どこまで確認できているかを明示し、その不確実性が意思決定を変える場合だけ追加検証を行います。
アウトプットとアウトカムの区別は、「アウトプットとアウトカムを混同しない観光事業評価」で詳しく整理しています。
一つの事業に置き直すと、数字の役割が見えやすい
仮に、地域の上位成果を旅行消費額とし、「閑散期に重点層の宿泊と地域内購買を増やす」情報発信事業を実施するとします。次の構造は、全地域共通の正解ではなく、因果仮説と責任範囲を可視化するための例です。
区分 | 指標例 | 確認すること |
地域KGI | 年間旅行消費額 | 地域全体の最終成果 |
KSF | 閑散期宿泊、一人当たり消費、予約可能な商品の充実 | KGIを動かす重要条件 |
事業KPI | 対象期間の宿泊予約、対象商品の販売額、予約ページ到達 | 情報発信事業が直接近づける成果 |
診断指標 | 重点層への到達、保存、サイト遷移、商品ページ閲覧、予約離脱 | 未達の原因切り分け |
活動量 | 制作本数、広告配信量、参加事業者数、商品掲載数 | 履行・実施状況 |
ガードレール | 獲得単価、問合せ負荷、在庫・受入不足、繁忙期偏重 | 成果拡大に伴う副作用・制約 |
同じKPI未達でも、打ち手は同じではありません。到達自体が少なければ配信条件・媒体・対象設定を確認します。到達はあるがWeb遷移が少なければ訴求やCTAを確認します。Web流入はあるが予約へ進まなければ、商品、価格、在庫、予約UI、交通条件等を確認します。
予約が増えても消費額が伸びない場合は、広告量を増やす前に商品単価、滞在時間、地域内回遊、販売機会等を確認します。成果が伸びても混雑や事業者負荷が増えている場合は、時期・場所の分散や受入上限を検討します。
KPIは、成功・失敗を一つの数字で判定するだけのものではなく、『次にどこを確認するか』を示す診断装置として使えます。
いまのKPIは、実際に判断を変えているか
新しい指標を追加する前に、現在の計画書、仕様書、提案書、月次報告書、成果報告書を並べ、次の7点を確認します。
その指標を見て、誰が何を判断するのか説明できるか
地域全体の成果と、個別事業・委託先が直接担う成果を分けているか
KGIから個別施策までの因果仮説を説明できるか
算式、対象、期間、データ源等が固定され、翌年度も比較できるか
目標値を、現在値、過去推移、供給能力、施策量等から説明できるか
その数字へ働きかけられる責任主体と、共同責任の範囲が明確か
達成・未達の後に、継続・変更・拡大・縮小・終了等の判断条件があるか
これは点数化して合否を出す診断ではありません。一項目だけでも、重要な予算・契約判断に影響するなら優先して見直す価値があります。反対に、複数の不足があっても、直ちにKPI体系全体を作り直す必要があるとは限りません。判断に影響する部分から修正します。
KPIは、仕様書と月次報告まで降りて初めて機能する
観光プロモーションや情報発信を外部委託する場合、仕様書には制作物だけでなく、評価・データ・改善の運用を記載します。
事業目的と上位計画・地域KGIとの関係
委託業務が直接担う成果と、担わない成果
主要KPI、診断指標、活動量、ガードレール
指標の定義、データ源、取得頻度、基準値、目標値、判断閾値
広告・SNS・Web等のアカウント、分析画面、元データの閲覧・管理権限
定例報告で求める観測事実、解釈、原因仮説、改善案の区別
自治体、DMO、事業者、受託者のデータ取得・確認分担
欠測、仕様変更、外部環境変化、計測定義変更時の扱い
終了時に返却・移管するデータ、定義書、設定、運用履歴
月次報告も、数値一覧だけで終わらせません。少なくとも、①履行・実施量、②観測された変化、③原因の解釈と不確実性、④次回までに変更すること、の順で整理します。これにより、受託者の履行確認と、事業全体の効果検証を混同しにくくなります。
月次レポートの読み方は、「委託先の月次レポートで確認すべき点|SNS・広告の成果を判断する方法」でも整理しています。
そのデータを取れば、本当に判断は変わるのか
新しいKPIを設けるからといって、すぐに人流データやDMP、CRM、大規模アンケートを導入する必要はありません。まず、すでに持っている統計、宿泊・施設・交通・事業者データ、既存調査、Web・SNS・広告の分析、予約・販売実績を並べてみる方が先です。
そのデータが手に入ったとき、施策、予算、対象、発注条件のどれかを本当に変えるのか。何も変わらないのであれば、その計測は精緻でも、意思決定上の価値は高くないかもしれません。
測定費用が大きい指標は、毎月取得せず年次・数年ごとに確認し、その間を先行指標や診断指標で補う方法もあります。精緻さを最大化するのではなく、取得費用、運用負荷、判断の改善幅、判断が遅れるコストの釣合いを見ます。
追加計測の前には、「データ不足と分析不足の違い」と「データを取得しない判断はいつ合理的か」も判断材料になります。
テンプレートは、空欄を埋めるために使わない
ここまでの内容を、自地域・自事業へ適用するためのテンプレートを用意しています。Google Sheets版とExcel版があり、登録不要で利用できます。
単にKGI・KPI名を書き込む表ではなく、評価対象、判断事項、KGI・KSF・KPI・診断指標・活動量・ガードレール、責任主体、因果仮説、指標定義、目標値・注意水準、未達時の原因確認、判断記録までを一つの構造で整理します。
入力できない欄があれば、無理に埋めなくて構いません。むしろ、その空欄こそ、まだ決められていないことや、確認できていないことを示しています。KPI設計の目的は表を完成させることではなく、次の判断ができる状態を作ることです。
結局、どこから直せばよいのか
現在の状態 | 次に行うこと | 追加支援が必要になる場面 |
地域成果・個別施策・活動量が分かれ、判断条件もある | 現行設計を維持し、定義と判断履歴を継続する | 原則不要。定期的な再評価で足りる |
KPIはあるが、数字が変わっても判断が変わらない | 判断事項・閾値・変更候補を追加する | 関係者間で判断基準が一致しない場合 |
SNS指標だけで上位成果を説明している | 成果階層と証拠の範囲を分ける | 現在の資料でどこまで言えるか第三者確認が必要な場合 |
必要なデータがなく判断できない | 結論を変え得る最小限の追加計測を定める | データ不足か分析不足か切り分けられない場合 |
成果報告はあるが次年度方針を決められない | 継続・修正・縮小・停止の選択肢を比較する | 成果検証と次年度設計を一体で整理する場合 |
株式会社Kerzeでは、KGI・KPIの数値を並べること自体ではなく、目的、対象、施策、現場運用、評価、発注、意思決定の接続を整理します。新しい施策の追加や、既存委託先の変更を前提とはしていません。
確認したいこと | 支援例 | 価格の目安 |
特定のKPIや成果説明だけ確認したい | デジタルプロモーション・セカンドオピニオン | 220,000円(税込)から |
成果報告書を次年度判断へ使えるか確認したい | 成果説明レビュー | 50万円前後から |
継続・変更・縮小・停止を比較したい | 成果検証・次年度改善設計支援 | 88万円から |
次年度の仕様書・計測条件から見直したい | 発注・計測設計支援 | 個別見積 |
観光協会・DMO向けの情報発信、集客、運用体制まで含む支援全体は、「観光協会・DMO向けご支援」で確認できます。
この設計だけでは扱えないこと
統計調査の専門的な標本設計、産業連関表を用いた経済波及効果の算定、厳密な因果効果推定を主目的とする統計分析、税務・法務・個人情報保護の適法性判断、大規模なデータ基盤の開発・保守は、株式会社Kerzeの専門領域外です。
これらが必要な場合は、統計、経済、法務、情報システム等の専門家と連携し、Kerzeは目的、判断事項、業務要件、発注条件、役割分担の整理を担う形が適切です。
あわせて考えておきたい論点
フォロワー数をKPIにすると、自治体SNSで何が起きるのか:いいね、フォロワー、リーチ等を目標化したときに起きる行動の歪みと、診断指標としての使い方を整理しています。
アウトプットとアウトカムを混同しない観光事業評価:実施量と対象者の変化を分け、成果報告を次年度判断へつなげる方法を整理しています。
委託先の月次レポートで確認すべき点|SNS・広告の成果を判断する方法:月次報告を履行確認・成果確認・改善判断へ分けて読む方法を整理しています。
観光プロモーションの媒体選びは、『何を始めるか』ではなく『何を止めるか』:KPIを媒体の継続・改善・縮小・統合・休止・終了へ接続する基準を整理しています。
DMO登録・更新申請の新様式をどう読むか:2026年の制度改正と移行期間を、申請・更新実務の観点から整理しています。
原資料・参考資料
観光庁「第5次観光立国推進基本計画」(2026年3月27日閣議決定)
観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン(2026年7月24日一部改正)
※制度情報は2026年9月16日時点で確認しています。DMO登録ガイドライン、KGI・KPI計測手引書、統計の定義・集計方法等が改定された場合は、最新の一次資料をご確認ください。
株式会社Kerzeについて
なんとなく”を終わらせる。根拠を持って「続ける・見直す・止める」を判断できる状態へ。
「どう解決するか」の前に、「何を解決するか」を適切に定めることを何より大切だと考え、株式会社Kerzeは、自治体・各種組合・商社/小売店に対し、事業戦略とマーケティング実務をつなぐ支援を行ってきました。戦略・目的・KPI、予算・発注、業務実施体制を整理しながら、SNS・広告・Web・販促・データ活用などの実務まで、必要な範囲を見定め、実行も含め支援いたします。
執筆・編集:株式会社Kerze

