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フォロワー数をKPIにすると、自治体SNSで何が起きるのか

8月6日
読了時間: 22分

更新日:9月20日

フォロワー数が増えた。それで、何が良くなったのか

自治体や観光地域づくり法人(DMO)、観光協会のSNS運用を見ていると、成果として最初に出てくるのは、たいてい媒体の中で確認できる数字です。


  • いいね数

  • フォロワー数とその増加数

  • 再生数、リーチ数、シェア数

  • 通常より大きく拡散した、いわゆる「バズ」


いいね数やフォロワー数、リーチ、再生数は取得しやすく、前月や前年とも比較しやすい。何より、庁内で説明するときにも扱いやすい数字です。だからこそ、月次報告や委託仕様書、次年度KPIの中心に置かれやすくなります。


ただ、ここで少し厄介なのは、数字を観測することと、その数字を増やすことを目的にすることとでは、運用の意味が変わることです。


考えたいのは、いいね数やフォロワー数を捨てるべきかどうかではありません。


それらを「増やすべき成果」として置くのか、それとも別の成果へ向かう過程を読むための数字として置くのか。その違いが、実際の運用をかなり大きく変えます。

観光施策全体のKGI・KPIの設計方法は、別記事「観光施策のKGI・KPIはどう設計すべきか」で整理しています。本記事では、SNSで特に目標化されやすい三つの数字が、何を示し、目標にしたときに組織の行動をどう変えるのかへ焦点を絞ります。



いいねやフォロワーは、何を教えてくれる数字なのか

いいね数もフォロワー数も、もちろん無価値ではありません。


投稿に反応が生じたか、継続的に接触できる可能性のあるアカウントが増えたか、通常より広く情報が拡散したかを見るには有用です。日々の運用を改善するための数字としては、むしろ積極的に見た方がよいでしょう。


問題は、その数字が増えた後に何を判断するのかが定まっていないまま、数字そのものだけを追い始めたときです。


  1. 誰の反応かを確認していない

  2. 何の認識・行動を変えるための数字か決めていない

  3. 数字が増えた後に起きる変化を確認していない

  4. 数字を増やすために、題材、対象者、表現、予算配分を変えている

  5. 数字が変化しても、継続・修正・停止等の判断が変わらない


この状態では、集計を続けても判断の精度はあまり上がりません。むしろ、反応の取りやすい題材へ寄せる、重点対象者ではなく反応しやすい人へ広げる、理解に必要な情報を削って短くする、といった行動が合理的になっていきます。数字を追うほど、事業目的から離れることがあり得るわけです。


問題は、媒体内の数字を測ることではありません。その数字を増やすことが、いつの間にか事業や政策の目的そのものへ置き換わることです。

そう考えると、いいね数やフォロワー数、バズは、最終成果というより「誰に届き、何が伝わり、その次に何が起きたのか」を考えるための途中の数字として置く方が扱いやすくなります。



まず、数字が直接言えることを狭く捉える

最初に、それぞれの数字から直接確認できる範囲を限定します。


数字

主に示すこと

それだけでは示さないこと

いいね数

表示されたコンテンツに対して、いいね操作が記録された量

対象者への到達、内容理解、好意の強さ、比較検討、予約、来訪、購入、追加効果

フォロワー数

現在、そのアカウントをフォローしているアカウントの累積数

現在も活動している人数、対象者の割合、毎回の到達、顧客数、来訪者数、関係の深さ

バズ

通常時を大きく上回る表示、再生、共有、反応等が生じた状態

重点対象者への到達、地域・商品への記憶、次の行動、再現性、採算、地域への利益

「バズ」はMetaが定義する単一の指標ではありません。本記事では、通常時の基準を大きく上回る拡散が生じた状態の総称として使用します。


Meta Business Help Center「About Instagram Insights」は、Instagramインサイトの概要として、閲覧、インタラクション、新規フォロワー、共有したコンテンツ等を案内しています。これらは、Instagram上で何が起きたかを理解するための媒体内データです。


Metaは、これらを来訪、売上、政策成果の指標として定義していません。媒体内データから事業上の意味を読み取るには、運用者・発注者側が目的との関係を設計する必要があります。



いいね数は「支持」の強さを表しているのか

いいね数は、少なくとも二つの要素が混ざった数字です。


観測されたいいね数 ≒ 表示された規模 × 表示された人がいいねする割合

実際のInstagram指標は、同一人物への複数表示、集計定義、表示面等の影響を受けるため、この式は厳密な算定式ではありません。ただし、絶対数を解釈する際の基本構造は示せます。


例えば、次の二投稿を考えます。


投稿

リーチ

いいね

いいね÷リーチ

A

50,000

500

1.0%

B

5,000

200

4.0%

いいね数だけならAが上です。表示された人の反応割合だけならBが上です。しかし、どちらが事業上優れているかは、この表だけでは判断できません。


  • Aが重点対象者5万人へ届いたなら、広い認知を作る目的に適合する可能性がある

  • Aの大半が対象地域・対象市場の外なら、拡散量の価値は限定される

  • Bが来訪を具体的に検討している人へ届いたなら、少ない到達でも重要な場合がある

  • Bが既存関係者だけの反応なら、新規開拓への寄与は限定される


さらに、Instagramの配信は無作為ではありません。Instagram「Instagram Ranking Explained」は、利用者がコンテンツへ反応する可能性等を予測して、フィード、ストーリーズ、リール、発見タブ等を順位付けすると説明しています。いいね、共有、保存等は、その予測に使われるシグナルの一部です。


そのため、次の循環が生じます。


  1. 初期の対象者へ投稿が表示される

  2. 一部が反応する

  3. 反応等を基に、さらに配信される可能性が高まる

  4. 表示規模が増え、反応可能な人数も増える


観測されたいいね数は、内容への反応だけでなく、配信量と配信過程の影響も受けます。絶対数だけから「支持が強い」「地域への関心が高まった」と解釈すると、露出と選好を混同します。



フォロワー2万人は、「2万人に届く」を意味しない

フォロワー数は、ある時点の累積残高です。


当期末フォロワー数 = 前期末フォロワー数 + 新規フォロー数 - フォロー解除数

この数字は、アカウントが過去に獲得した接点の蓄積を示します。しかし、現在どれだけの人へ届き、どのような行動を生んでいるかは別です。


フォロワーには、次のような違いがあります。


  • 重点市場に含まれる人と、含まれない人

  • 最近フォローした人と、数年前からフォローしている人

  • 現在もInstagramを利用する人と、ほとんど利用しない人

  • 地域を初めて知った人と、住民・既訪者・関係者

  • 投稿を継続的に見る人と、ほとんど表示されない人

  • 予約・来訪・購入可能性がある人と、懸賞等だけを目的にした人


したがって、フォロワーが1万人から2万人へ増えたという事実から直接言えるのは、純増1万アカウントを獲得したことまでです。その1万人が新しい旅行市場なのか、実際に投稿へ接触し続けているのか、来訪や消費へ進んだのかは別途確認する必要があります。


これは、フォロワー増加実績を否定する話ではありません。継続接触できる潜在的な母集団を増やしたことは、運用上の成果になり得ます。


ただし、その価値は、獲得後に何を届け、どれだけ再接触し、どの行動へ接続できたかによって変わります。


MochonらのFacebookページを用いたフィールド実験では、獲得したページへの「いいね」は、企業が投稿を広告で増幅し、販促コミュニケーションの接点として用いた場合にオフライン行動へ効果が確認されました。一方、顧客がページと自然に接触するだけでは効果が確認されませんでした。Mochon et al., 2017


対象媒体はFacebookであり、2017年の研究を現在のInstagramへそのまま一般化することはできません。それでも、接点の保有数と、その接点を実際に活用して生じる効果は別だという点は重要です。


フォロワー数は保有している接点の残高であり、現在の到達、対象適合、行動変化を示すフローではありません。


バズした投稿は、何を再現すべきなのか

一つの投稿が大きく拡散されれば、地域や商品が、それまで接触できなかった人へ知られる可能性があります。報道、検索、問い合わせ、来訪等へ波及する場合もあります。


しかし、一度の大きな数字を、そのまま通常運用の成功とみなすことはできません。


例えば、20投稿のうち1投稿が100万再生、残り19投稿が各1万再生だった場合、平均再生数は5万9,500回ですが、中央値は1万回です。平均値だけを使えば、通常投稿の実態を約6倍に見せます。


また、大きく拡散した理由を分解しなければ再現できません。


  • 地域・商品そのものへの関心だったのか

  • 著名人、動物、季節現象、事件性等への関心だったのか

  • 音源、編集形式、投稿時期等が寄与したのか

  • 既存の話題へ偶然接続したのか

  • 対象者ではない広い層へ拡散したのか

  • 地域名や商品名は記憶されたのか

  • 拡散後に検索、サイト閲覧、予約、来訪等が動いたのか


AkpinarとBergerは、数百件の実際のオンライン広告データと統制実験を用い、感情的な訴求は情報的な訴求より共有されやすい一方、情報的な訴求はブランドが内容の中心になるため、ブランド評価や購買を高めやすいと報告しています。感情とブランドの結びつきを両立させた場合には、共有とブランド成果の双方を高められる可能性が示されました。Akpinar & Berger, 2017


この研究も広告を対象としており、自治体の通常投稿へ効果量を直接移すことはできません。ただし、「共有される内容」と「地域・商品に価値を残す内容」は一致するとは限らないという区別には使えます。


バズの評価では、拡散量だけでなく、少なくとも次を確認します。


  1. 重点対象者への到達

  2. 地域・商品との結びつき

  3. 次の接点への移動

  4. 来訪・購入等の下流変化

  5. 通常運用へ転用できる要素

  6. 問い合わせ負荷、混雑、供給不足等の副作用



SNSの成果は、媒体の外へ出たところから難しくなる

「いいねやフォロワーを最終成果にしない」という主張を、「SNSは売上や来訪に影響しない」と読み替えるべきではありません。


Liadeliらは、2011~2021年の86研究、1,641の効果量、31業種、14プラットフォーム、17か国を統合し、ブランドが保有するSNS発信が、SNS上の反応だけでなく売上にも影響し得ると報告しています。Liadeli, Sotgiu & Verlegh, 2023


重要なのは、同研究が次の差を示していることです。


  • SNS上の反応を高める内容と、売上を高める内容は同じとは限らない

  • 感情的な内容は反応に、機能・便益を伝える内容は売上に適する傾向がある

  • 大きなフォロワー母集団は、売上効果の必要条件ではない

  • 効果は商品、業種、媒体、国、研究方法等によって大きく異なる


つまり、SNSは事業成果へ影響し得ます。しかし、その影響を確認するために、いいね数だけを見ても足りません。


「SNSには効果がある可能性がある」と「多くのいいねを得た投稿ほど効果が高い」は、異なる命題です。

自治体・観光組織については、売上だけでなく、来訪、周遊、消費、サービス利用、住民理解、参加、関係形成等を扱うため、民間ブランド研究の結果を直接一般化できません。各地域で、対象者と目的に対応した証拠を組み合わせる必要があります。



指標を追うほど、運用はその指標へ適応する

最も大きな問題は、三つの数字の測定誤差だけではありません。


担当者や受託者が、いいね数、フォロワー数、再生数等で評価されると、その数字を改善するために合理的に行動します。その結果、次の歪みが起こり得ます。


1.必要な題材より、反応の取りやすい題材が選ばれる

景観、祭り、食、著名人、動物、季節の話題等は、短時間で理解され、反応を得やすい傾向があります。


一方、交通、予約条件、地域文化の背景、混雑回避、閑散期、周辺地域、小規模事業者、住民向け制度等は、重要でも反応が大きくなりにくい場合があります。


いいね数を投稿評価の中心に置くと、必要性の高い情報より、人気の高い題材が優先されます。


2.届けたい人より、反応してくれる人が集められる

フォロワー数を目標にすると、懸賞、相互フォロー、広すぎる話題等によって、低コストで増やせるアカウントを集める誘因が生まれます。


数字は達成しても、重点市場、来訪可能圏、政策対象者等との適合が下がれば、事業上の母集団は改善していません。


3.伝えるべき情報より、反応しやすい表現が残る

料金、交通、営業日、予約条件、対象者、注意事項等は、投稿を重くする要素です。しかし、来訪・購入・申込には必要です。


短い動画の再生完了率や反応率だけを優先すると、見やすいが判断できないコンテンツが増える場合があります。


4.偶然の大当たりが、再現すべき成功事例になる

一度のバズを再現しようとして、通常運用の目的、対象、情報構成を変更すると、偶然性の高い成果へ資源が集中します。


再現すべきなのは再生数そのものではなく、対象者への到達、地域との結びつき、次の行動等に寄与した要素です。


5.発注と評価が、SNSの中だけで完結する

委託仕様書にフォロワー純増、平均いいね数、再生数等だけを置けば、受託者は契約どおりその数字を改善します。


公式サイト、検索、予約、商品、交通、在庫、現地受入等に問題があっても、契約外であれば改善されません。媒体内部のKPIだけで事業全体の成果を求めると、責任と権限も不一致になります。


これは担当者や受託者の倫理の問題ではありません。評価制度に対する合理的な適応です。



公共広報では、「人気がある」と「必要である」は一致しない

自治体や観光組織の発信には、民間企業の販売促進とは異なる制約があります。


  • 特定の事業者や地区だけを過度に優先しない

  • 必要な住民・旅行者へ正確な情報を届ける

  • 地域全体の価値や多様性を扱う

  • 混雑、環境負荷、住民生活への影響を考慮する

  • 説明責任と継続的な参照可能性を確保する


反応数の最大化と、これらの公共目的は一致しない場合があります。


例えば、人気観光地の投稿を増やせば、いいねや再生は増えるかもしれません。しかし、閑散地域への周遊、繁閑差の平準化、混雑緩和、地域内消費の分散が目的なら、人気地点への集中は政策目的と逆方向です。


また、住民に必要な手続情報が、観光写真より反応を得られないとしても、発信価値が低いとは限りません。


公共的な発信では、「多く反応された情報」と「発信すべき情報」を同一にしないことが必要です。

人気指標を使う場合は、正確性、公平性、アクセシビリティ、対象者到達、混雑・供給等をガードレールとして置きます。自治体SNSの管理対象全体は「管理職が先に整理すべき、自治体SNS運用の設計対象」で整理しています。



では、数字をどこに置けばよいのか

いいね数、フォロワー数、バズを削除する必要はありません。上位成果との関係が見える位置へ置き直します。


階層

確認すること

指標例

事業・政策成果

最終的に何を改善したいか

新規来訪、旅行消費、周遊、予約、購入、サービス利用、参加、再来訪

顧客・利用者行動

成果前に、どの行動が必要か

指名検索、詳細閲覧、地図確認、予約開始、問い合わせ、資料請求、来店

接点の成果

SNSが担当した変化は何か

重点対象者への到達、理解、想起、比較候補化、外部サイト移動、再接触

媒体の運用状態

投稿・アカウント内で何が起きたか

表示、リーチ、再生、いいね、保存、共有、フォロー、投稿本数

下位指標は、上位指標の代用品ではありません。上位成果が動いた、または動かなかった理由を探るために使います。


例えば、来訪が増えなかった場合でも、次のように原因を分けられます。


  • 重点対象者へ届いていない

  • 届いたが、内容が理解されていない

  • 理解されたが、旅行先候補へ入っていない

  • 候補へ入ったが、検索・サイトへ移動していない

  • サイトへ移動したが、料金・交通・予約条件で離脱した

  • 予約しようとしたが、商品・空室・受入枠がなかった


いいね数は、このうち一部の反応しか示しません。だから不要なのではなく、担当範囲を限定して使います。



数字は、次の行動を決めるために組み合わせる

単独の数字ではなく、複数の証拠を組み合わせると、改善仮説を立てやすくなります。


観測された状態

直ちには言えないこと

次に確認すること

いいねは多いが、サイト移動が少ない

投稿が無意味とは限らない

認知目的か、行動目的か。CTA、リンク、詳細情報、対象者を確認する

フォロワーは増えたが、通常投稿の到達が変わらない

獲得施策が成功したとは限らない

新規フォロワーの獲得源、属性、獲得後の閲覧、解除、広告・懸賞依存を確認する

一投稿だけ大きく拡散した

運用全体が改善したとは限らない

通常時との差、拡散理由、対象者構成、地域名想起、下流行動、再現可能要素を確認する

反応は小さいが、問い合わせ・予約が増えた

投稿品質が低いとは限らない

少数の重点対象者へ強く作用した可能性と、他施策・季節要因を確認する

反応も外部行動も増えた

SNSの因果効果が確定したとは限らない

前年差、他施策、報道、季節、イベント、検索需要、比較対象を確認する

反応は増えたが、来訪満足度や受入状態が悪化した

成功とは言えない

混雑、在庫、交通、問い合わせ負荷、住民影響を確認し、配信量を含めて見直す

完全な因果推定ができない場合でも、時系列、地域差、投稿群比較、識別URL、予約記録、来訪理由調査等を組み合わせれば、寄与の確からしさは高められます。


「測れないからフォロワー数で代用する」のではなく、測定可能な範囲と不明な範囲を分けて報告します。



月次報告は、何を決めるためにあるのか

月次報告へ指標を追加し続けても、判断項目がなければ改善にはつながりません。


各指標について、次の七項目を一行で記録します。


項目

記録内容

目的

何の認識・行動・成果を変えるための指標か

対象

誰の反応・行動を確認しているか

定義

集計期間、分母、オーガニック・広告、投稿群、データ源

基準

前月、前年同月、通常時中央値、計画値、比較対象

結果

数字がどう変化したか

解釈

何が言え、何が言えないか。代替説明は何か

判断

継続、修正、小規模検証、縮小、停止のどれを選ぶか

いいね数が増えたという報告だけでは、次の対応を決められません。


「重点市場向けの交通情報投稿は、通常投稿よりいいね率は低いが、経路ページへの移動が増えたため継続する」「キャンペーンでフォロワーは増えたが、その後の通常投稿到達とサイト移動が変わらないため、同方式での追加獲得を保留する」と記録すれば、数字が意思決定へ接続します。


OECDが2025年に公表したフランスの公共コミュニケーション評価では、調査対象となった直近50キャンペーンのうち49件で何らかの評価が行われていました。一方、評価はリーチ等のアウトプット指標へ偏り、長期的な成果や政策影響はあまり測定されていませんでした。OECD「Public Communication Scan of France」


これはフランス政府機関の調査であり、日本の自治体の実態を示すものではありません。ただし、「評価を実施していること」と「目的に対応した成果を評価できていること」は別だという示唆があります。



仕様書に数字を書く前に、数字が動いたとき何を変えるかを書く

委託成果をフォロワー純増、平均いいね数、再生数だけで定めると、受託者は数字を達成する方法へ最適化します。


仕様書では、少なくとも次を分けます。


媒体内の運用指標


  • 投稿本数、更新頻度、納期

  • リーチ、再生、反応、保存、共有

  • 新規フォロー、解除、フォロワー構成

  • 外部リンク移動、プロフィール行動


その先で起きてほしい変化


  • 重点対象者の認知・理解・比較検討

  • 指名検索、公式サイト閲覧、予約ページ移動

  • 問い合わせ、申込、予約、来訪、購入

  • 周遊、閑散期利用、再来訪、地域内消費


数字を伸ばしても越えてはいけない線


  • 正確性、公平性、アクセシビリティ

  • 対象外フォロワー・懸賞依存の上限

  • 広告費、制作時間、確認時間、問い合わせ負荷

  • 混雑、供給不足、住民・事業者への負荷

  • アカウント、素材、データ、分析履歴の帰属


数字が動いた後に、何を変えるか


  • どの状態なら継続するか

  • どの状態なら題材・対象・導線を修正するか

  • どの状態なら小規模検証へ切り替えるか

  • どの状態なら獲得施策や投稿量を縮小・停止するか


受託者がSNS運用だけを担当する場合、来訪・売上・政策成果を単独で保証させるべきではありません。SNSが直接担う接点成果と、他部署・他事業者が担う予約、商品、交通、現地受入等を分け、データ連携と報告責任を定めます。



それでもフォロワー数をKPIにしてよいのは、どんなときか

いいね数、フォロワー数、バズを目標・準目標として扱う余地はあります。少なくとも、次の条件が必要です。


  1. 目的と重点対象者が定義されている

  2. 数字が上位成果へつながる仮説がある

  3. 分母、獲得源、対象者構成、通常時基準を確認できる

  4. 数字を伸ばす施策と、伸ばさない比較条件がある

  5. 数字の増加後に起きる行動を確認できる

  6. 費用、制作時間、確認時間、問い合わせ負荷を把握している

  7. 正確性、公平性、供給能力等のガードレールがある

  8. 目標未達・達成時の次の判断が決まっている

  9. キャンペーン終了後も効果が残るか確認する

  10. 数字を増やすこと自体が目的になっていないか定期的に監査する


例えば、フォロワー獲得を「重点市場の人へ再接触できる母集団を増やす」と位置付け、獲得源、対象地域、獲得後90日間の到達、サイト移動、解除を確認するなら、フォロワー純増は検証可能な中間指標になります。


反対に、「前年より20%増やす」とだけ定め、誰をどう獲得し、その後何を起こすかがない場合、目標値は管理しやすくても事業上の意味は確認できません。



評価の前に、一度だけ確認しておきたいこと

月次報告、年度評価、次年度予算要求、委託更新の前に、次を確認します。


  1. SNS運用で最終的に変えたい状態は何か

  2. 誰の認識・行動を変えたいのか

  3. いいね、フォロー、共有は、その変化のどこに位置するか

  4. 反応した人が重点対象者か確認できるか

  5. 絶対数だけでなく、リーチ等の分母を確認したか

  6. オーガニック、広告、キャンペーンを分けたか

  7. フォロワーの累積残高と、現在の到達を分けたか

  8. バズ投稿と通常投稿を分けたか

  9. 地域・商品と無関係な題材の反応を成果へ含めていないか

  10. 検索、サイト、予約、来訪等の次の行動を確認したか

  11. 他施策、季節、報道、イベント等の代替説明を確認したか

  12. 数字を伸ばすために、必要情報や公共性を損なっていないか

  13. 費用と内部業務量に見合う結果か

  14. 数字が変化したことで、実際に何を変更するのか

  15. 同じ資源を別のボトルネックへ配分する方が有利ではないか


回答できない項目が多い場合、SNS運用を直ちに停止する必要はありません。


ただし、いいね数やフォロワー数の増加を根拠に、投稿量、委託費、キャンペーン費等を増やす合理性も確認できていません。計測方法を整え、小規模な検証へ切り替えます。



この数字だけでは、なお決められないこと

本記事から、フォロワー数、いいね率、再生数等の普遍的な適正値は導けません。


必要な水準は、目的、対象者、地域人口、市場規模、季節、商材、媒体、既存認知、広告利用、投稿形式、アカウント履歴等によって変わります。他地域・他社の平均値をそのまま目標にしても、同じ成果は保証されません。


また、SNSから来訪・売上までの因果効果を、すべての自治体・小規模事業者が厳密に推定できるわけではありません。個人単位の追跡は、費用、技術、個人情報、運用負荷の制約も受けます。


その場合も、次の段階は分けられます。


  • 実測できた事実

  • 事実から支持される解釈

  • 他の説明を排除できない仮説

  • 次回確認するための計測・検証案


証明できないことを断定しない一方、完全な証明ができるまで何も判断しない状態にも陥らないことが必要です。



判断を実務に戻す

状態

次の判断

フォロワー・いいね等を診断指標として使い、上位成果と分けている

継続して観測する

フォロワー増加そのものが最終目標になっている

政策・事業成果に接続する指標へ組み替える

一度のバズを運用能力の証拠として扱っている

再現性・対象適合・行動変化を追加確認する

反応は高いが来訪・予約・相談等との関係が不明

導線と中間指標を確認する

数値を増やすために投稿内容や対象が歪んでいる

KPIの利用方法または評価制度を見直す



次の運用で、先に決めておくこと

フォロワー数、いいね数、再生数等を何の判断に使うのか、上位成果とどう接続するのか、数字が動いたときに何を変えるのかを決めます。


この議論の外にあること

株式会社Kerzeは、非公開アルゴリズムの完全な解明、バズやフォロワー増加の保証、SNS単独による来訪・売上・政策成果の保証は行いません。


また、個人情報、広告表示、キャンペーン規約、著作権、行政契約等の法的判断、大規模な顧客データ基盤の開発、交通・商品・在庫・現地受入等の専門実務は、必要に応じて各分野の担当部署・専門家と連携して確認すべき領域です。



結局、フォロワー数を何のために見るのか

いいね数、フォロワー数、バズは、SNS上で何が起きたかを知るために必要な数字です。


しかし、それだけでは次を判断できません。


  • 狙った人へ届いたか

  • 地域や商品への理解が深まったか

  • 比較・検索・予約・来訪・購入へ進んだか

  • その変化がSNSによって追加的に生じたか

  • 費用や副作用を含めて、同じ施策を続けるべきか


さらに、三つの数字を目標にすると、担当者・受託者は数字へ適応します。反応を得やすい題材へ偏る、増やしやすいフォロワーを集める、必要な条件説明を削る、単発のバズを再現しようとする。この状態では、指標が施策を測るのではなく、指標が施策を作ります。


必要なのは、数字を捨てることではありません。


いいね数、フォロワー数、バズを、成果の代用品から、成果へ至る仮説を診断する材料へ戻すことです。

最終的に問うべきなのは、数字が大きいかではありません。


  • 誰の反応か

  • 何の変化を示すか

  • 次に何が起きたか

  • その数字を見て何を変えるか

  • 数字を伸ばす過程で何を損なっていないか


この五点へ回答できるとき、媒体内指標は判断に使える情報になります。


回答できないまま数字だけを追うと、SNSの運用成績は管理できても、事業・政策目的への寄与は評価できません。



外から見る意味が生まれるのは、どこか

株式会社Kerzeは、自治体、観光DMO、観光協会、地域事業者等を対象に、SNS運用の数字を事業・政策上の判断へ接続する設計を支援しています。


具体的には、次のような内容が対象です。


  • 事業目的、重点対象者、SNSの担当範囲の整理

  • KGI・KPIと媒体内指標の階層化

  • フォロワー、反応、外部行動等の定義・比較条件の整理

  • 月次・四半期報告の判断項目と会議運用の設計

  • 委託仕様書、評価基準、継続・修正・停止条件の整理

  • 既存委託先の報告内容に対する第三者評価

  • 計測可能な範囲、不明な範囲、追加調査の優先順位の整理


フォロワー数やいいね数を否定することが目的ではありません。現在取得できている数字から判断できることを限定し、次の予算・運用変更に必要な証拠を整えます。


既存の委託先がいる場合も、委託先の変更を前提とせず、目的、契約範囲、報告指標、役割分担の整合を確認できます。支援内容は「デジタルプロモーションの監査・セカンドオピニオン」でご確認いただけます。




主要参考文献・参考資料



※本記事は2026年8月6日時点の公開情報を基に作成しています。媒体仕様、指標定義、官公庁・国際機関の資料が改定された場合は、該当箇所の再確認が必要です。



株式会社Kerzeについて


なんとなく”を終わらせる。根拠を持って「続ける・見直す・止める」を判断できる状態へ。


「どう解決するか」の前に、「何を解決するか」を適切に定めることを何より大切だと考え、株式会社Kerzeは、自治体・各種組合・商社/小売店に対し、事業戦略とマーケティング実務をつなぐ支援を行ってきました。戦略・目的・KPI、予算・発注、業務実施体制を整理しながら、SNS・広告・Web・販促・データ活用などの実務まで、必要な範囲を見定め、実行も含め支援いたします。


執筆・編集:株式会社Kerze

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