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地域ブランド事業の成果報告書から、次年度の改善をどこまで判断できるか

  • 7月24日
  • 読了時間: 19分

株式会社Kerzeでは、広告・プロモーション事業の評価において、活動量、メディア成果、行動成果、支援対象者の成果、費用を分けて確認する必要があると考えています。


本稿では、この評価方法を実在する公開報告書へ適用し、公開情報だけから何を判断できるかを具体的に検証します。(なお、本分析は関係事業者から委託を受けて実施したものではなく、公開資料を対象とする独自分析です。)


今回題材として取り上げる令和4年度 地域新ブランド事業「ミタカビト」報告書は、三鷹商工会が2023年3月に公開した資料。地域ブランドの立ち上げから、Webサイト、SNS、広告、事業者取材、大学との連携、講習会、市場調査までを一冊にまとめたものです。


本稿で検討するのは、「ミタカビト」という事業自体の成否でも、関係者や委託先の能力でもありません。公開された報告書の情報から、発注者や事業主体が次年度の継続・増額・縮小・変更をどこまで判断できるかです。


結論を先に示すと、この報告書からは、初年度にブランドの基盤が構築され、一定の認知獲得と運営上の学習が生まれたことは確認できます。次年度も掲載事業者を増やし、取材・発信を継続するという方向も合理的です。


一方で、どの施策が支援対象事業者の経営成果に寄与したか、広告費に見合う成果があったか、どの媒体へ次年度予算を重点配分すべきかまでは判断できません。活動報告としては情報量が多い一方、資源配分を決める評価資料としては、費用、事業者別成果、計測定義、比較基準が不足しているためです。


評価項目

判断

主な理由

初年度の事業基盤構築

確認できる

Web、SNS、制作体制、取材資産等が形成された

メディアKPIの達成

確認できる

Instagramフォロワー目標を上回った

事業の継続性

確認できる

後年度も掲載事業者と発信が拡大・継続した

掲載事業者の経営成果

判断できない

事業者別の事前値・事後値がない

広告の総費用対効果

判断できない

総費用と最終行動が示されていない

媒体別予算配分

判断できない

最適化目的と成果指標が揃っていない

アンケートの改善材料としての価値

ある

サイト改善に使える具体的意見がある

アンケートの代表性

確認できない

標本設計と分母が明瞭でない

次年度の掲載拡大

一定の合理性がある

基盤形成と後年度の継続を確認できる

Instagram・検索広告の増減額

判断できない

増分効果、総費用、CVが不足している


この差は、報告書の「良し悪し」よりも重要です。地域ブランド事業では、メディアが伸びることと、支援対象事業者が良くなることを分けて測らなければ、事業の目的と評価が徐々にずれていきます。


まず分けるべきは「事業」「報告書」「評価設計」である

公開資料を読む際には、少なくとも次の4つを混同しないことが必要です。

  1. 事業そのものの品質

  2. 公開されている報告書の品質

  3. 発注・評価設計の品質

  4. 受託事業者や協力者の業務品質

公開報告書に費用や成果指標が記載されていないからといって、実務で計測されていなかったとは限りません。別の納品資料、広告管理画面、内部会議資料、契約関係資料に記録されている可能性があります。また、このPDFが委託先の納品原本なのか、三鷹商工会が編集した公開版なのかも、公開情報だけでは特定できません。

したがって、本稿で評価できるのは、あくまで「公開資料から何が確認でき、何が確認できないか」です。資料の不足を、そのまま事業の失敗や業務の未実施と読み替えることはできません。


「ミタカビト」は何を解決しようとした事業か

報告書によれば、従来の地域ブランド「TAKA-1」には、新規認定希望者の減少、コロナ禍による対面販売機会の縮小、小規模事業者の人手不足や高齢化に伴う情報発信力の弱さといった課題がありました。


そこで「ミタカビト」は、商品を認定するブランドから、三鷹の事業者そのものの強みや魅力を取材し、WebサイトやSNSで発信するコミュニティブランドへ重心を移しています。事業者が個別に確保しにくい「知恵」「時間」「能力」を共有し、商工会、外部の専門家、クリエイター、大学生が共同で発信基盤をつくる構想です。


この転換には合理性があります。課題が個々の商品の品質だけでなく、事業者が自社の強みを言語化できないこと、発信素材を制作できないこと、デジタル施策に割ける人員が少ないことにあるなら、認定制度だけを継続してもボトルネックは解消しません。共同の取材・制作・発信基盤を設けることは、分散していた制作費と運用能力を束ねる選択肢になります。


初年度のゴールも、売上の即時増加だけではありませんでした。報告書では、2023年3月までに目指すブランド像を明確にし、翌年度に向けた事業計画を磨くこと、既存ブランドより知名度を高めること、会員満足度を向上させること、商工会職員のスキルや役割認識を高めることが掲げられています(報告書p.5)。


つまり、初年度は「完成した事業の収益評価」ではなく、「事業モデルと運営能力を立ち上げる形成期」と読むのが公平です。


報告書から確認できる成果

1.事業の運営基盤と共通資産が作られた

報告書からは、委員会3回、専門家との定例会24回、SNS講習会3回、ブランドロゴ、公式Webサイト、Instagram・TikTok等のアカウント、6事業者の記事・写真・動画、プレスリリース、市場調査、広告運用が実施されたことを確認できます。


これらは単発の広告配信とは異なり、次年度以降も使用できる資産を含みます。ブランドコンセプト、サイト、制作フロー、取材記事、クリエイターとの関係、大学との連携、商工会側の運用経験は、継続利用できれば初年度だけで費用を消費したことにはなりません。


特に、事業者の魅力を第三者が取材し、文章・写真・動画として残した点は重要です。地域の小規模事業者に不足しやすいのは、投稿回数だけではなく、顧客や取引先へ説明できる形に強みを翻訳した素材です。報告書では、取材を通じて事業者が自らの強みを再認識した可能性も記されています。


2.初年度のメディア目標は達成された

Instagramは2022年10月11日に初回投稿を行い、2023年3月8日時点で投稿58件、フォロワー1,807人、フォロー中2件と報告されています(報告書p.17)。成果報告では、目標フォロワー数1,500人を超えたことを「当初のKPIを超えたファンづくり」と整理しています(報告書p.22)。


目標値に対する実績確認という意味では、これは明確な達成です。新規アカウントの立ち上げ期に、投稿制作、広告、キャンペーンを組み合わせ、計画したフォロワー規模を上回ったことは、運用上の成果として扱えます。


ただし、ここで確認できるのは「フォロワー獲得目標を達成した」という事実です。「1,807人のファンが形成された」「地域事業者の経営成果が改善した」まで自動的に意味するわけではありません。この点は後ほど詳しく扱います。


3.広告管理画面の数値が一部開示されている

巻末には、Instagram広告について、リンククリック数、クリック単価、リーチ、エンゲージメント、エンゲージメント単価が掲載されています(報告書p.37)。

施策

報告指標

実績

単価

リーチ

Instagram広告1回目

リンククリック

226

40円

4,374

Instagram広告2回目

投稿エンゲージメント

537

17円

4,040

Instagram広告3回目

投稿エンゲージメント

3,487

5円

9,574

Instagramキャンペーン広告

投稿エンゲージメント

252

120円

3,477

広告単価が丸められていると考えられるため概算にすぎませんが、実績数と単価を掛けると、媒体費相当額は順に約9,040円、約9,129円、約17,435円、約30,240円、合計約65,844円となります。


この再計算は、正確な広告費を確定するものではありません。制作費、運用費、調査費、景品費、送料等を含まず、単価も丸められているためです。ただし、報告書に総額がなくても、少なくとも媒体配信規模の概算を把握する手掛かりにはなります。


4.後年度の継続は、初年度評価を肯定側に修正する

初年度報告だけで事業を評価すると、短期的なメディア数値に視野が偏ります。後年度の状況も確認する必要があります。


三鷹商工会が2025年6月に公開した令和7年度の掲載希望事業者募集では、それまでに53事業者の魅力を発信してきたと説明されています。初年度の掲載は6事業者、翌年度目標は累計30事業者でしたから、少なくとも掲載規模は目標を超えて拡大しています。

また、ミタカビト公式サイトでは2026年2月にも新しい事業者記事が公開されており、立ち上げから3年以上を経ても発信基盤が稼働していることを確認できます。


これは重要な肯定材料です。初年度に作ったサイトや運営体制が短期間で放棄されず、事業者掲載を増やしながら継続したことは、基盤形成と事業継続の成果を示します。


ただし、53事業者の掲載と運用継続は、あくまで規模・活動・持続性の指標です。各事業者の売上、問い合わせ、採用、取引、広報能力がどの程度改善したかは、別に測る必要があります。


フォロワー数を成果として扱う条件

フォロワー数を成果指標にしてはいけない、という単純な結論は適切ではありません。新規ブランドの立ち上げ期に、継続的に情報を届けられる接点を一定数確保することは、中間成果として意味があります。広告配信を停止した後も、投稿を届けられる可能性が残るためです。


問題は、フォロワー数をどの階層の成果として扱うかです。

階層

指標例

フォロワー数の位置づけ

政策・事業者成果

売上、問い合わせ、販路、採用、事業継続

直接の代替にはならない

行動成果

店舗訪問、予約、資料請求、事業者サイト遷移

先行指標になり得る

メディア成果

対象者リーチ、フォロワー、再訪、保存

ここに位置づく

活動実績

投稿数、記事数、取材数、広告配信回数

実施量を示す

フォロワー数を有効な中間指標として使うには、少なくとも次の条件が必要です。

  1. どのような人を獲得したいかが定義されている

  2. 対象地域や関心が事業目的と整合している

  3. 広告、キャンペーン、自然増を分けている

  4. 獲得後も投稿閲覧、保存、サイト遷移等が続いている

  5. 支援対象事業者への送客や問い合わせとの接続を追える

  6. 獲得・維持に要した費用が把握されている


報告書では、フォロー中が2件であることから、相互フォローによらない獲得だったと評価しています。これは一つの補足情報ですが、それだけでフォロワーの関心度や行動価値までは分かりません。キャンペーン景品を目的にした一時的な登録、三鷹地域外の利用者、広告で獲得したものの投稿を見なくなった利用者も含まれ得るためです。


したがって、「目標1,500人に対し1,807人」はメディアKPIの達成として認める一方、「1,807人のファン形成」や「地域事業者への成果」と同義にはしない、という扱いが妥当です。


支援対象事業者の成果とメディア成果を区別する

この事業の主たる支援対象は、報告書自身が述べるように「三鷹の地で頑張っている事業者」です。これに対し、WebサイトやInstagramの閲覧者は、支援対象者ではなく、事業者の魅力を届ける相手です。


この二者を分けると、評価構造が明瞭になります。


メディア側で測ること

  • 対象地域・属性へのリーチ

  • 記事閲覧数と読了

  • 保存、共有、再訪

  • 事業者別ページへの流入

  • 事業者サイト、地図、予約、電話等への遷移

  • 1件の有効行動を得るための費用


支援対象事業者側で測ること

  • 取材前後で強みを説明できるようになったか

  • 制作された写真・動画・文章を自社でも再利用したか

  • 問い合わせ、来店、予約、商談、採用応募が増えたか

  • 新しい取引先、連携先、メディア掲載につながったか

  • 自社SNS・Webサイトの更新能力が高まったか

  • 外注費や制作時間を削減できたか

  • 6か月後、12か月後にも便益が続いているか


報告書は、事業者の強みを発掘する機会やITリテラシー向上を成果として挙げています。しかし、公開資料の範囲では、6事業者の事前値・事後値、個別の反応、問い合わせや売上、素材の再利用状況は示されていません。


そのため、「取材・制作という支援が提供された」ことは確認できますが、「事業者の経営課題がどの程度解決したか」は判断できません。次年度の評価では、メディア全体の合計値とは別に、支援事業者単位の成果表が必要です。


広告費用と成果の関係はどこまで読めるか

Instagram広告については、配信単位の成果と単価が示されているため、媒体費の概算や施策間の相対比較はできます。しかし、最適な広告だったか、翌年度に増額すべきかまでは判断できません。


第一の理由は、4回の配信で最適化目的が揃っていないことです。1回目はリンククリック、2・3回目とキャンペーン広告は投稿エンゲージメントが成果指標です。クリックとエンゲージメントでは、広告配信システムが探す利用者も、得られる行動も異なります。単価だけを横並びにして「3回目が最も効率的」とは言えません。


第二の理由は、広告関連費用の全体像がないことです。媒体費だけでなく、企画、クリエイティブ制作、運用、景品、発送、調査、発注者側の確認工数を含めなければ、事業としての費用対効果は算出できません。


第三の理由は、最終的な有効行動が設定されていないことです。キャンペーンでは応募163人、コメント44人、いいね168件と報告されています。仮に、報告されたエンゲージメント単価120円から概算した媒体費約30,240円だけを用いれば、応募1件当たり約186円です。しかし、これは景品費、送料、制作・運用費を含まない暫定値であり、応募者が後に記事を読み、掲載事業者を利用したかも分かりません。

次年度の判断に必要なのは、「安く反応を集めたか」だけではなく、「誰のどの行動を、総費用いくらで増やしたか」です。


検索広告による流入増加をどう評価するか

報告書のリスティング広告資料では、表示回数66,890回、クリック613件、クリック率0.92%が示されています(報告書p.27)。クリック率は、613÷66,890×100=0.916%であり、掲載値と整合します。Google広告ヘルプも、クリック率を「クリック数÷表示回数」と定義しています。


したがって、「広告によって613回のサイト流入を得た」という活動成果は評価できます。Google広告ヘルプのトラフィック計測に関する説明に照らしても、クリック数とクリック率は、広告からWebサイトへアクセスした規模を把握する指標です。

一方、報告書本文の「広告前のGoogleからのクリック数40件」と「広告による613件」を比較して約15倍とする説明には、慎重な読み方が必要です。

  • 40件は自然検索のクリック、613件は広告クリックであり、流入の種類が異なる

  • 比較期間と集計開始日が完全に揃っているかが明瞭でない

  • 広告を止めれば失われる有料流入と、自然検索の基礎流入は役割が異なる

  • 613件のうち、問い合わせ、掲載応募、事業者ページ遷移等に至った件数が示されていない

  • 広告費総額が示されていないため、CPCや問い合わせ獲得単価を検証できない

  • ブランド名検索と一般キーワード検索、検索広告とディスプレイ等が集約されている

よって、「流入が増えた」ことは確認できても、「自然検索が改善した」「認知が15倍になった」「問い合わせが増えた」「費用対効果が高かった」とまでは言えません。


なお、検索広告の目的には会員問い合わせの増加も掲げられていました。次年度には、クリックをコンバージョンと呼ぶのではなく、問い合わせ送信、掲載応募、電話、事業者サイト遷移など、事業上意味のある行動を別のコンバージョンとして設定する必要があります。


アンケートは改善材料として有用だが、代表性は持たない

市場調査では、Instagram投稿または広告を見た人を対象にGoogleフォームで回答を募り、公式サイトの理解度や読みやすさを確認しています。報告書本文では、活動目的を理解できた人が87%、記事を「読みやすかった」「やや読みやすかった」とした人が89%と説明されています(報告書p.20)。


この調査は、Webサイトの改善点を集める探索的調査としては有用です。「画像を増やしてほしい」「価格情報がほしい」「文字や装飾を改善してほしい」といった具体的な声は、編集方針を決める材料になります。


しかし、三鷹市民、地域の潜在顧客、掲載候補事業者全体の評価へ一般化することはできません。


第一に、回答者はInstagram投稿または広告の接触者です。巻末集計でも、ミタカビトを知った媒体の81%がInstagram、回答者の72%が女性でした(報告書p.26)。既にアカウントへ反応した人を中心とするため、非認知層や否定的な層が入りにくい自己選択バイアスがあります。


第二に、報告書本文には「先着10名」との記述があります。一方、巻末図表には、10名を超える回答母数を想定しなければ説明しにくい比率が含まれています。


ただし、公開資料だけでは、本文の「先着10名」と巻末図表が、同一の調査対象・集計範囲を指しているかを確認できません。先着10名が回答者全体ではなく返礼対象者を意味する可能性や、設問ごとに有効回答数が異なる可能性もあります。


したがって、ここで集計上の誤りを断定することはできません。一方、回答総数、設問別有効回答数、複数回答の有無、返礼対象者の範囲が明記されなければ、87%や89%という比率を正確に解釈できないことは確かです。


第三に、回答者への返礼を予定し、先着方式で募った調査です。返礼自体が不適切なのではありませんが、早く反応するアクティブな利用者へ標本が偏りやすくなります。総務省統計局も標本調査に関する解説で、母集団を反映する標本を抽出し、偏りを少なくすることが重要だと説明しています。


したがって、このアンケートは「利用者の代表的評価」ではなく、「反応の早いInstagram接触者から得た改善仮説」と位置づけるのが適切です。

次年度には、目的に応じて調査を分けるべきです。

  • サイト改善:実利用者へのユーザビリティ調査

  • 認知測定:地域住民・想定顧客を対象とする定点調査

  • 掲載価値:掲載事業者への事前・事後・追跡調査

  • 加入促進:未参加事業者へのニーズ・障壁調査

一つのアンケートですべてを判断しようとすると、誰の何を測った数値なのかが曖昧になります。


次年度に必要なKPI

内閣府のEBPMに関する説明は、政策目的を明確にしたうえで、合理的根拠に基づいて政策を企画し、政策効果に関係するデータを活用することを重視しています。地域ブランド事業でも、KPIは「取れる数字」ではなく、目的達成までの因果関係と次の判断を支える数字として設計する必要があります。


ミタカビト型の事業であれば、次の5階層が考えられます。

階層

次年度KPIの例

判断に使う場面

最終成果

掲載事業者の問い合わせ・予約・商談・売上・採用・連携の変化

事業を継続する価値があるか

事業者成果

強みの言語化、素材再利用率、自社発信頻度、能力向上、満足度

支援内容を改善すべきか

行動成果

事業者別ページ閲覧、地図・電話・予約・外部サイト遷移、掲載応募

どの導線を強化すべきか

メディア成果

対象者リーチ、再訪、保存、共有、読了、フォロワー維持

どの媒体・企画を伸ばすか

活動・品質

取材数、公開数、制作日数、修正回数、事業者負担時間、記事品質

運営体制を改善すべきか

特に重要なのは、集計単位です。メディア全体の合計だけでなく、掲載事業者ごとに、公開前の基準値、公開後1か月、3か月、6か月の変化を記録します。平均値だけでは、一部の人気店が全体を押し上げるため、中央値、改善した事業者の割合、業種別の分布も併記します。


広告については、媒体費、制作費、運用費、景品・発送費、調査費、内部工数を分けたうえで、次を算出します。

  • 事業者ページへの有効流入単価

  • 地図・電話・予約・外部サイト遷移単価

  • 掲載希望事業者の問い合わせ単価

  • 既存フォロワーと新規接触者の行動差

  • 広告停止後も残る自然検索・再訪の変化

  • 広告接触者と非接触者、または配信地域間の差

可能であれば、記事公開時期をずらす段階導入や、配信地域・対象を分けた比較を行います。厳密な実験が難しくても、少なくとも施策前後、前年同期、広告あり・なし、掲載事業者・未掲載事業者の比較を用意すれば、単なる同時発生より強い判断材料になります。


次年度報告書で最低限そろえるべき項目

次年度の報告書は、活動記録を減らす必要はありません。むしろ、現在の丁寧な実施記録に、意思決定用の要約表を追加するのが現実的です。

冒頭の意思決定サマリー

  • 今年度の目的と検証仮説

  • 目標値、実績値、前年値

  • 達成・未達の理由

  • 継続、変更、停止する施策

  • 翌年度予算への示唆


費用と成果の対応表

  • 総事業費

  • 媒体費

  • 制作費

  • 運用・ディレクション費

  • Web保守費

  • 調査費

  • 景品・発送費

  • 商工会側の内部工数

  • 資産として翌年度に残るもの


事業者別成果表

  • 支援内容

  • 制作・掲載日

  • 閲覧と送客

  • 問い合わせ等の変化

  • 素材の再利用

  • 事業者評価

  • 次の改善課題


計測定義

  • 指標名と算式

  • 分母

  • 集計期間

  • データソース

  • 広告・自然流入の区別

  • 重複の扱い

  • 欠測値

  • 比較対象

この4点があれば、報告会での議論は「フォロワーが増えたか」から、「どの支援が、誰に、どの程度の便益を、いくらで生んだか」へ移ります。


この報告書から実際に行える次年度判断

最後に、公開資料から可能な判断と不可能な判断を分けます。


判断できること

  • 初年度にブランド、Webサイト、SNS、制作体制が構築された

  • 6事業者の取材・コンテンツ制作が実施された

  • Instagramの目標フォロワー数1,500人を超えた

  • 広告により一定数のクリック、エンゲージメント、サイト流入を獲得した

  • 講習会やアンケートから、運営改善の具体的な示唆を得た

  • 次年度に掲載事業者とクリエイターを増やす方向には合理性があった

  • 後年度に53事業者まで掲載規模が拡大し、2026年にも事業が継続している


合理的に推測できるが、断定できないこと

  • 共同制作基盤が個別事業者の発信負担を軽減した可能性

  • 取材が事業者の強みの言語化を促した可能性

  • 商工会側にデジタル運用・制作管理の経験が蓄積した可能性

  • SNSや広告が公式サイトの認知拡大に寄与した可能性


追加資料なしには判断できないこと

  • 掲載事業者の売上、問い合わせ、採用、取引への効果

  • 広告の増分効果と総費用対効果

  • Instagram、検索広告、PR、大学連携のどれが最も有効だったか

  • フォロワーの地域・関心・継続行動の質

  • アンケート結果の母集団代表性

  • 予算を増額、減額、媒体変更すべきか

  • 同じ成果をより少ない費用で得られたか


それでも予算判断を迫られた場合の暫定方針

現時点で次年度予算を決めなければならない場合には、成果が確認できた基盤を維持しながら、効果を確認できない施策の全面増額を避け、追加予算を計測と検証へ優先的に配分するのが妥当です。

  • 基盤維持費は確保する

  • 広告費の全面増額は留保する

  • 追加予算は計測基盤へ振り向ける

  • 制作費は再利用価値を含めて判断する

  • 予算の一部を比較検証枠として確保する


結論:活動報告から、資源配分を決める報告へ

三鷹商工会の「ミタカビト」報告書は、地域ブランドの形成過程を、会議、講習、制作、SNS、広告、調査まで含めて公開した点に価値があります。初年度の試行錯誤を外部から追える資料は多くありません。また、後年度に掲載事業者が53者へ拡大し、2026年にも公式サイトが更新されている事実を踏まえれば、立ち上げた基盤が継続利用されたという肯定的評価は強まります。


その一方、次年度予算の配分を決める資料として見ると、フォロワー数やクリック数と、支援対象事業者の成果が接続されていません。費用総額、問い合わせ等のコンバージョン、事業者別の事前・事後、アンケートの分母と抽出方法も不足しています。


次に必要なのは、さらに多くの数字を載せることではありません。政策・事業者成果、行動成果、メディア成果、活動実績を階層化し、費用と対応させ、各指標をどの判断に使うか決めることです。

地域ブランド事業の報告書を読む際の本質的な問いは、「数字が伸びたか」ではありません。

その数字を根拠に、次年度は何を継続し、何を変更し、何を停止できるのか。

この問いに答えられる設計へ移行して初めて、成果報告書は実績を保存する文書から、事業を改善する経営資料になります。


参考資料


なお、本記事は、2026年7月24日時点で公開確認できた資料を対象としています。非公開資料、内部管理資料、契約資料、広告管理画面等は評価対象に含みません。


広告・プロモーション報告書の評価で判断に迷う場合

広告レポートに数値は並んでいるものの、次年度の予算や仕様書をどう変更すべきか判断できない場合には、媒体指標、事業成果、費用、計測方法を分けて確認する必要があります。


株式会社Kerzeでは、自治体・観光協会・DMO・商工団体等を対象に、広告・プロモーションレポートの第三者レビュー、KPI・効果測定設計、委託仕様書の改善、次年度施策の整理を支援しています。現行委託先を変更することが目的ではなく、発注者側が判断可能な材料を整えるための支援です。

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