長崎県波佐見町の公式Instagram支援事例|Kerzeの原点となった、届き続ける発信基盤づくり
更新日:9月20日
長崎県波佐見町の公式Instagram支援は、株式会社Kerzeにとって事業の出発点です。現在の支援範囲は広がりましたが、目的、判断基準、実行、計測、改善を一つにつなぐ考え方の原型は、この仕事の中で形になりました。
ただ、この事例を「フォロワーを増やした成功事例」とだけ捉えると、その後に残ったものが見えません。初期のフォロワー増加には意味がありましたが、より重要なのは、関心を持つ人へ継続して情報を届けられる基盤、地域と発信をつなぐ運用体制、数字を次の判断へ戻す仕組みです。
ここでは、波佐見町側が築いていた土台と、2021年度以降にKerzeが担ってきた役割を分けながら、この事業から何が残ったのかを整理します。
令和2年度|本格運用の立ち上げ
波佐見町では令和2年度から公式Instagramの情報発信を本格的に強化し、当時約1,000人だったフォロワーについて「1年間で1万人」を一つの目標として運用改善を進めました。東京大学・京都大学の学生との連携プロジェクトの中で、町の担当者の方々が現地取材や撮影を重ね、学生側が分析、戦略検討、文章・画像制作等に関わる体制で試行錯誤が重ねられています。
Kerze代表も当時、東京大学の学生メンバーとしてこのプロジェクトに参画していました。法人としての継続支援は2021年度からですが、初期の運用強化から現在まで、立場を変えながら本事業に継続して関わっています。
1年目にはフォロワー1万人、2年目には約2万人へと規模が拡大しました。これは誰か一人の成果ではなく、波佐見町の担当者の方々、学生チーム、地域の事業者や関係者が、それぞれの役割を持って積み上げた結果です。
2021年度以降|法人として継続してきた支援
2021年度以降は株式会社Kerzeとして継続的に支援し、投稿制作そのものだけではなく、その前後にある方針、判断、分析、改善の仕組みまで扱ってきました。主な支援内容は次のとおりです。
公式Instagramのコンセプト・発信方針の整理
年間・月間の投稿計画、個別投稿企画の設計
取材時に確認すべき内容を整理した質問表等の整備
Instagramデータを継続的に確認するための分析用ダッシュボード・スプレッドシートの整備
投稿結果の分析、課題整理、次回に向けた改善提案
運用ガイドライン、業務フロー、役割分担、アカウント保守管理の整備・支援
町内事業者向けの情報発信・SNS活用支援
2026年度からの広告運用と、オーガニック投稿と広告を組み合わせたデジタルプロモーションの改善
個々の投稿を良くすることだけではなく、何を発信するか、どう取材するか、どの数字を見るか、誰がどこまで判断するかを整理し、実行後のデータを次の企画や資源配分へつなげることが支援の中心です。
一般財団法人地域活性化センターが令和6年度に行った現地調査では、2024年度当時の運用体制として、町が発信対象を選定し、波佐見町観光協会が取材から投稿までを担い、Kerzeがコンサルティングと投稿後のフィードバックを行う形が記録されています。関係者で月2回程度、運用方針や投稿内容を共有しながら改善する体制も紹介されています。
ここで示しているのは2024年度調査時点の体制です。運用実務は年度や担当体制に応じて変化し得るため、本記事では現在の細かな役割分担を固定的なものとして扱いません。
立ち上げ期の数字と、その後に残った評価軸
初期フェーズでフォロワー数を追ったことには明確な意味がありました。特にコロナ禍で来訪機会が制約される中、波佐見町に関心を持ち、今後の情報が継続的に届きうる人の母集団を短期間で広げることは、情報発信基盤を立ち上げるうえで合理的な目標の一つでした。
約1,000人から1万人、さらに約2万人へと規模が拡大したことは、波佐見町の情報を受け取る可能性のある関心層を大きく形成したという点で価値があります。一方で、事業が成熟した後までフォロワー数の増加だけを追い続ける必要はありません。
重要なのは、事業のフェーズに応じて評価指標を変えることです。現在は、単に何人がフォローしているかではなく、実際にどれだけ情報が届き、見られ、次の行動や地域との接点へつながっているかを確認する必要があります。地域活性化センターの2024年度調査でも、波佐見町公式Instagramではフォロワー数ではなく閲覧数を数値目標としていることが記録されています。
現在まで残っているものは何か
1. 継続的に情報が届きうる関心層
フォロワー数を目的化する必要はありません。ただ、波佐見町に関心を持つ人が一定規模存在し、新しい情報を継続して届けられる状態そのものには価値があります。単発広告とは異なり、蓄積された接点を次の発信でも活用できるからです。
Kerzeの支援記録では、Instagram上で年間140万アカウント超へリーチした実績も確認しています。ここでいうリーチはインプレッションの延べ回数ではなく、期間中にコンテンツが届いたユニークアカウント数です。フォロワーという保有接点に加え、実際の投稿がより広い人々へ届いていることを確認する指標として扱っています。
2. 閲覧を生むコンテンツについての学習
どの情報が見られるのか、どの見せ方なら届くのかという学習が蓄積されています。地域活性化センターの調査では、波佐見焼の制作過程を紹介したリール動画が72万回を超えて再生された事例も記録されています。重要なのは「バズったこと」だけではなく、地域の中にある何が外部の関心と接続するかを検証できた点です。
3. 地域事業者との接続
初期運用を担った村川氏は、フォロワーが1万人程度になった頃から、紹介した町内事業者の方々から、投稿後の来客について感謝の声をいただくことが増えたと振り返っています。これは厳密な来客増分の因果測定ではありませんが、SNS上の反応だけではなく、地域側からも変化を認識する声が生じたという定性的な証拠です。
4. 誰か一人の熱意だけに依存しない運用基盤
担当者の異動や体制変更がある自治体では、個人の力量だけに依存した運用は持続しません。発信対象の選定、取材、投稿、確認、分析、フィードバックを複数主体で分担し、改善を続けられる状態を残すことは、フォロワー数とは別の重要な成果です。
発信の周辺で確認できる反応
公式Instagramの効果を、個々の来訪や売上へ直接帰属させることはできません。一方で、初期運用では町内事業者の方々から投稿後の来客について感謝の声が寄せられるようになったことが記録されており、現在も町外のファンによる自主的な発信や訪問記録が見られます。これらは因果効果の証明ではありませんが、波佐見町への関心が公式アカウント内の数字だけに閉じていないことを確認する補助的な材料になります。
例えば、一般の方が公式発信で波佐見町を知り、実際の訪問や現地での体験を記録している例もあります(個人による訪問記録)。
他地域へ持ち帰れるのは、数字そのものではない
立ち上げ期のフォロワー目標と、成熟期の成果指標は同じである必要はない
フォロワー数は関心層の規模を示す一つの代理指標であり、最終成果ではない
SNS上の反応だけでなく、閲覧、来訪導線、地域側の反応、運用体制を併せて見る
自治体・観光協会・外部支援者の役割と判断権限を分ける
外部支援者の価値は、代行量だけでなく、現場が判断し改善できる状態を残せるかで評価する
波佐見町と同じ方法をそのまま他地域へ移植すべきだという意味ではありません。地域資源、目的、体制、既存の認知、予算によって適切な設計は変わります。ただし、「何を成果とし、どのような運用基盤を残すか」という問いは、多くの自治体・DMOに共通します。
補足資料
一般財団法人地域活性化センター「令和6年度 自主研究事業」:波佐見町を含む自治体SNS事例の現地調査。現在の役割分担、閲覧数目標、72万回再生の事例等を確認できます。
波佐見町・村川恵太氏インタビュー:令和2年度の運用強化、東大・京大の学生との連携、現地取材、町内事業者からの反応等が語られています。
第6次波佐見町総合計画 前期基本計画:町の観光政策におけるSNS情報発信の位置づけを確認できます。
自組織に残したい運用基盤を一つ決める
フォロワー数以外に、担当者が変わっても残したい運用基盤を一つだけ挙げてください。
関連する支援
Kerzeでは、SNSや広告の運用そのものだけでなく、目的、KGI・KPI、判断基準、役割分担、成果検証、次年度設計まで含めて整理しています。
自治体・DMO向けの現在の支援範囲は、自治体向けデジタルプロモーション支援をご覧ください。
※本記事は2026年9月1日時点で確認できる公開資料と、株式会社Kerzeの支援記録に基づいて整理しています。
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自治体SNSの実際の支援事例から、KGI・KPI、媒体設計、広告、委託・運用体制の考え方へ広げる場合は、「自治体・DMOのデジタルプロモーションを見直す記事ガイド」で関連論点を横断できます。
株式会社Kerzeについて
なんとなく”を終わらせる。根拠を持って「続ける・見直す・止める」を判断できる状態へ。
「どう解決するか」の前に、「何を解決するか」を適切に定めることを何より大切だと考え、株式会社Kerzeは、自治体・各種組合・商社/小売店に対し、事業戦略とマーケティング実務をつなぐ支援を行ってきました。戦略・目的・KPI、予算・発注、業務実施体制を整理しながら、SNS・広告・Web・販促・データ活用などの実務まで、必要な範囲を見定め、実行も含め支援いたします。
執筆・編集:株式会社Kerze


