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売れ筋商品の欠品はどこまで許容すべきか:SKU別に在庫費用と機会損失を比較する

  • 24 時間前
  • 読了時間: 19分
本記事は、数十から数百のSKUを扱い、売れ筋商品の欠品と過剰在庫の双方に悩む小売、メーカー企業等を対象としています。
結論は、売れ筋を一律に「絶対欠品させない」と決めることでも、業界平均の欠品率を目標にすることでもありません。SKUごとに、欠品によって失う取引限界利益、代替購入・購入延期・離反、追加在庫の保有・値下げ・廃棄リスク、商品役割、供給条件を分け、欠品回避・代替誘導・予約受注・計画欠品・補充見送りを選びます。

売れ筋商品は、一度も欠品させてはならないのか

売れ筋商品が欠品すれば、本来得られたはずの販売機会を失います。さらに、その商品を目的に来店した顧客が何も買わずに離れたり、他店へ移ったりすれば、損失は当該商品の売上だけにとどまりません。

したがって、売れ筋商品の欠品を優先的に減らすことには合理性があります。

GruenとCorstenの小売欠品研究では、高需要商品は、欠品一回当たりではなく販売速度を考慮した欠品売上損失が低需要商品より大きく、重要な少数SKUへ管理を集中する有効性が示されています。Gruen & Corsten(2008)

しかし、ここから「売れ筋は欠品率ゼロにすべきだ」と結論することはできません。欠品をゼロへ近づけるほど、通常は次の負担が増えるからです。

  • 仕入・製造資金の拘束

  • 保管、棚、検品、棚卸、移動等の負担

  • 需要予測が外れた場合の値下げ・返品・廃棄

  • 流行、季節、品質、仕様変更による陳腐化

  • 最低発注量やロット増加による余剰

  • 他商品の在庫へ使えた資金・場所の機会費用

中小企業基盤整備機構のJ-Net21も、欠品による機会損失を考慮して在庫を多めに持つ合理性を認めつつ、過剰在庫が保管費、収益、キャッシュフロー、劣化・陳腐化へ与える負担を挙げています。J-Net21「過剰在庫を見直す」

経営上の問いは、「欠品が悪いか」ではありません。


次の一個を欠品回避のために追加保有したとき、回避できる期待損失は、その一個を追加保有する総費用を上回るか。

この比較をSKUごとに行う必要があります。



この記事を読む前に――主要な用語の意味

用語

本稿での意味

SKU

在庫を区別して管理する最小単位です。同じ商品でも、色・サイズ・仕様が異なり、別在庫として管理する場合は別SKUになります。

欠品

顧客が希望する時点・チャネル・数量で商品を提供できない状態です。店頭在庫がゼロの場合だけでなく、棚にはないが倉庫にはある、EC上は販売可能だが出荷できない等も含め、測定範囲を明示します。

欠品日率

対象期間の営業日・時間のうち、欠品していた割合です。欠品の長さは分かりますが、その間に何件・何個の需要を逃したかは分かりません。

サイクルサービスレベル

補充から次の補充までの周期のうち、一度も欠品しなかった周期の割合です。欠品が起きた頻度を表しますが、欠品数量の大きさは表しません。

フィルレート・数量充足率

顧客需要数量のうち、手持在庫から直ちに提供できた数量の割合です。本稿では、売れ筋の供給実績を確認する中心指標とします。

リードタイム

発注・製造指示から、販売可能な在庫として入荷するまでの時間です。平均だけでなく、遅延やばらつきも確認します。

安全在庫

需要やリードタイムの不確実性に備え、通常見込む需要量に加えて持つ在庫です。売れる見込みのない余剰在庫とは区別します。

取引限界利益

一個の販売価格から、商品原価、決済、包装、配送補助、販売手数料等、その販売に伴って増える費用を差し引いた金額です。欠品損失は売上高ではなく、原則として失われる限界利益を基礎にします。

代替・延期・離反

代替は別商品を買うこと、延期は入荷後まで購入を待つこと、離反は購入を断念するか他社・他店へ移ることです。欠品需要のすべてが失注になるわけではありません。

在庫保有費用

資金調達・資金拘束、保管、保険、棚卸、劣化、破損、陳腐化、値下げ、廃棄等、在庫を追加保有することで増える費用です。仕入代金全額と同じではありません。

要点は、欠品日率が「どの程度の時間、商品がなかったか」を示すのに対し、フィルレートは「需要数量の何%をすぐ満たせたか」を示すことです。さらに、フィルレートを高めるべきかは、欠品損失と追加在庫費用の比較によって決まります。


「欠品率」という一つの数字を置かない

欠品を測る指標は、互いに代替できません。

例えば、30営業日のうち1日だけ欠品し、その1日に20個の未充足需要が発生したとします。期間全体の需要は120個、補充周期は2回で、1回の周期に欠品が起きたとします。

指標

計算

結果

この数値が見落とすこと

在庫あり日率

29日 ÷ 30日

96.7%

欠品日に20個の需要が集中したこと

欠品日率

1日 ÷ 30日

3.3%

失われた需要数量と顧客反応

サイクルサービスレベル

欠品なし1周期 ÷ 2周期

50.0%

欠品した周期の不足数量

フィルレート

充足100個 ÷ 需要120個

83.3%

代替・延期による回収と将来離反

同じ実績が、96.7%にも83.3%にも50.0%にも見えます。

MITの在庫管理教材でも、補充周期内で欠品しない確率であるサイクルサービスレベルと、需要数量のうち充足できた割合であるアイテムフィルレートは別の指標として扱われ、同じ安全在庫でも両者の値は異なると整理されています。MIT Center for Transportation & Logistics「Inventory Management」

売れ筋商品の管理では、少なくとも次を分けます。

  1. 欠品が何回起きたか

  2. 何時間・何日続いたか

  3. 推定需要のうち何個を即時充足できなかったか

  4. その未充足需要が、代替・延期・失注へどう分かれたか

  5. 欠品が発生したのが、通常期、繁忙期、広告期間、催事終盤等のどの局面か

ECでページを非公開にした場合や、店頭で顧客が何も言わず帰った場合、未充足需要は記録されません。分母となる「本来の需要」が観測できなければ、フィルレートも厳密には計算できません。推定値と実測値を混同しないことが必要です。


売れ筋順位だけでは、欠品損失の大きさは決まらない

売れ筋には、販売数量上位、売上高上位、粗利額上位、購入件数上位等、複数の意味があります。

しかし、在庫がある期間の売上順位だけでは、欠品時の損失は決まりません。

  • 代替しやすい売れ筋は、自社内の別SKUで需要を回収できる

  • 入荷待ちが可能な商品は、購入が後日にずれるだけの場合がある

  • 一個当たり利益が小さい商品は、販売数量が多くても一件当たり欠品損失が小さい

  • 独自商品や目的来店商品は、販売数量が少なくても欠品時の離反が大きい

  • 卸売契約や納期約束がある商品は、欠品に違約・緊急配送・取引継続リスクが伴う

  • 季節末・賞味期限前の商品は、欠品回避より売れ残り回避を優先すべき場合がある

したがって、「売上上位だから欠品をゼロへ近づける」という判断は不十分です。

前稿「売上上位商品だけで品揃えを決めてはいけない」で整理した入口、主力、高粗利、併売、象徴等の商品役割は、欠品許容度にも関係します。ただし、商品役割だけで欠品回避を正当化することもできません。入口商品なら新規客の購入、象徴商品なら目的来店や他商品購買等、その役割が実際に失われるかを確認します。


欠品した顧客は、失注だけではなく四方向へ分かれる

欠品需要の扱いは、次の四つに分けます。

顧客反応

自社に起きること

欠品損失の基本的な考え方

同じ商品を後日購入

売上は延期される

失われる利益ではなく、取消率、対応費、資金回収の遅れを確認

自社の別SKUを購入

単品売上は失うが、カテゴリ売上は一部回収

希望SKUと代替SKUの限界利益差、併売変化を確認

今回の購入を断念

当該取引を失う

当該商品の限界利益と、同時に失われた買物かご利益を確認

他社・他店へ移る

今回と将来の取引を失う可能性

今回利益に加え、再来店・再購入への差分影響を慎重に推定

ファッション小売217店舗・4,024SKUの研究では、欠品したサイズの需要の一部が隣接サイズや別スタイルへ移り、推定未充足需要の一部が失注になったと報告されています。ただし、代替割合は店舗形態、商品用途、価格等で異なりました。Li et al.(2022)

この研究の数値を、自社の工芸品、食品、生活用品、卸売へ移植してはなりません。使うべき知見は「欠品需要のすべてが失注ではなく、代替率は商品・顧客・状況で異なる」という構造です。

在庫研究上も、通常の販売データだけでは、あるSKUの本来需要と、別SKUから流入した代替需要を区別しにくく、失注は直接観測できないことが指摘されています。Chen & Chao(2020)

したがって、欠品時の販売ゼロを需要ゼロとみなすことも、過去の平均販売数をそのまま潜在需要とみなすことも避けます。


欠品損失と追加在庫費用を、同じ期間で比較する

欠品許容度は、次の二つを同じ対象期間で比較して決めます。

1.一個の未充足需要から生じる期待欠品損失

一個当たり期待欠品損失= 希望SKUの失われる限界利益- 代替SKU・後日購入で回収する限界利益+ 同時に失う買物かご利益+ 将来顧客利益の差分減少+ 違約・緊急補充・顧客対応等の追加費用

ここで、将来顧客利益を過大に足してはなりません。一度の欠品を経験した全顧客が永久に離反すると仮定すれば、欠品損失はいくらでも膨らみます。再購入率や苦情、休眠化、他店移行を確認できない場合は、低位・基準・高位の幅で置きます。


2.欠品回避のために追加保有する在庫の期待費用

追加保護在庫費用= 資金拘束・調達費+ 保管・棚・検品・棚卸・移動費+ 破損・劣化・盗難等の期待損失+ 値下げ・返品・廃棄・陳腐化の期待損失+ 最低ロット増による余剰負担+ 他SKUへ使えなかった資源の機会費用

追加在庫費用を仕入代金全額と同一視してはなりません。その在庫を後日通常価格で販売できるなら、仕入代金は売上原価へ変わり、追加負担は主に資金拘束と保有期間中のリスクです。反対に、季節末に値下げ・廃棄される可能性が高い場合は、仕入代金の相当部分が過剰在庫損失になります。

判断境界は次のとおりです。

期待回避欠品損失= 追加在庫によって回避できる期待未充足数量 × 一個当たり期待欠品損失
期待回避欠品損失 > 追加保護在庫費用なら、追加在庫は利益を改善する可能性がある。
期待回避欠品損失 < 追加保護在庫費用なら、追加在庫以外の対策または限定的な欠品許容を検討する。

MITの教材も、在庫判断では発注費・安全在庫の保有費・欠品費を合わせた関連費用を考慮し、欠品一回当たりまたは不足一個当たりの費用を置く方法を示しています。これは「高いサービス水準ほど常に優れる」のではなく、費用を含めて水準を選ぶ考え方です。


SKU別の欠品許容度を決める七つの軸

欠品を厳しく抑える方向

欠品を相対的に許容する方向

一個当たり期待欠品損失

限界利益、買物かご、将来利益、違約等の損失が大きい

単位利益が小さく、取引全体への影響も小さい

代替・延期可能性

固有性が高く、代替も入荷待ちも難しい

自社内代替が多く、後日購入・予約で回収できる

商品役割

主力、目的来店、入口、卸売約束等の役割が実証されている

類似SKUが役割を代替でき、固有機能が弱い

需要変動

広告・催事・季節等を含めても需要が安定し、追加在庫を消化しやすい

流行・天候・単発案件等で需要振幅が大きい

供給条件

リードタイムが長い・不安定で、緊急補充が難しい

短納期・小ロット・高頻度で補充できる

過剰在庫損失

劣化・陳腐化が遅く、通常価格で後日販売しやすい

賞味期限、季節、流行、仕様変更、返品不可等のリスクが大きい

顧客・契約条件

納期保証、卸売契約、定期購入、重要顧客等への供給責任が重い

購入時期の自由度が高く、予約・受注生産が受容される

長いリードタイムは、単純に在庫を増やす理由ではありません。長納期かつ需要不確実性が大きい場合、必要な安全在庫と過剰在庫リスクの双方が増えます。このときは、発注早期化、仕入先分散、最低ロット交渉、半製品化、受注生産、チャネル配分等も比較対象になります。


数値例:六つのSKUで、追加在庫の採否を比較する

以下は、計算方法を示すための架空の60日間の例です。

「追加保護在庫費用」は、追加仕入代金全額ではなく、60日間の資金拘束、保管、値下げ・陳腐化・廃棄の期待損失、最低ロット余剰等を合計した関連費用です。

SKU・主な特性

追加在庫なしの期待未充足

追加後の期待未充足

回避数量

一個当たり期待欠品損失

期待回避欠品損失

追加保護在庫費用

差引

暫定判断

A 主力・定番・低陳腐化

14個

4個

10個

900円

9,000円

3,000円

+6,000円

欠品回避を強化

B 入口・類似代替が多い

18個

6個

12個

150円

1,800円

2,500円

▲700円

代替誘導を優先

C 独自・目的来店

5個

1個

4個

3,000円

12,000円

4,000円

+8,000円

欠品回避を強化

D 季節・売れ残り高リスク

20個

5個

15個

500円

7,500円

12,000円

▲4,500円

終盤の計画欠品を許容

E 高単価・予約受注可能

4個

1個

3個

1,800円

5,400円

8,000円

▲2,600円

在庫より予約化

F 卸売約束・緊急対応費あり

6個

1個

5個

2,200円

11,000円

6,000円

+5,000円

顧客別に在庫を確保

A:販売数量上位で、追加在庫の消化可能性も高い

Aは、欠品需要の多くが失注となり、売れ残りリスクも小さい定番商品です。追加在庫により10個の不足を回避できる見込みに対し、採算均衡に必要な回避数量は次のとおりです。

3,000円 ÷ 900円 = 3.33個

4個以上の未充足を回避できれば、追加保有費用を回収できます。基準予測の10個だけでなく、需要が下振れして4個しか回避できない場合にも採算が残るため、比較的強い判断です。

B:売れ筋でも、自社内代替が多ければ単品欠品損失は小さくなる

Bは入口商品ですが、欠品時に多くの顧客が自社の類似商品へ移り、代替商品の限界利益も大きく変わらないと仮定しています。回避数量は12個でも、採算均衡には次が必要です。

2,500円 ÷ 150円 = 16.67個

基準予測では追加在庫の費用を回収できません。ただし、入口商品がないことで来店客が何も買わず離れる、代替商品が同時に欠品する等の事象があれば、一個当たり欠品損失は上がります。直ちに補充見送りとせず、代替率と買物かご損失を追加記録します。

C:販売量がAより少なくても、独自性が高ければ優先度は上がる

Cは販売数量だけなら最上位ではありません。しかし、代替がなく、当該商品を目的とする来店や他商品購買も失われるため、一個当たり欠品損失を大きく見積もっています。

販売順位だけでAを守りCを放置すると、限られた在庫資金の配分を誤る可能性があります。

D:季節末の欠品は、常に失敗とは限らない

Dは販売期間終了後の需要が小さく、余剰分の値下げ・廃棄リスクが高い商品です。追加在庫で15個の不足を回避できても、採算均衡には24個の回避が必要です。

販売期間の前半は欠品回避を強め、終了日に近づくほど目標在庫を下げる方が合理的です。「期間中ずっと同じサービス水準」を置くべきではありません。

E:在庫を持たずにサービス水準を上げる

Eは高単価で販売頻度が低く、顧客の多くが入荷待ちを受け入れる商品です。完成品在庫を増やすより、展示品、予約金、確定納期、入荷通知、受注生産によって離反を減らす方が費用対効果に優れます。

F:同じSKUでも、顧客・チャネルで許容度が変わる

Fは卸売先への納期約束があり、欠品すると緊急配送や取引条件上の損失が生じます。同じ商品を一般店頭でも販売している場合、全チャネル一律の在庫ではなく、重要顧客向けの確保在庫や引当ルールを設ける選択肢があります。

不確実な欠品損失は、感度分析で判断境界を出す

一個当たり期待欠品損失は、正確には分からないことが多くあります。特に、無言離脱、他店移行、将来離反は観測が難しい項目です。

SKU Bについて、一個当たり欠品損失を三つのシナリオで置きます。

シナリオ

一個当たり欠品損失

回避数量

期待回避欠品損失

追加保護在庫費用

差引

低位:ほぼ代替される

80円

12個

960円

2,500円

▲1,540円

基準:一部で買物かごも失う

150円

12個

1,800円

2,500円

▲700円

高位:離反・併売損失が大きい

300円

12個

3,600円

2,500円

+1,100円

結論が反転する一個当たり欠品損失は、次のとおりです。

2,500円 ÷ 12個 = 208.33円

欠品一個当たりの正味損失が209円以上なら追加在庫が有利となり、208円以下なら代替誘導等が有利となる境界です。

この境界が分かれば、「欠品損失を正確に推定してから判断する」という実行不能な状態を避けられます。次に集めるべき情報は、209円を超えるかどうかを判断できる程度の代替率、買物かご差、入荷後購入率です。


目標サービス水準は、SKU別の暫定仮説として置く

業界平均の欠品率や「売れ筋は99%」等の経験則を、そのまま目標にしてはなりません。

経済産業省の商業動態統計には業態別の期末商品手持額や在庫率がありますが、業態集計値であり、個社・SKUの欠品費用、代替、リードタイム、陳腐化を反映しません。また、2025年から母集団が切り替わっているため、それ以前との単純な時系列比較にも注意が必要です。経済産業省「商業動態統計・確報」

SKU別の目標には、次を記録します。

設定項目

記載例

対象

SKU A・店舗チャネル・通常期

中心指標

推定フィルレート

補助指標

欠品時間、欠品回数、代替率、入荷後購入率

現状

フィルレート92%、月2回欠品

暫定目標

追加在庫案で改善する範囲。固定の業界値は置かない

在庫資源上限

追加在庫費用月3,000円、最大10個

欠品時対応

類似SKU提案、入荷通知、予約受付

反証条件

追加在庫の消化が遅れ、値下げ・滞留損失が回避損失を上回る

再判定日

60日後

サービス水準は一度決めて終わりではありません。需要、価格、販促、リードタイム、供給能力、代替商品、季節が変われば、同じSKUでも適正水準は変わります。


小規模企業が最低限記録すべき欠品データ

高度な需要予測モデルより先に、欠品を観測できる状態を作ります。

  1. 欠品開始日時と販売再開日時

  2. 欠品理由――需要急増、発注遅れ、納入遅れ、在庫差異、棚補充遅れ、品質不良等

  3. 欠品中のEC閲覧、再入荷通知登録、問い合わせ、顧客要求

  4. 代替提案した商品と、代替購入の有無

  5. 予約・取り置き・後日購入・取消

  6. 欠品前後の買物かご利益と購買点数

  7. 発注日、予定納期、実入荷日、入荷数量

  8. 値下げ、返品、廃棄、破損、長期滞留

  9. 広告、SNS、催事、天候、連休等の需要変動要因

  10. 店舗・EC・催事・卸売間の在庫移動と引当

J-Net21の小売仕入ガイドも、在庫のない商品への顧客要求を記録し、品切れなら発注時期・数量を見直すこと、販売員の定性情報を販売データと併用することを挙げています。J-Net21「小売業の仕入ポイント」

欠品時刻が分からず、日次売上だけがある場合は、潜在需要推定の誤差が大きくなります。大学教科書小売を対象としたLeeらの研究でも、欠品による需要の打切りと代替を考慮した在庫計画が扱われていますが、26,749タイトルの属性・販売データと実験を用いた条件です。Lee et al.(2016)

小規模企業が同じ推定精度を期待するべきではありません。最初は重要SKUだけを対象に、欠品日時、顧客要求、代替、予約、実納期を記録する方が実務的です。


欠品対策を「在庫を増やす」だけにしない

対策

有効になりやすい条件

主な負担・リスク

安全在庫を増やす

需要が比較的安定し、陳腐化が遅く、追加在庫で不足を回避できる

資金拘束、保管、過剰在庫

発注点を早める

リードタイム中の需要を把握でき、補充が反復可能

予測・在庫精度が低いと発注過多

小ロット・高頻度補充

仕入先が対応可能で、発注・配送費が過大でない

単価上昇、発注・受入工数

仕入先分散・代替部材

供給途絶の影響が大きい

品質差、管理複雑化、取引条件

店舗・EC・催事間の在庫融通

チャネル別需要がずれ、移動が間に合う

売り越し、同期不良、移動工数

類似商品の代替提案

顧客の用途を満たす代替SKUがある

不適切な代替、カテゴリ利益低下

予約・取り置き・入荷通知

顧客が待てる、高単価・独自・低頻度商品

取消、顧客対応、納期説明

受注生産・展示品化

完成品在庫の費用が大きく、納期を許容される

長納期、機会購入の減少

販促・価格の抑制

一時的に需要が供給能力を超える

顧客反応、競合流出、ブランド影響

計画欠品

季節末、賞味期限、陳腐化リスクが高い

販売機会損失、顧客説明

日本の大手小売POSデータを用いた寺嶋の研究は、設定した目標欠品率を満たすために、店頭在庫に加えて専用センター在庫を持つ必要性が低い商品が多い事例を示しています。寺嶋(2008)

この結果を地域小売へ直接移植はできませんが、「高いサービス水準を目指すこと」と「多段階で在庫を積むこと」は同義ではないという示唆があります。補充頻度、店頭在庫、在庫融通、情報精度を変えれば、同じ供給水準をより少ない在庫で達成できる場合があります。


欠品回避・維持・代替・予約・計画欠品・保留の条件

判断

主な条件

欠品回避を強化

期待回避欠品損失が追加保護在庫費用を複数シナリオで上回る。代替・延期が少なく、商品役割・顧客約束・供給条件から優先度が高い

現状維持

現在のフィルレートと在庫費用の均衡が妥当で、追加在庫の限界便益が小さい。欠品時対応も機能している

代替設計

自社内代替が可能で、代替後も用途・顧客満足・カテゴリ利益を維持できる。類似SKUの同時欠品を防げる

予約・受注化

顧客が待てる商品で、完成品在庫費用が延期・取消・対応費より大きい。納期と取消条件を明示できる

計画欠品

季節末、賞味期限、流行、仕様変更等で余剰損失が大きく、追加在庫の採算が合わない。欠品時期と説明を事前設計する

補充見送り・統合

固有の商品役割が弱く、代替SKUで顧客需要を満たせる。仕入ロット、棚、資金、人時を他SKUへ移す利益が大きい

保留

潜在需要、代替、後日購入、リードタイム、余剰損失が不明で、シナリオにより結論が反転する。資源上限、追加記録、再判定日を定める

保留は、欠品を放置する判断ではありません。どの値が分かれば結論が変わるかを明示し、その情報だけを取りに行きます。


結論:許容欠品は、率ではなく「次の一個」の採算で決める

売れ筋商品の欠品は、優先的に管理すべきです。しかし、販売数量上位という理由だけで、無制限に在庫を積むことはできません。

SKU別には、次の順序で判断します。

  1. 欠品日率、欠品回数、フィルレートを分ける

  2. 欠品需要を、代替・延期・失注・他社移行へ分ける

  3. 売上高ではなく、一個当たり期待欠品損失を置く

  4. 追加在庫の資金拘束、保管、値下げ、陳腐化、廃棄等を置く

  5. 追加在庫が回避する期待不足数量を低位・基準・高位で置く

  6. 期待回避欠品損失と追加保護在庫費用を比較する

  7. 商品役割、顧客・契約、供給条件、季節を重ねる

  8. 在庫増だけでなく、補充短縮、在庫融通、代替、予約、計画欠品を比較する

  9. 暫定目標、資源上限、反証条件、再判定日を記録する

最も避けるべきなのは、欠品そのものではありません。

欠品で失う利益を測らずに在庫を減らすことと、追加在庫の費用を測らずに欠品ゼロを目指すことです。

株式会社Kerzeでは、商品別の販売・限界利益・在庫・欠品・顧客反応・供給条件を接続し、SKU別の欠品許容マトリクス、追加在庫の損益シナリオ、代替・予約・計画欠品を含む改善案を整理します。データが不足する場合は、架空の精密な欠品率を置かず、判断が反転する境界、必要な追加記録、資源上限、再判定日まで設計します。


参考文献・出典

※本稿の六SKU、需要、欠品数量、代替、欠品損失、追加在庫費用、判断案は、計算方法を示すための架空例です。特定企業の実績値、業界標準の欠品率・フィルレート、推奨在庫量を示すものではありません。食品、医薬品、保安部品、契約供給品等では、品質・安全・法令・契約上の制約を利益計算より優先して確認してください。

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