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かかる費用の許容ラインを一律に決めてはいけない。商品別・顧客別に広告費の上限を計算する

  • 1 日前
  • 読了時間: 16分

この記事を読む前に――主要な用語の意味

本稿では、広告費と利益の関係を考えるため、いくつかの専門用語を使用します。先に、最低限必要な意味を整理します。

用語

本稿での意味

CPA(顧客獲得単価)

広告によって購入や顧客獲得を一件生み出すために使った広告費です。「広告費÷獲得件数」で計算します。 たとえば、「100件の購入のために10万円の広告費を使った」場合には、「10万円」を「100件」で割って、CPAは1000円となります。

許容CPA

一件の購入・顧客獲得に対して、利益を確保しながら支払える広告費の上限です。

実際のCPAが低いほどよいとは限らず、その顧客から得られる利益との比較が必要です。

コンバージョン

広告を見た人による購入、予約、問い合わせ等の成果です。本稿では、主に購入または顧客獲得を指します。

取引限界利益

一件の注文による売上から、商品原価、決済手数料、配送費、包装費、返品損失等、その注文に伴って増える費用を差し引いた金額です。広告費や会社全体の固定費を負担する前に、取引からいくら残るかを表します。

LTV・顧客生涯価値

一人の顧客との将来の取引から得られる利益の合計です。単なる将来売上ではありません。本稿では推定の過大化を避けるため、主に12か月など期間を限定した価値を用います。

増分

広告を実施しなかった場合と比べて、広告によって実際に増えた売上・利益・顧客数の差です。広告経由と記録された購入のすべてが、広告によって増えた購入とは限りません。

コホート

同じ時期、商品、広告、獲得経路等の共通条件を持つ顧客の集団です。条件の近い顧客をまとめて、その後の再購入や利益を追跡するために使います。

新規・既存・休眠顧客

新規顧客は初めて購入した顧客、既存顧客は継続的な取引がある顧客、休眠顧客は通常の購買間隔を超えて一定期間購入していない顧客です。休眠期間は商品特性に応じて定義します。

要点は、CPAが広告費側の数字であるのに対し、許容CPAは商品から残る利益、顧客の将来価値、広告による増分を踏まえて企業側が設定する上限だということです。したがって、広告管理画面に表示されたCPAだけでは、広告を継続・増額してよいかは判断できません。


本記事は、複数の商品を扱い、新規顧客・既存顧客・休眠顧客へ広告を配信している地域小売業、EC、メーカー直販、観光商品等を対象としています。 結論は、全社共通の許容CPAを一つ置くのではなく、商品別の取引限界利益、顧客状態別の将来貢献、広告による増分性、推定誤差、在庫・資金等の制約を分けて上限を設定することです。 顧客ごとの個別最適化から始める必要はなく、まず商品群×顧客状態の4~8区分で十分です。

CPAが2,500円なら、広告を続けてよいか

ある広告のCPAが2,500円だったとします。社内で「許容CPAは3,000円」と決めていれば、継続または増額の判断になりそうです。

しかし、広告から生じた購入が次のどれかによって、同じ2,500円の意味は変わります。

  • 初回購入で2,000円しか残らない日用品

  • 初回購入で6,000円残る贈答商品

  • 初回は低利益でも、その後の再購入が見込める消耗品

  • 広告がなくても購入していた既存顧客

  • 長く購入がなく、広告によって復帰した可能性がある休眠顧客

  • 自然に完売する限定商品

全商品・全顧客に同じ許容CPAを置くことは、管理を簡単にします。しかし、簡単になるのは集計であり、投資判断ではありません。低利益の商品には払いすぎ、高利益または将来価値の高い新規顧客には投資不足になる可能性があります。

既存記事「小売店は、集客広告を増やす前に何を確認すべきか」では、広告を売上やROASではなく、追加限界利益と在庫・人員・資金等の制約から判断する全体像を扱いました。本稿では、その中の「許容顧客獲得単価」を一段掘り下げ、商品×顧客状態別に計算する方法を示します。


一つの「CPA」に、異なる三つの問いが混ざっている

CPAは一般に、広告費をコンバージョン件数で割って計算します。

媒体CPA = 広告費 ÷ 広告管理画面上のコンバージョン件数

この計算自体は必要です。ただし、媒体CPAだけでは次の三つを区別できません。

問い

必要な上限

主に使うデータ

その注文一件で広告費を回収できるか

商品別・注文別の初回回収上限

純売上、商品原価、決済、配送、包装、返品、値引き

新規顧客を獲得するために、将来分まで含めていくら払えるか

新規顧客別の獲得上限

初回限界利益、再購入率、再購入時限界利益、回収期間

広告がなかった場合と比べて、利益はいくら増えたか

増分利益に基づく実行上限

非配信比較、顧客状態、自然流入、指名・非指名、地域・期間差

本稿では「許容CPA」を、広告費以外の獲得費用と確保したい利益を考慮したうえで、一件の広告成果に支払える媒体費の上限として扱います。媒体画面に表示されるCPAが、この上限を下回るだけでは十分ではありません。分母のコンバージョンが本当に追加的に生じたかも確認する必要があります。


まず、商品別の「初回回収上限」を計算する

再購入を考える前に、初回注文から広告費を除いていくら残るかを計算します。本稿では、これを取引限界利益と呼びます。

取引限界利益 = 純売上高-商品変動原価-決済手数料-値引き・ポイント-包装・配送負担-出荷等の変動作業費-期待返品・返金損失

以下は説明用の架空例です。数値は一注文当たり、税抜です。

項目

日用品

贈答セット

限定品

純売上高

6,000円

15,000円

20,000円

商品変動原価

2,700円

7,200円

10,000円

決済手数料

180円

450円

600円

包装・配送等

650円

1,200円

1,000円

期待返品・返金損失

170円

150円

400円

取引限界利益

2,300円

6,000円

8,000円

この段階だけでも、同じ許容CPAを置けないことが分かります。初回購入だけで回収するなら、日用品へ6,000円を払うことはできません。一方、限定品の取引限界利益は8,000円あります。

ただし、取引限界利益8,000円だから、限定品の広告へ8,000円まで払ってよいとは限りません。広告がなくても完売するなら、追加需要の経済価値は小さい可能性があります。希少在庫を広告経由の顧客へ移しただけなら、広告費は利益を増やさず、自然購入を置き換えています。

したがって、商品別限界利益は許容CPAの出発点であり、最終値ではありません。


新規顧客には「将来売上」ではなく、将来の取引限界利益を加える

消耗品、食品、生活用品、定期的なサービス等では、初回購入後の再購入が見込まれます。この場合、初回取引だけで広告費を全額回収しない設計もあり得ます。

しかし、「平均LTVが2万円だからCPAは6,000円まで」のような決め方は危険です。少なくとも次を区別する必要があります。

  • 売上ではなく、再購入時の取引限界利益

  • 全顧客平均ではなく、同じ獲得時期・商品・チャネルのコホート

  • 過去の実績ではなく、将来発生すると期待できる貢献

  • 観測済みの再購入と、観測期間外の予測

  • 新規顧客の価値と、既存顧客の残存価値

  • 名目額と、回収までの期間・資金負担

顧客生涯価値の研究では、CLVは顧客関係から得られる将来キャッシュフローの現在価値として定義され、未獲得顧客、獲得直後の顧客、既存顧客の残存価値を区別します。FaderとHardieによる顧客ベース分析の整理も、購買頻度、離脱、顧客間の異質性、非契約型事業で顧客が「離脱したか、長い購買間隔にあるか」が観測できない問題を扱っています。


小規模企業が最初から複雑な確率モデルを導入する必要はありません。まず、同じ条件で獲得した顧客群について、90日、180日、365日等の有限期間で累積取引限界利益を確認します。

新規顧客の期間価値 = 初回取引限界利益+観測・予測期間内の期待再購入取引限界利益
新規顧客向け許容CPA = 保守的に調整した期間価値-広告以外の追加獲得費用-確保したい利益

「生涯」という名称に引きずられ、無期限の価値を置く必要はありません。データが12か月分しかなければ、まず12か月価値として扱い、それより先はゼロ、または別シナリオに分ける方が安全です。


数値例:初回利益が低い商品でも、再購入によって上限は変わる

先ほどの三商品について、成熟した獲得コホートから次の将来貢献が見込まれたと仮定します。すべて説明用の数値であり、実在企業の実績ではありません。

項目

日用品

贈答セット

限定品

初回取引限界利益

2,300円

6,000円

8,000円

12か月期待再購入限界利益

3,400円

700円

1,000円

調整前の12か月顧客価値

5,700円

6,700円

9,000円

推定誤差等への保守的調整

30%控除

15%控除

25%控除

調整後価値

3,990円

5,695円

6,750円

広告以外の追加獲得費用

300円

500円

500円

確保したい利益

800円

1,200円

2,000円

新規顧客向け許容CPA

2,890円

3,995円

4,250円

計算は次のとおりです。

日用品:5,700円×70%-300円-800円=2,890円
贈答セット:6,700円×85%-500円-1,200円=3,995円
限定品:9,000円×75%-500円-2,000円=4,250円

控除率と確保利益に普遍的な正解はありません。控除率は、観測期間、標本数、返品確定の遅れ、季節性、将来予測への依存度等に応じて決めます。確保利益は、固定費回収、資金制約、他施策との比較、経営者が必要とする安全余力に対応します。

重要なのは、数字を細かく見せることではありません。どの仮定が変わると広告判断が反転するかを明らかにすることです。


既存顧客向け広告に、顧客価値を丸ごと再計上しない

新規顧客と既存顧客では、許容額の意味が異なります。

既存顧客が今後6,700円の取引限界利益を生むと予測されていても、その全額を既存顧客向け広告の成果にはできません。広告を出さなくても6,000円が生じるなら、広告による期待増分は700円です。

既存顧客向け広告の期待増分価値 = 広告配信時の期待将来貢献-広告非配信時の期待将来貢献

この例で、広告配信・制作・クーポン等に合計1,000円を使えば、顧客の将来価値自体は高くても、施策は採算に合いません。

休眠顧客も同様です。休眠顧客の復帰後価値を全額広告へ帰属させるのではなく、自然復帰の確率と比較します。また、「休眠」は90日、180日、1年等で意味が変わるため、商品ごとの通常購買間隔から定義します。

顧客状態は、最低限、次のように分けます。

顧客状態

計上してよい主な価値

計上してはならない価値

新規顧客

広告によって増えた新規顧客の初回・将来貢献

自然に獲得できた新規顧客の全価値

既存顧客

広告によって増えた購入確率・購入額・継続の差分

広告がなくても生じた残存顧客価値

休眠顧客

自然復帰との差分として生じた再活性化価値

復帰後の売上・利益全額

顧客状態不明

初回注文で確認できる保守的価値

未確認の再購入価値、新規顧客プレミアム

Google広告の顧客ライフサイクル目標でも、新規顧客獲得と休眠顧客の再エンゲージメントは別の目標として扱われ、新規顧客・高価値新規顧客・既存顧客へ異なる入札優先度を設定できます。ただし、プラットフォーム機能が存在することと、自社の利益計算が正しいことは別です。


媒体の「新規顧客」と、自社の初回購入者は一致しないことがある

広告媒体やアクセス解析の「新規」は、媒体が利用できるオンライン購入履歴、顧客リスト、Cookie、端末、タグ等に依存します。店舗で購入済みだがECでは初回の顧客、別のメールアドレスを使う顧客、端末を変えた顧客等は、分類がずれる可能性があります。

自社の意思決定では、次を先に定義します。

  • 生涯初回購入者

  • 当該チャネルでの初回購入者

  • 一定期間内に購入がない休眠顧客

  • 既存顧客

  • 判定不能

Google広告は新規顧客の検出に、過去のオンライン購入や共有した既存顧客リスト等を利用すると説明しています。これは媒体最適化に有用ですが、店舗・催事・卸売等を含む自社の顧客台帳と完全一致するとは限りません。媒体値をそのまま正本にせず、可能な範囲で受注・会員・POSデータと照合します。


広告へ帰属した顧客全員が、広告によって増えた顧客とは限らない

許容CPAが4,000円、媒体CPAが3,000円でも、広告を継続できるとは限りません。媒体に帰属した100人のうち、広告がなくても購入した人が50人なら、実際に増えた顧客数は50人です。

説明用に単純化すると、商品・顧客別の媒体費上限は次のように考えられます。

許容媒体CPA = 増分顧客比率×保守的な顧客貢献価値-一件当たりの広告外費用-一件当たり確保利益

日用品の調整後価値3,990円、広告外費用300円、確保利益800円を使うと、結論は次のように変わります。

広告帰属顧客のうち増分とみなす比率

許容媒体CPA

媒体CPA2,000円の判断

100%

2,890円

上限内

70%

1,693円

上限超過

50%

895円

上限超過

これは効果推定値ではなく、判断境界を確認する感度分析です。

Blake、Nosko、TadelisによるeBayの大規模フィールド実験では、非指名検索広告の反応が新規・低頻度利用者と高頻度利用者で異なり、広告に反応しにくい高頻度利用者が広告費の多くを占めた結果、平均リターンが負になりました。一方、この結果はeBayと検索広告の条件に依存します。自社の顧客群へ同じ効果量を移す根拠にはなりません。

また、LewisとRaoの25件の大規模広告実験は、購入額の個人差に対して採算を左右する広告効果が小さく、非常に大規模な無作為化実験でもROI推定が広い誤差を持ち得ることを示しました。小規模企業が商品×顧客を細分化するほど、各区分の件数は減り、推定は不安定になります。

したがって、細分化は精密化と同義ではありません。データが少ない区分では、単一のLTVや増分率を断定せず、低位・基準・高位のシナリオで判断します。


実務では、4~8区分から始める

商品SKU×顧客一人ひとりに許容CPAを設定すると、少数データの偶然を学習し、運用も維持できなくなります。最初は、経済性の差が大きく、実際に配信や予算を分けられる単位だけを採用します。

商品の区分例

  • 入口商品

  • 継続購入商品

  • 高粗利商品

  • 贈答・単発商品

  • 欠品しやすい商品

  • 自然完売が見込まれる限定商品

顧客状態の区分例

  • 新規

  • 既存

  • 休眠

  • 状態不明

ただし、全てを掛け合わせる必要はありません。例えば「継続購入商品×新規」「贈答商品×新規」「既存顧客」「休眠顧客」の4区分から開始できます。

区分を増やす条件は、次の三つです。

  1. 区分間で取引限界利益または将来貢献に実質的な差がある

  2. 各区分のデータ件数が、少なくとも方向判断に耐える

  3. 広告設定、予算、クリエイティブ、導線等を実際に変えられる

差が小さい、件数が少ない、運用を変えられない場合は、区分を統合します。


最低限必要な「商品×顧客別許容CPA表」

高度な広告計測基盤がなくても、次の項目を月次または四半期で更新すれば、全社一律CPAより判断精度を高められます。

項目

内容

区分ID

商品群×新規・既存・休眠・不明

純売上高

値引き、返品、取消後の売上

取引限界利益

商品原価、決済、配送、包装、返品等控除後

観測期間

初回、90日、180日、365日等

期待再購入限界利益

同条件の成熟コホートを基礎に計算

保守的調整

標本数、季節性、未観測期間、予測依存度を反映

広告外獲得費用

制作、運用、クーポン、追加対応等

確保利益

固定費回収、資金余力、他施策との比較を反映

許容CPA

仮定を明記した商品×顧客別上限

実績CPA

媒体値と自社顧客定義の差も記録

増分性

低位・基準・高位、または検証結果

制約

在庫、人員、発送、資金、ブランド、自然需要

判断

増額、維持、修正、縮小、停止、保留

新規・既存を判定するには、顧客ID、注文日、初回購入日、商品、チャネルを接続します。実名を分析表へ広く展開する必要はなく、目的に応じて内部ID等を用い、アクセス権限と保存期間を限定します。

店舗で顧客IDがほとんど取れない場合は、無理にLTVを推定しません。商品群別の初回取引限界利益を上限とし、広告限定コード、来店時アンケート、会員登録、地域・期間比較等で補助的に確認します。


許容CPAを更新する頻度

許容CPAは一度決めて固定する規程ではありません。次が変われば再計算します。

  • 仕入価格・製造原価

  • 値上げ・値引き・ポイント

  • 送料・決済手数料・モール手数料

  • 返品・キャンセル率

  • 商品構成・セット内容

  • 新規顧客の再購入率

  • 再購入時の限界利益

  • 広告の配信対象・媒体・目的

  • 在庫・製造能力・発送能力

  • 資金余力と回収期間

一方、少数件の月次変動だけで上限を毎月大きく変えると、偶然に反応して運用が不安定になります。高頻度購入なら月次、低頻度購入なら四半期または半期等、購買周期とデータ量に合わせます。直近値だけでなく、複数コホートと移動期間を併記します。


増額・維持・修正・縮小・停止・保留をどう分けるか

増額

  • 商品×顧客別の実績CPAが、保守的な上限を継続して下回る

  • 新規顧客または重点顧客の定義を自社データで確認できる

  • 追加予算部分のCPAも上限内に収まる見込みがある

  • 在庫、供給、人員、発送、資金に余力がある

  • 他の施策より追加利益の期待値が高い

維持

  • 上限内だが、データ件数または観測期間が増額判断には足りない

  • 将来貢献の回収が進み、当初仮定と大きく乖離していない

  • 広告を維持する情報価値または顧客接点上の役割がある

修正

  • 全体CPAは上限内だが、低利益商品・既存顧客へ成果が偏る

  • 新規顧客の再購入が想定を下回る

  • 返品、値引き、配送負担を含めると上限を超える

  • 商品区分、顧客定義、計測窓、クリエイティブ、導線を変えれば改善余地がある

縮小

  • 一部の区分だけが上限を超える

  • 予算増額に伴い限界CPAが悪化している

  • 在庫、発送、人員、資金等の制約が近い

  • 将来貢献の回収期間が資金余力に対して長すぎる

停止

  • 保守的な初回回収上限を継続して超え、再購入で補える根拠もない

  • 広告がなくても発生する購入が大部分を占める

  • 自然完売商品・希少在庫へ広告費を投じ、他の利益を置き換えている

  • データ定義・元データを確認できず、改善しても判断可能性が上がらない

  • 他の販促、商品改善、在庫改善の期待追加利益が明確に高い

保留

  • 新規・既存・休眠の判定精度が低い

  • コホートの観測期間が短く、将来貢献を判断できない

  • 件数が少なく、区分別結果が偶然で大きく変わる

  • 原価、返品、配送、人時等の基礎データが欠ける

  • 季節、催事、欠品、値上げ等が同時に変化し、広告効果と分けられない

保留は、計測不能の放置ではありません。次回判断日、必要データ、暫定予算上限を定めた限定運用です。


許容CPA表を作っても、広告の因果効果は自動では分からない

商品×顧客別許容CPA表は、「いくらまでなら払えるか」を整理する道具です。「広告によって何人増えたか」を自動的に証明するものではありません。

許容CPAの計算が正しくても、広告管理画面の成果へ次が混ざれば判断を誤ります。

  • 広告がなくても自然購入した顧客

  • 指名検索や既存フォロワーからの購入

  • 店舗・催事・口コミ等、他接点の影響

  • 割引による購入時期の前倒し

  • 他商品から広告対象商品への付け替え

  • 季節、天候、競合、イベント等の同時変化

増分効果の検証は、次稿「ROASが高くても広告を増額してはならない場合」で詳しく扱います。本稿の段階では、増分率を一つに断定せず、結論が変わる境界を感度分析で確認することが現実的です。


結論:一律CPAは管理指標にはなっても、投資基準にはなりにくい

全社共通CPAは、広告全体の悪化を早く検知するための監視指標としては使えます。しかし、商品・顧客・目的の違いを無視したまま、増額・停止を決める投資基準には不十分です。

最低限、次を分けます。

  1. 商品別の初回取引限界利益

  2. 新規顧客の有限期間における期待再購入限界利益

  3. 既存・休眠顧客では、広告がない場合との差分

  4. 媒体帰属成果と広告による増分成果

  5. 推定誤差、回収期間、在庫・人員・資金等の制約

そのうえで、商品×顧客状態の4~8区分について、低位・基準・高位の許容CPAを置きます。最も重要なのは、精密に見える一つの数字を作ることではありません。


どの仮定が崩れると、広告投資の結論が反転するかを把握することです。

株式会社Kerzeでは、広告管理画面だけでなく、商品別粗利、受注・顧客、再購入、返品、配送、在庫、販売チャネル等を確認し、商品×顧客別許容CPA表、感度分析、継続・増額・縮小・停止基準を設計します。現在のデータで判断できない場合は、不足データと限定的な検証方法まで整理します。

参考文献・出典

※本稿の数値例、控除率、確保利益、増分率は説明用の仮想例です。個別企業の許容CPAは、商品原価、顧客行動、広告の増分性、観測期間、在庫・人員・資金、計測方法等によって異なります。

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