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催事の仕入数量を前年販売数だけで決めない:欠品・残在庫・補充能力を同時に見る

  • 2 日前
  • 読了時間: 17分
本記事は、催事、陶器市、展示販売、期間限定店、物産展等へ出店する小売、メーカー直販を対象としています。
前年販売数は、次回の仕入数量を考える重要な出発点です。しかし、完売・欠品、残在庫、値引き、会期・曜日、天候、来場者数、価格、販促、売場、人員、補充条件が異なる以上、前年販売数へ一律の前年比を掛けるだけでは不十分です。
本稿では、前年実績を捨てずに観測条件を補正し、SKU別の低位・基準・高位需要、一個不足・余剰の損失、初期持込と会期中補充をつないで、次回数量を決めます。

前年販売数は「需要」ではなく、前年条件下で実現した販売数である

前年の催事で100個売れた商品について、次回も100個を用意すればよいとは限りません。

例えば、前年に100個を持ち込み、会期4日目の昼に完売したのであれば、販売数100個は需要の上限ではありません。完売後に商品を希望した顧客、店頭へ来たものの何も言わず離れた顧客、代替商品へ移った顧客は、当該SKUの販売履歴には現れません。


在庫管理研究では、このように需要が在庫量を超えても販売数量が在庫量までしか観測されない状態を、需要が在庫によって打ち切られていると捉えます。BesbesとMuharremogluは、需要そのものではなく販売データだけを観測する反復的な在庫問題では、需要の打切りが学習と発注判断を難しくすると示しています。Besbes & Muharremoglu(2013)


反対に、前年に150個を持ち込んで100個売れたからといって、需要が150個あったわけでもありません。残った50個が通常価格で後日売れたのか、値下げしたのか、関係者販売やセット販売へ回したのか、破損・廃棄したのかで、次回判断は変わります。

したがって、前年データは次のように読む必要があります。

前年販売数= 前年の在庫制約、価格、販促、来場、売場、販売能力、天候等の条件下で実現した数量

前年販売数を使わないのではありません。何を観測でき、何が観測できなかった数値なのかを明示してから使うことが必要です。


この記事を読む前に――主要な用語の意味

用語

本稿での意味

SKU

在庫を区別して管理する最小単位です。同じ商品でも色・サイズ・仕様が異なり、別在庫として扱う場合は別SKUです。

販売数量

実際に売れた数量です。在庫がなければ販売できないため、必ずしも需要数量と一致しません。

潜在需要

欠品せず、通常どおり購入可能であれば生じたと推定される需要数量です。

初期持込量

催事開始時点で会場へ搬入する数量です。次回補充までの需要と売場・保管能力を基に決めます。

総確保量

初期持込、会期中に補充できる予備在庫、確実に追加生産・調達できる数量の合計です。

不足費用

一個少なく用意したために失う取引限界利益、買物かご利益、顧客対応費等です。

余剰費用

一個多く用意して売れ残った場合の値下げ、廃棄、破損、返送、保管、資金拘束等から、残品の回収価値を差し引いた損失です。

取引限界利益

販売価格から商品原価、決済、包装、販売手数料等、その販売に伴って増える費用を差し引いた金額です。

推定レンジ

低位・基準・高位等で置く需要シナリオです。統計的な予測区間と同義ではなく、仮定の違いを可視化するものです。

補充リードタイム

補充判断をしてから、商品が会場で販売可能になるまでの時間です。

重要なのは、総確保量と初期持込量を分けることです。需要200個へ備える必要があっても、毎日補充できるなら200個を初日に会場へ置く必要はありません。


前年販売数だけで決めると、どのような誤りが起きるか

前年実績には、次回も再現する要因と、前年固有の要因が混在しています。

前年の状態

前年販売数に起きる歪み

次回判断で確認すること

会期途中で完売・欠品

潜在需要を過小評価する

欠品開始日時、問い合わせ、予約、代替、時間帯別販売速度

大量の残在庫

仕入数量を需要と誤認しやすい

定価販売、値下げ、後日販売、返品、廃棄の内訳

会期末の値下げ

通常価格需要を過大評価する

価格別販売数、値下げ開始時刻、値下げ後の粗利

開催日数・営業時間の変更

合計販売数の比較が崩れる

営業時間、日別・時間別販売数

曜日・連休構成の変更

平日・休日需要を混同する

曜日対応、祝日、周辺イベント

雨・猛暑・強風等

来場・滞在・商品選択が変わる

開催地の時間別気象、屋内外、アクセス条件

広告・掲載・SNS反応の差

流入条件が異なる

広告費、表示・クリック、保存、告知媒体、掲載時期

売場位置・面積・什器の差

発見率・接客可能数が変わる

導線、面積、陳列フェイス、在庫置場

販売人員・レジ能力の差

需要があっても処理できない

人時、待ち時間、接客時間、包装・決済能力

価格・商品構成の変更

単品需要と代替関係が変わる

価格、セット、類似SKU、入口商品の有無

競合・出店者構成の変更

来場目的と選択肢が変わる

類似商品、価格帯、隣接ブース、主催者企画

気象庁の「過去の気象データ・ダウンロード」では、地点・項目・期間を指定して観測データをCSVで取得できます。天候を印象で補正せず、少なくとも降水量、気温、風、時間帯を前年実績へ付けることは可能です。気象庁「過去の気象データ・ダウンロード」


ただし、「雨なら売上が20%下がる」といった外部平均を一律に使ってはなりません。屋内催事では雨が来場を増やす場合もあり、屋外催事ではアクセスを阻害する場合もあります。自社の催事、会場、商品、顧客における方向と大きさを確認します。


次回数量は、八段階で決める

1.前年の販売可能状態を復元する

最初に、SKUごとに次を確定します。

  • 初期持込数

  • 日別・時間別販売数

  • 補充数量と補充時刻

  • 欠品開始・解消時刻

  • 陳列されていたが販売不能だった時間

  • 予約、取り置き、問い合わせ

  • 代替購入と購入延期

  • 終了時在庫

  • 値下げ、返品、後日販売、廃棄

「最終在庫ゼロ」だけでは、最終日に計画どおり売り切ったのか、初日に需要を逃したのかが分かりません。

J-Net21も、小売の仕入判断ではPOSによる販売データだけでなく、在庫のない商品への要求、販売員からの情報、外部情報を併用し、品切れ時には発注時期・量を見直す必要があるとしています。J-Net21「小売業の仕入ポイント」


2.前年販売数を、潜在需要のレンジへ直す

完売・欠品したSKUは、販売数へ未観測需要を加えます。候補は次です。

  • 欠品後の問い合わせ、予約、再入荷希望

  • 欠品前の時間当たり販売速度を、比較可能な残り時間へ延長

  • 同じ曜日・時間帯・天候の別日

  • 類似催事、類似会場、類似SKU

  • 来場・ブース流入・商品閲覧からの換算

  • 代替SKUの販売増と、欠品後のカテゴリ購買

ただし、これらは重複し得ます。問い合わせ8件と、時間当たり販売速度から推定した未充足18個を単純に足して26個とすれば、問い合わせを二重計上する可能性があります。

需要の打切りを無視すると、観測販売数を真の需要より低く扱う危険があります。一方、高度な統計モデルを小標本の一催事へ導入すれば正確になるとも限りません。Dingは、失注を観測できない単期間在庫問題では、需要学習を含む動的な扱いが必要になると示していますが、地域事業者へそのモデル実装を要求することが本稿の結論ではありません。Ding(2002)

実務では、証拠強度を分けます。

区分

扱い

A 実測

販売、在庫、補充、欠品時刻、終了在庫

基礎データとして使用

B 追跡可能

予約、取り置き、同一顧客の後日購入

重複を除いて加減

C モデル推定

時間当たり販売速度、来場・流入換算、類似催事

低位・基準・高位で使用

D 仮説

無言離脱、他店移行、将来離反

原則として別シナリオ

3.次回と前年の条件差を、項目別に整理する

次回需要を、安易に次のような掛け算で作らないことが重要です。

前年販売数 × 来場者増加率 × 広告増加率 × 売場拡大率 × SNS反応増加率

来場者、広告、SNS反応、売場は相互に関連し、同じ効果を重複計上し得ます。また、価格改定や競合変化は逆方向に働く可能性があります。

代わりに、条件差を「上方」「下方」「不明」に分け、どのシナリオへ反映したかを記録します。

条件

前年

次回

想定方向

証拠

シナリオへの反映

会期・曜日

金~火・5日

同一

中立

確定

変更なし

来場者

2.0万人

主催者計画2.1万人

上方の可能性

計画値

基準・高位のみ反映

価格

3,800円

4,000円

下方の可能性

反応不明

低位へ強く反映

広告

自社広告なし

事前広告あり

上方の可能性

効果不明

高位へ限定反映

売場

2面陳列

3面陳列

上方の可能性

過去比較弱い

基準へ小さく反映

人員

常時2名

常時3名

販売上限を上げる

シフト確定

処理能力へ反映

補充

2日に1回

毎日可能

欠品リスク低下

運用確定

初期持込を圧縮

条件差を精密な係数へ変換できない場合、無理に一点予測へしません。低位には価格反応や悪天候、基準には確度の高い改善、高位には広告・来場増が機能した場合を置きます。


4.SKUごとに低位・基準・高位需要を置く

架空の商品Aについて、前年は140個販売し、会期4日目15時に欠品したとします。

  • 低位:販売140個+重複除外後の明示需要8個を基礎に、端数を調整して150個

  • 基準:欠品前販売速度と比較可能時間から、次回条件を反映して170個

  • 高位:来場増、広告、売場拡大が機能した場合として200個

シナリオ

次回需要

仮置き確率

主な仮定

低位

150個

25%

値上げ影響・悪天候が強く、広告効果は限定的

基準

170個

50%

来場・売場・人員改善が一部機能

高位

200個

25%

来場増と広告が機能し、前年の未充足需要も顕在化

25%・50%・25%は説明用の架空確率であり、統計的に推定された確率ではありません。確率を置く根拠が弱ければ、三シナリオそれぞれで判断が変わるかだけを確認しても構いません。

突発的大口需要を扱った中塚・稲田・松川の事例研究は、通常需要とは別に大口需要の規模と発生間隔を扱う方法を示しています。ただし、特定企業の月次需要を対象とした研究であり、催事の一回限りのSKU需要へ推定値を移植することはできません。利用すべき含意は、通常変動と突発需要を同じ平均値へ押し込まないことです。中塚・稲田・松川(2018)


5.一個不足した損失と、一個余った損失を置く

商品Aの販売価格を4,000円、原価を2,400円、決済・包装等の変動費を200円とします。

一個当たり取引限界利益= 4,000円-2,400円-200円= 1,400円

欠品時に同時購買の利益が平均200円失われると、比較可能なデータから限定的に見積もれたとします。

一個不足した場合の不足費用= 1,400円+200円= 1,600円

一方、催事で残っても通常店・ECで多くを定価販売でき、返送・保管・資金拘束・一部値下げを合わせた一個当たり期待損失が300円なら、余剰費用は300円です。

一個余った場合の余剰費用= 仕入代金全額ではなく、回収価値控除後の追加損失= 300円

MITのNewsvendor教材も、需要確定前に数量を決める単期間問題では、一個不足する費用と一個余る費用の関係から数量を選ぶ考え方を示しています。MIT OpenCourseWare「Newsvendor Inventory Problem」

ただし、正規分布や外部の需要分布を機械的に当てはめる必要はありません。少数催事では、候補数量ごとの期待損失を直接比較する方が説明しやすい場合があります。


6.候補数量ごとに、予測が外れた場合の期待損失を比較する

不足費用1,600円、余剰費用300円として、150・170・200個を比較します。

シナリオ別損失= 不足数量×不足費用+余剰数量×余剰費用
期待損失= 各シナリオの損失×仮置き確率の合計

総確保候補

低位需要150個

基準需要170個

高位需要200個

期待損失

150個

0円

不足20個×1,600円

不足50個×1,600円

36,000円

170個

余剰20個×300円

0円

不足30個×1,600円

13,500円

200個

余剰50個×300円

余剰30個×300円

0円

8,250円

この仮定では、200個の期待損失が最小です。基準需要が170個であっても、総確保量は200個になります。予測の中心値と、利益上選ぶ数量は同じとは限りません。

次に、需要シナリオを変えず、季節限定品で余剰費用だけを1,200円へ変えます。

総確保候補

不足費用

余剰費用

期待損失

暫定判断

150個

1,600円

1,200円

36,000円

不足リスクが大きい

170個

1,600円

1,200円

18,000円

最小

200個

1,600円

1,200円

33,000円

余剰リスクが大きい

同じ需要予測でも、催事後に通常販売できる商品は200個、季節性が強く残品損失が大きい商品は170個が選ばれます。

これは「需要を正確に当てる」計算ではありません。

予測が外れたとき、欠品側と余剰側のどちらの利益損失を多く引き受けるかを決める計算である。

7.総確保量を、初期持込・予備在庫・追加調達へ分ける

商品Aの総確保量を200個と決めても、初日に200個を会場へ持ち込むとは限りません。

毎日閉店後に補充でき、次の補充までの基準需要が80個、短期変動への予備が15個なら、初期持込は95個とできます。

区分

数量

役割

初期持込

95個

次回補充までの基準需要80個+予備15個

近隣予備在庫

75個

日次販売を見て会期中に補充

確定追加調達

30個

納期・数量が確約された分のみ

総確保量

200個

催事全体で販売可能にできる上限

発注・仕入数量は、既存在庫も加味します。

新規仕入必要量= 総確保量-販売可能な既存在庫-確定追加生産・調達量

「作れる見込み」「仕入先へ相談予定」は、確定追加調達へ入れません。会期中に販売可能となる納期、検品、値付け、搬送まで確認します。

会期中の在庫再配分や補充は、需要が判明する前に全量を固定するよりも柔軟性を持ちます。Dillard'sの季節商品を扱った研究でも、販売期間中に中央在庫を各店舗へ動的配分する問題が扱われています。ただし、大規模百貨店のモデルと効果量を小規模催事へ移植するのではなく、初期配分と後続配分を分ける構造を参照します。Gallien et al.(2021)


8.販売能力・資金・搬入制約をかける

需要があっても、売れるとは限りません。

  • 接客に時間がかかり、同時対応できない

  • 包装・決済が律速になる

  • 売場に陳列できず、存在を認知されない

  • バックヤードが狭く、補充に時間がかかる

  • 搬入車両、重量、破損リスクに上限がある

  • 仕入資金を一SKUへ偏らせると、他SKUが欠品する

  • 製造・検品能力が需要に追いつかない

したがって、最終数量は次の制約下で決めます。

最終総確保量= 需要と不足・余剰費用から選んだ数量を、資金・供給・保管・搬入・販売能力の範囲へ収めた数量

制約で基準需要すら満たせない場合は、単に「仕入不足」と記録するのではなく、予約、受注生産、購入数量制限、チャネル別引当、代替提案、価格・セット、重点SKUへの集約を検討します。


六つのSKUで、仕入・持込方針を分ける

以下はすべて説明用の架空例です。低位・基準・高位の確率は各25%・50%・25%とし、候補数量の期待損失を比較しています。

SKU・特性

低位・基準・高位需要

不足費用

余剰費用

損失最小の総確保候補

初期持込・運用

A 定番・主力・後日販売可

150・170・200

1,600円

300円

200個

95個持込、日次補充

B 季節限定・残品転用困難

65・90・115

800円

700円

90個

需要上振れ時も追加抑制

C 新商品・前年実績なし

20・35・55

1,000円

900円

35個

小規模テスト、反応記録

D 高単価・予約可・後日販売可

12・18・26

4,500円

600円

26個

展示数を抑え、予約併用

E 入口商品・代替SKUあり

220・270・330

500円

80円

330個

多めに確保、代替も同時管理

F 製造上限50個・独自商品

45・65・90

2,000円

500円

需要上は高位寄りだが50個上限

引当、予約、受注生産へ移行

この表が示すのは、「売れ筋ほど前年比を高くする」という規則ではありません。

  • Aは余っても後日売りやすいため、高位需要まで保護する

  • Bは残品損失が大きいため、基準需要付近で止める

  • Cは前年実績がないため、類似SKUと小規模テストから始める

  • Dは販売数が少なくても不足費用が大きく、余剰回収もしやすい

  • Eは単位利益が小さくても余剰損失が極めて小さいため、多めに確保できる

  • Fは需要予測より供給制約が先に効くため、在庫以外の販売方法へ切り替える


「前年比○%増」を使ってよい場合、不適切な場合

前年比を使うこと自体が誤りではありません。条件が比較可能で、欠品・値引き・会期差が小さいSKUでは、簡潔で実用的な基準になります。

使いやすい条件

  • 前年に長時間の欠品がない

  • 価格、会期、曜日、売場、販促が概ね同じ

  • 来場者・ブース流入の定義が同じ

  • 値引き・セット変更が小さい

  • SKU構成と代替関係が大きく変わらない

  • 残在庫の処理結果が把握できる

  • 少なくとも複数回の比較可能な催事がある

単独では使いにくい条件

  • 前年に早期完売した

  • 前年が異常天候、特別掲載、著名人紹介等の外れ値だった

  • 価格・容量・品質・売場が変わった

  • 会期・曜日・開催地が変わった

  • 新商品、限定商品、終売予定商品である

  • 販売人員・包装・決済能力が変わった

  • 補充頻度や供給上限が変わった

比較可能性が低いときは、前年比を「答え」ではなく、複数シナリオの一つへ降格させます。


仕入数量表に最低限入れる項目

領域

記録項目

SKU基本

SKU、商品名、カテゴリ、商品役割、価格、原価、変動販売費

前年実績

初期持込、補充、販売、終了在庫、値引き、返品、廃棄

欠品

欠品開始・解消、問い合わせ、予約、代替、購入延期

販売条件

日付、曜日、時間、天候、来場、ブース流入、広告、売場、人員

次回差分

会期、価格、販促、売場、競合、商品構成、販売能力

需要シナリオ

低位・基準・高位数量、仮定、証拠、仮置き確率

損益

一個当たり不足費用、余剰費用、候補数量別期待損失

数量計画

総確保、既存在庫、新規仕入、初期持込、予備在庫、追加調達

補充

補充リードタイム、判断時刻、発動条件、補充上限、担当者

制約

資金、製造、保管、搬入、陳列、接客、包装、決済

事後評価

実績需要、欠品、残品処理、推定誤差、次回修正、再判定日

全項目を最初から精密に取る必要はありません。判断を最も反転させる項目から取ります。

例えば、総確保170個と200個で迷い、余剰費用が300円なら200個、1,200円なら170個へ結論が変わる場合、最優先で調べるべきは広告のクリック率ではありません。催事残品が、通常店・ECでどの価格・期間・確率で売れるかです。


予測不能だから勘で決める、という結論にはならない

一回の催事、少数SKU、天候変動、新商品を含む状況では、需要を精密に予測できないことがあります。

しかし、不確実であることと、判断不能であることは同じではありません。

  • 低位でも売り切れる数量は、初期持込の下限候補になる

  • 高位まで備える価値は、余剰費用が小さいSKUほど高い

  • 補充できるなら、初期持込を抑えて総確保量を維持できる

  • 残品を通常店・ECへ転用できるなら、余剰費用を下げられる

  • 供給上限が低いなら、予約・受注・引当で機会損失を減らせる

  • 結論が反転する変数を特定すれば、次に取るデータが決まる

データ駆動型のNewsvendor研究は、需要分布が未知でも過去標本から数量を学ぶ問題を扱っています。一方、その性能は標本数や需要分布の形、最適数量付近の分布特性に依存します。Lin et al.(2022)

比較可能な催事が一、二回しかない企業が、高度なモデルから精密値を得たように装うべきではありません。低位・基準・高位で結論が同じなら実行し、結論が反転するなら限定数量、分割搬入、会期中補充、小規模テストへ落とす方が堅実です。


催事終了後に検証すべきこと

催事後の評価は、「予測170個に対して実績168個だったから精度が高い」で終わりません。

  1. 欠品中の未観測需要を含め、実際の需要レンジはどうだったか

  2. 低位・基準・高位のどの仮定が外れたか

  3. 来場、流入、接客、包装、決済のどこが販売上限になったか

  4. 代替・予約・後日購入で、どの程度利益を回収したか

  5. 残品は、どのチャネルで、何日後に、どの価格で売れたか

  6. 初期持込と補充の分け方は適切だったか

  7. 他SKUへ資金・棚・人員を移した方が利益は増えたか

  8. 次回数量を反転させる追加データは何か

Kerzeの既存記事「イベント出展後の振り返りを、次につながる形で設計する」では、催事の売上報告を次回判断へ変換する構造を扱っています。本稿は、そのうち仕入・持込数量へ焦点を絞ったものです。


結論――前年販売数は、数量決定の答えではなく、補正すべき観測値である

催事の仕入数量を決めるとき、前年販売数は最も身近で有力な情報です。しかし、それだけで次回数量を決めると、前年の欠品を再生産するか、前年固有の好条件を恒常需要と誤認します。


実務上の順序は次です。

  1. 前年の持込・補充・欠品・値引き・残品処理を復元する

  2. 前年販売数を、潜在需要の低位・基準・高位へ補正する

  3. 会期、曜日、天候、来場、価格、販促、売場、人員の条件差を整理する

  4. SKUごとに一個不足・余剰の損失を置く

  5. 候補数量別に、予測が外れた場合の期待損失を比較する

  6. 総確保量を、初期持込・予備在庫・追加調達へ分ける

  7. 資金、供給、保管、搬入、販売能力の制約をかける

  8. 会期中の補充条件と、終了後の検証項目を事前に決める

前年販売数×前年比は、この工程を経た後の簡略モデルとしては使えます。工程を飛ばすための代替にはなりません。


株式会社Kerzeでは、商品別の販売・利益・在庫・欠品・残品処理・販促・売場・販売体制を整理し、低位・基準・高位の需要、候補数量別の不足・余剰損失、初期持込・予備在庫・補充ルールまでをつないだ催事仕入シミュレーションを支援しています。


過去データが少ない場合も、一つの精密値を作ることを目的にはしません。どの仮定で数量判断が反転するか、何を追加記録すべきか、限定的にどこまで増減できるかを明らかにします。

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