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管理職が先に整理すべき、自治体SNS運用の設計対象

  • 3月12日
  • 読了時間: 10分

更新日:14 時間前

  • 自治体SNSの停滞は、投稿の巧拙ではなく、目的・公共性の基準・運用体制・評価指標が未整理なまま制作だけが先行することから生じます。

  • その結果、現場では公共性とマーケティングの線引きの曖昧さ、ネタ切れ、属人化、過度な防御運用が同時に進行します。

  • 本記事では、管理職が先に整理すべき自治体SNS運用の4つの設計対象を明示し、投稿改善の前に見直すべき論点を整理します。

  • Kerzeは、SNS施策そのものではなく、その前段にある構造の診断と再設計から支援しています。

※本記事は、庁内での論点整理や管理職間の認識合わせにも使いやすいよう構成しています。


自治体SNSで問題になるのは、投稿の巧拙ではありません。多くの場合、より手前にある「目的」「公共性の基準」「運用体制」「評価指標」が未整理なまま、制作だけが先行していることが本質的なボトルネックです。


現場で起こりがちなのは、この構造が未整理なまま、先にデザインや投稿フォーマットだけを整えようとすることです。見栄えのよいクリエイティブや整然とした投稿面は、一見すると改善が進んでいるように見えます。しかし、何のために発信するのか、どこまでを公共性として守るのか、誰がどの基準で判断するのかが曖昧なままであれば、その美しさは成果にも信頼にもつながりません。整えるべき順序が逆転している限り、見た目の改善は問題の先送りになり得ます。


さらに、評価指標の設計が曖昧なまま運用を続けることも同様に危険です。フォロワー数や再生数のような見やすい数字だけを追っていると、数値は動いていても、住民理解が深まったのか、来訪や参加につながったのか、地域との関係が厚くなったのかは判断できません。指標が目的と接続していない状態では、運用は改善しているように見えて、実際にはどこにも到達していない可能性があります。


その結果、現場では、公共性とマーケティングの線引きが曖昧なまま、ネタ切れと属人化と過度な防御運用が同時に進行します。投稿を増やしても成果に結びつかず、かといって攻めた発信をしようとすると公平性や炎上リスクが気になる。こうして、誰にも強く届かないまま、担当者だけが疲弊していく。自治体SNSで起こりがちな停滞は、しばしばこの構造から始まります。


なぜ、自治体SNSは「無難だが弱い発信」に陥るのか

自治体SNSの難しさは、単に投稿の質を上げれば解決する類のものではありません。そもそも一つのアカウントに、行政情報の周知、住民理解の形成、観光誘客、地域事業者の紹介、地域ブランドの発信、場合によっては危機時の情報伝達まで、複数の役割を背負わせがちだからです。

この状態で、管理職が先に整理すべき前提が曖昧なままだと、現場では次のようなことが起きます。

ある投稿は住民向けのお知らせとして作られ、別の投稿は域外の来訪者向けの魅力発信として作られる。しかし、評価はどちらも同じようにフォロワー数や反応数で見られる。特定の店舗や事業者を紹介したいが、どの基準で取り上げるかが明文化されていないため、担当者の感覚と空気で決まる。コメントやDMへの応答も、どこまで返すべきか、誰が返すべきかが決まっていないため、丁寧さと公平性と業務負荷の間で常に揺れる。こうして、判断の責任が現場に押し付けられ、やがて「無難にやるしかない」という結論に流れます。

これは担当者の力量不足ではありません。管理職が先に定めるべき設計対象が未整理なまま、運用だけが始まっていることが問題です。


管理職が先に整理すべき、自治体SNS運用の4つの設計対象

自治体SNSの運用を改善する際、管理職が先に整理すべき対象は大きく4つあります。投稿の工夫や制作体制の見直しに入る前に、少なくとも次の4点が定まっているかを確認する必要があります。


1. 目的

そのアカウントは、何のために存在しているのか。

これは最も上位の論点です。行政情報の正確な周知が中心なのか。住民の理解や参加促進が中心なのか。観光誘客が中心なのか。地域事業者との接点創出なのか。あるいは、地域ブランドの長期的形成なのか。

この目的が混線すると、投稿の良し悪しも、成果の良し悪しも判断できなくなります。例えば、住民向けの行政情報発信と、域外観光客向けの魅力訴求とでは、必要な表現も、接触頻度も、追うべき指標も異なります。にもかかわらず、同じアカウントでそれらを同じ基準で運用しようとすれば、当然、どちらにも中途半端になります。


2. 公共性の基準

自治体SNSにおいて「公共性を守る」とは、抽象的なスローガンではありません。日々の判断を支える運用基準として定義されていなければ、実務では機能しません。

例えば、何を公平性とみなすのか。特定事業者の紹介はどのような条件なら妥当なのか。どの程度の親しみやすさを許容するのか。どこまで応答し、どこからは他導線に案内するのか。危機時には何を優先し、通常時とは何を切り替えるのか。

公共性は、何も発信しない理由ではなく、発信の妥当性を説明できる状態をつくるための基準です。ここが曖昧だと、現場は守りに入り、逆にここが明確だと、必要な発信を迷わず行えるようになります。


3. 運用体制

自治体SNSは、熱意のある担当者一人で回すものではありません。一時的には回っているように見えても、異動、繁忙、兼務、組織変更のどこかで簡単に崩れます。

必要なのは、誰が企画し、誰が判断し、誰が承認し、誰が緊急時に止めるのかが明確な状態です。加えて、投稿テーマの棚卸し、掲載対象の選定ルール、会議体、レビューの頻度、エスカレーションの経路など、属人化を防ぐ運用骨格が必要です。

ネタ切れも、本質的には地域の魅力不足ではありません。多くの場合は、「何を価値として編集するか」「どの切り口で蓄積していくか」が決まっていないために起こります。逆に言えば、編集軸と判断基準があれば、発信は単発の思いつきではなく、継続可能な資産になります。


4. 評価指標

何をもって成果とみなすのか。この問いに答えられないままSNSを運用すると、結局、見やすい数字だけが独り歩きします。


フォロワー数、いいね数、再生数は見やすい指標ですが、それだけでは自治体SNSの価値は測れません。認知を取りにいく段階なのか。理解促進を重視する段階なのか。来訪や参加を促したい段階なのか。中長期で地域想起や関係人口形成を狙う段階なのか。目的に応じて、接触、関与、行動、再訪、回遊といった指標をどう位置づけるかを定める必要があります。

管理職が先にやるべきなのは、「何の数字を見るか」を決めることではありません。「どの目的に対し、どの数字を、どのレイヤーで見るか」を決めることです。


逆に言えば、この整理を飛ばしたまま数値管理だけを始めると、運用は簡単に歪みます。目的と接続していない指標を追えば、現場はその数字を動かすこと自体に最適化し始めるからです。結果として、報告書の数字は並んでいても、何が改善し、何が未解決なのかは判断できないまま残ります。評価指標とは、運用を説明しやすくするための飾りではなく、意思決定の質を上げるための基盤であるべきです。


ここまで読んで、自組織の論点を一度整理したいと感じられた方には、Kerzeの自治体SNSの現状診断をご案内しています。投稿改善ではなく、どこに構造課題があるのかを確認したい組織向けのご案内です。



実務で迷いやすい論点は、どう判断すべきか

ここで、実際に多くの自治体で迷いが生じやすい論点をいくつか挙げます。


特定の店舗・事業者をどこまで紹介してよいか

これは「紹介してよいか、悪いか」という二択ではありません。本質は、選定基準があるか、説明可能か、継続運用に耐えるかです。

例えば、一定のテーマ設定のもとで複数事業者を連続企画として紹介する。地域資源の理解促進や回遊導線形成という目的に照らして掲載軸を明示する。そのような設計であれば、単なる恣意的な優遇ではなく、公共的な妥当性を持った編集になります。

逆に、「今話題だから」「見栄えが良いから」という理由だけで同じ対象ばかり取り上げれば、やがて不信の種になります。


コメントやDMにどこまで応答するか

ここでも大事なのは、親切であることそのものではなく、運用基準があることです。

個別回答すべきもの、FAQに誘導すべきもの、他部署や公式窓口につなぐべきものを分けておかない限り、応答は担当者の善意と消耗に依存します。自治体アカウントに必要なのは、何でも返すことではなく、組織として妥当な応答の線を引くことです。


親しみやすさをどこまで出してよいか

SNSでは親しみやすさが重要です。しかし、公的主体である以上、担当者個人のキャラクターだけで成立する運用には限界があります。

ある担当者の熱量やセンスに依存した運用は、短期的には伸びても、異動後に再現できないことが少なくありません。必要なのは、「人格」ではなく「文体・姿勢・判断基準」の設計です。親しみやすさは、属人性ではなく運用品質としてつくるべきです。


Kerzeが支援するのは、投稿改善の前段です

Kerzeは、施策の代行を主軸とする会社ではありません。

単なるマーケティング施策の提案ではなく、利益が残る成長の構造そのものを設計し、その設計を実現するために現場で回る運用システムの実装を支援します。


自治体SNSにおいても、支援の起点に置いているのは投稿制作そのものではなく、その手前にある構造です。アカウントの目的、公共性の基準、運用体制、評価指標が整理されていなければ、外注先を変えても、投稿本数を増やしても、デザインを整えても、根本問題は解けないからです。


そのため私たちは、診断、仮説検証、伴走、内製化支援といった形で、現場で持続可能に回る状態をつくることを重視しています。必要なのは、一時的に見栄えのよい発信ではなく、判断基準と運用骨格を備えた状態だからです。


実際に、長崎県波佐見町では、商工観光課および企画情報課に対し、公式Instagramの戦略立案支援や運用マネジメント支援を継続的に行ってきました。

また、益子町観光公式アカウントを運営する一般社団法人ましこラボに対しても、定常業務設計、仮説検証の進め方、地域内事業者向け講習の提供など、初期フェーズの構造整備に関わってきました。

私たちが関わってきたのは、単なる投稿制作ではなく、何をどう発信するのか、その運用をどう継続可能なものにするのかという設計とマネジメントの部分です。


こうした関わり方に一貫しているのは、成果は施策単体から生まれるのではなく、その施策を成立させる構造から生まれるという考え方です。自治体SNSも例外ではありません。投稿改善の前に設計を見直すべきだと私たちが考えるのは、この前提に立っているからです。


管理職が先に整理すべきである理由

自治体SNSの運用課題は、現場担当者だけでは解けません。なぜなら、何を優先し、どこまで許容し、何をもって成果とみなすかは、本来、組織の上位判断だからです。

管理職がやるべきことは、現場に「もっと頑張ってほしい」と求めることではありません。むしろ、現場が判断しやすいように、先に枠組みを定めることです。


  • このアカウントは誰に何を起こしたいのか

  • 公共性をどう運用基準に落とすのか

  • 誰がどの範囲まで判断するのか

  • どの数字を、どの目的に対する指標として見るのか


これらが定まって初めて、投稿の工夫は意味を持ちます。逆に言えば、ここが曖昧なままなら、優秀な担当者ほど疲弊し、運用は属人化し、批判を恐れた無難な発信に収束していきます。


おわりに

自治体SNSにおいて、投稿の見た目や頻度を整えることは無意味ではありません。しかし、それは設計の後に来る話です。

本当に見直すべきは、アカウントの目的、公共性の基準、運用体制、評価指標です。管理職が先にこの4つを整理できているかどうかで、自治体SNSは「更新しているだけのアカウント」にも、「地域との信頼や行動変容を生む接点」にもなり得ます。

Kerzeは、SNS運用そのものだけではなく、その手前にある構造の診断と再設計からご一緒しています。



自治体SNSの現状診断

現在の運用課題を、投稿内容の良し悪しではなく、目的・公共性の基準・運用体制・評価指標の4つの設計対象から整理します。現行アカウントや運用状況を踏まえ、どこに構造的な詰まりがあるのか、何を先に整えるべきかを明確にします。その場しのぎの改善案ではなく、庁内で判断・共有しやすい論点整理を重視します。単なる運用代行ではなく、設計から見直したい組織向けのご案内です。


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