県内初のフォロワー1万人・2万人達成を支えた、公共性と運用構造の整備|長崎県波佐見町における支援事例
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長崎県波佐見町に対し、Kerzeは2021年度より、公式Instagram運用、戦略立案、運用マネジメント支援、町内事業者向け支援に継続的に関与してきました。結果として、同アカウントは県内初のフォロワー1万人・2万人達成という到達点に至っています。
もっとも、本件の価値はフォロワー数そのものにはありません。本質的に重要だったのは、自治体としての公共性を損なうことなく、発信力を高めていくための前提――すなわち、目的、判断基準、役割分担、改善運用の構造を整備した点にあります。
自治体SNSの成否は、投稿単体の巧拙では決まりません。何のために運用するのか。何を成果とみなすのか。何を紹介対象とし、どのような観点で表現を判断するのか。誰が情報を拾い、誰が確認し、誰が責任を持つのか。そうした前提が曖昧なままでは、たとえ一時的に数字が伸びても、組織に残るものは限定的です。
本稿では、波佐見町の事例を通じて、自治体SNSにおいて公共性と発信力を両立させるために、何をどの順で整えるべきかを整理します。
※なお、本稿で扱う成果は、自治体側の実行、関係者の貢献、外部環境を含む複数要因の結果です。そのうえでKerzeの寄与は、戦略立案・判断基準整理・運用マネジメント支援を通じ、運用構造の整備に関与した点にあります。
概要
波佐見町では、観光誘客や地域理解促進に向けた情報発信の強化が、重要な行政課題の一つとなっていました。その文脈のなかで、公式Instagramは、単なる広報媒体ではなく、町の魅力や地域事業者の価値を外部に届ける接点として機能することが期待されていました。
一方で、自治体アカウントの運用は、民間企業のSNS運用とは前提が異なります。自治体が発信主体である以上、問われるのは、単なる反応の多寡ではありません。正確性、公平性、中立性、説明可能性、継続性といった観点を外すことはできず、何を発信し、何を慎重に扱うべきかという判断そのものが、実務上の大きな論点になります。
つまり、この案件で必要だったのは、投稿数を増やすことでも、表現を派手にすることでもありませんでした。必要だったのは、自治体として妥当な発信を、継続的に成立させるための構造整備です。
Kerzeが担った役割
Kerzeは、本件において、単なる投稿代行の受託者としてではなく、戦略立案・判断基準整理・運用マネジメント支援を担う外部パートナーとして関与しました。
ここで重要なのは、支援の対象が投稿単体ではなかったという点です。何を優先するのか。何を基準に紹介対象や表現を判断するのか。どのような役割分担で運用を回すのか。改善をどのように捉えるのか。Kerzeが扱ったのは、そうした運用の前段にある設計論点でした。
また、本件はKerzeのみで成立したものではありません。自治体側には、現地の情報を把握し、取材・撮影・確認を担う役割があります。関係者側には、分析、制作、補助的な実務を担う役割があります。Kerzeは、それら複数主体の実務を、公共性と継続可能性に接続するための支援を行いました。
このように役割を分けて捉えることは、単なる慎重さではなく、自治体案件における基本姿勢です。誰が何を担い、どの論点に責任を持つのかが曖昧なままでは、成果の評価も再現もできません。
公共性と発信力を両立させるために、何をどの順で整えたか
1. 目的と優先順位の整理
最初に必要だったのは、公式Instagramを何のために運用するのかを整理することでした。
自治体アカウントは、観光誘客、地域理解促進、地域事業者支援、町の魅力形成など、複数の目的を同時に背負いがちです。しかし、それらを未整理のまま並列に扱うと、発信の方向性は曖昧になり、結果として「誰に、何を、なぜ届けるのか」が見えにくくなります。
フォロワー数は、あくまで補助指標の一つに過ぎません。重要なのは、発信を通じて何を実現したいのか、誰との接点をどのように強化したいのか、そのうえで何を優先し、何を補助的に置くのかを明確にすることです。
自治体SNSの議論が表層化しやすいのは、多くの場合、この段階を飛ばしてしまうからです。投稿改善の前に、まずアカウントの存在目的と優先順位を定める。ここが出発点でした。
2. 公共性と発信基準の整理
次に必要だったのは、自治体として何をどのように発信するのか、その判断基準を整理することでした。
自治体アカウントにおいては、誰を紹介するのか、どのような文言を用いるのか、何を積極的に扱い、何を慎重に扱うのか、といった判断が、そのまま公共性のあり方と接続します。ここが曖昧なままでは、発信は過度に保守的になるか、逆に説明可能性を欠いた危ういものになります。
重要なのは、公共性を「発信を止める理由」として扱わないことです。必要なのは、公共性を、発信の妥当性を支える判断基準として位置づけ直すことです。
何を紹介対象とするのか。どのような観点で表現やトーンを確認するのか。どこまでが自治体アカウントとして妥当であり、どこからは慎重さが必要なのか。こうした基準が整理されて初めて、無難さに逃げず、かつ逸脱もしない運用が可能になります。
3. 役割分担と運用体制の整備
自治体SNSでは、熱意ある担当者が一時的に成果を出すことはあっても、それだけでは継続しません。異動、兼務、業務負荷、確認体制の変化といった要因により、属人的な運用は容易に崩れます。
そのため、本件では、誰が情報を拾い、誰が素材を整え、誰が確認し、誰が最終的に判断するのかを整理することが重要でした。制作そのもの以上に、運用が滞る原因になりやすいのは、判断の曖昧さと責任分担の不明瞭さです。
自治体側が持つべき役割、関係者側が担うべき役割、外部パートナーが引き受けるべき論点を分けることで、運用は「誰かが頑張る仕組み」ではなく、「複数主体で回せる仕組み」に近づきます。
これは、目先の投稿を回すためだけではありません。担当者や体制が変わっても、判断と運用が維持される状態をつくることが、自治体支援においては本質的に重要だからです。
4. 改善運用と地域接続
SNSは、運用していれば価値が蓄積する媒体ではありません。反応を見て終わるのではなく、そこから何を学び、何を修正し、何を続けるのかという改善運用がなければ、発信は蓄積ではなく消耗になります。
本件でも、重要だったのは、投稿ごとの反応や成果を単発で捉えるのではなく、発信テーマ、届け方、紹介対象、情報の扱い方を継続的に見直す視点を持つことでした。あわせて、発信の価値を、アカウント内の数値だけで閉じず、地域事業者や来訪者との接点へどう接続するかという観点も必要でした。
自治体の情報発信は、数字だけが増えても意味がありません。地域理解、来訪、事業者接点、町の印象形成といった現実の変化に、どのように接続されるかが問われます。そのため、改善運用と地域接続は、一体の論点として扱う必要がありました。
実際にどのような変化が生じたか
最も分かりやすい変化は、数値面に表れています。公式Instagramは、県内初のフォロワー1万人・2万人達成という到達点に至りました。
しかし、Kerzeとして重視しているのは、その数字だけではありません。本件で重要なのは、運用が単なる投稿実務ではなく、目的と判断基準を持った構造として扱われるようになったことです。
何を成果とみなすのか。何を優先的に扱うのか。誰がどの役割を担うのか。どのような観点で改善するのか。こうした前提が整理されることで、運用は担当者個人の力量や熱意に依存しにくくなります。
さらに、発信の価値が地域事業者側の実感と接続し始めたことも、重要な変化の一つです。SNS上の成果が、単なるアカウント内の反応ではなく、地域の実感へつながり始める。この接続が見え始めたことは、自治体の情報発信が、単なる広報を超えて地域価値の伝達に機能しうることを示しています。
実際に整備した判断と運用の基盤
本件で整えたのは、投稿単体ではなく、その前段にある判断と運用の基盤です。たとえば、次のような類の基盤です。
発信テーマの整理
紹介対象・表現の判断観点
制作・確認・投稿の流れ
改善論点の整理方法
住民・観光客双方への視点
運用ガイドライン等の設計
例えば自治体アカウントでは、住民と観光客の双方を視野に入れる必要があります。行政が届けたい情報と、受け手が知りたい情報は一致しないことがある。
したがって、町内向けの理解促進と、町外向けの魅力発信をどう両立させるかという視点も、基盤設計に含める必要がありました。
Kerzeが支援対象としているのは、まさにこの領域です。施策の前段にある判断基準、役割設計、運用ルールの整備まで扱うのは、実行を一過性で終わらせないためです。
この事例から抽出できる論点
第一に、自治体SNSは、投稿改善の問題としてだけ扱うと表層で止まります。本質的に問うべきなのは、何のために運用し、何を守り、何を成果とみなすのかという前提です。ここが曖昧なままでは、数字が伸びても、組織に残るものは限られます。
第二に、公共性は、発信を抑制するための概念ではなく、発信を成立させるための判断基準として設計されるべきです。正確性、公平性、中立性、説明可能性、継続性を外すことはできません。しかし、それらを恐れて無難さだけを選べば、誰にも届かないアカウントになります。必要なのは、守るべきものを守りながら、届く発信を成立させる設計です。
第三に、成果の差は、投稿単体よりも、前段の整理状況によって生まれやすい。目的、基準、役割分担、改善運用。これらが整っていれば、発信は属人的な努力ではなく、組織的な営みとして回り始めます。
第四に、この論点は自治体に限りません。観光協会、DMO、外郭団体のように、多主体調整と説明責任が重要な組織にとっても、同じ構造が当てはまります。公共性や説明可能性が強く求められる組織では、発信の巧拙以上に、前提設計の良し悪しが成果を左右します。
このような自治体・関連団体には、同種の支援が有効です
フォロワーは増えている、あるいは増やしたいが、成果実感が弱い
公共性と発信力の線引きに悩んでいる
担当者依存が強く、継続性に不安がある
観光、地域事業者支援、地域理解促進など、複数目的が混線している
投稿改善の前に、目的、判断基準、運用体制を整理する必要がある
こうした局面では、表現や頻度の改善だけを積み上げても限界があります。必要なのは、投稿の前段にある論点を整理し、判断と実行が持続的に噛み合う状態をつくることです。
向いていないケース
一方で、次のようなケースでは、同種の支援は適さない可能性があります。
単なる投稿代行のみを求める場合
短期的な数値成果だけを追い、前提整理や運用体制の整備を重視しない場合
公共性や説明責任の整理よりも、表層的な見栄え改善のみを優先したい場合
Kerzeの支援は、施策提案や運用代行にとどまりません。判断基準、役割設計、運用ルールまで含めて支援する以上、表層実務のみを切り出したい局面とは、必ずしも相性がよいとは限りません。
ご支援の全体観・診断・お問い合わせ
課題がまだ完全に整理されていなくても問題ありません。
フォロワーは増えているが成果実感が薄い。 公共性と発信力の両立に悩んでいる。 発信が担当者依存になっている。
そうした状態であれば、一度、投稿改善の問題としてではなく、構造設計の問題として整理し直す必要があるかもしれません。
Kerzeは、戦略設計・マーケティング・判断基準の設計を通じ、判断と実行が持続的に噛み合う状態の構築を支援しています。
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