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自治体SNS、その「公共性」どう守る? ~私たちが本当に大切にしたい運用戦略の視点~

■はじめに:あなたのSNS、「可能性」を活かしきれていますか? それとも「難しさ」に直面していますか?


自治体のシティプロモーションでSNSアカウントを立ち上げたものの、フォロワーは増えても、地域のイベントへの参加者数や、実際に足を運んでくれる人の数には変化が見られない……。


日々の情報発信に追われる中で、「これで本当に住民や関係者に届いているのだろうか?」「もっと深く、本質的な繋がりを築けないものか……」そんな風に感じている広報担当者の方も、いらっしゃるのではないでしょうか。


株式会社Kerze(ケルツェ)は、広告運用やSNS運用といった個別の手法にも詳しい会社です。しかし、私たちはご相談いただいた際に、すぐに「では、SNS運用から始めましょう」とお答えするとは限りません。


それは、私たちがまずお客様の状況を深く理解し、SNSという「手段」が、お客様の抱える課題や目指す未来にとって、本当に「今、最も必要な一手」なのかを丁寧に見極めることを最優先しているからです。


デジタルメディア、特にSNSは、適切に活用すれば、コストを抑えつつ多様なコンテンツを効率的に発信でき、煩雑な業務に追われる自治体の皆様の作業量を結果的に減らす可能性を秘めたツールです。しかし、その「可能性」を最大限に引き出すためには、単にアカウントを開設して情報を流すだけでは不十分なのです。


■SNSが持つ「可能性」の本質とは?──「双方向性」が生み出す価値と、「公共性」という壁


私たちが考えるSNSの「可能性」の核心は、ホームページなどとは異なり、ユーザー(閲覧者)と直接的かつ双方向的なやり取りができる点にあります。


「そんな余裕はない」という声が聞こえてきそうですが、少しだけお付き合いください。この「双方向性」こそが、これまでの広報活動では得難かった、新たな価値を生み出す源泉なのです。


想像してみてください。自治体からの発信に対して、住民の方々、遠く離れた場所に住む観光客候補の方々、あるいは地域に漠然とした関心を寄せる様々な立場の人々から、リアルタイムで自然な意見や感想が寄せられる。その「生の声」に耳を傾け、対話することで、より住民のニーズに即した情報発信のあり方が見えてきたり、これまで気づかなかった行政への期待や課題が浮かび上がってくるかもしれません。


もちろん、役所の窓口で直接ご意見を伺うことも重要です。しかし、地理的な制約があったり、電話ではどうしても一方的な要望や、時には厳しいご意見が中心になったりすることもあるでしょう。SNSであれば、もちろんそうしたリスクが全くないわけではありません。


しかし、例えばコメント欄やダイレクトメッセージを通じて、「もっとこうしたら良くなるのでは?」「こんなことに困っている」といった建設的な意見交換が、より気軽に、そして前向きな雰囲気の中で行える可能性を秘めているのです。これは、共に「より良い未来」を築いていく上で、計り知れない価値を持つのではないでしょうか。


しかし、ここに大きな壁として立ちはだかるのが、自治体ならではの「公共性」という問題です。


例えば、SNSでの対話において、「この方の意見には丁寧に返信するけれど、あちらの方の意見はスルーする」といった対応は、公平性の観点から極めて難しい判断を迫られます。全ての意見に個別に対応するリソースがない、という現実的な課題もあるでしょう。


また、地域の魅力を発信する上で、「SNS映えする」と話題の飲食店を取り上げれば、一時的に注目を集めるかもしれません。しかし、そればかりを繰り返していては、「特定のお店ばかりを優遇している」と見なされ、公平性が損なわれる恐れがあります。そもそも、そうした既に人気のある場所は、他のインフルエンサーや民間メディアがこぞって取り上げる対象であり、自治体のアカウントがそこに注力しても、独自の価値を打ち出しにくいという側面もあります。


この「何を選び、何を発信し、どう応えるか」という一つひとつの判断が、単なる運用テクニックの問題ではなく、そのアカウントの「公共性」、ひいては「存在意義そのもの」を問い直すことに繋がっていくのです。


■SNS時代の「公共性」とは何か?──「開かれた情報」がもたらす変化と責任


では、SNSが当たり前となった現代において、自治体が発信する情報が持つ「公共性」とは、具体的にどのような要素で構成されるのでしょうか。そして、テレビCMや広報誌といった従来のマスメディアを通じた広報とは、何がどう違うのでしょうか。


私たちKerzeが考える、SNS時代における自治体情報発信の「公共性」の最も大きな特徴は、「よくも悪くも、情報が閉じていない」という点です。


SNSを活用することで、情報が届く範囲は、これまでの広報手段とは比較にならないほど広がります。地元のテレビCMに出稿しても、その認知効果は主にその地域内に限られます。自治体の広報誌も、基本的にはその自治体内に住む方々への情報提供が中心であり、そこから外へ、二次的に情報が広がっていく動きは、なかなかコントロールできるものではありませんでした。


もちろん、SNSも情報拡散を完全にコントロールできるわけではありません。むしろ、ユーザーの興味関心をベースに、予測不能な形で情報が広がっていくのがSNSの特性です。自治体のアカウントの場合、最初にフォロワーとなるのは住民の方々が多く、地理的にはどうしてもその自治体周辺の人々に見られる傾向があります。


しかし、例えば特定の地域や興味関心を持つ層に向けた広告運用を行ったり、あるいはリール動画のような拡散力の高いコンテンツがアルゴリズムによって広く推奨されることで、これまでその街の名前すら知らなかったような人々が、その魅力に初めて触れる機会を創出できる可能性があるのです。これは、従来の広報活動ではなかなか難しかった、大きな変化と言えるでしょう。


このように、SNSは自治体にとって、これまでリーチできなかった層へも情報を届けられるという大きな「可能性」を秘めている一方で、その「開かれた」性質ゆえに、発信する情報の質、伝え方、そして受け手との関係性において、より高度な「公共性」への配慮と、それに伴う「責任」が求められる時代になったと言えるのです。


■SNSの「諸刃の剣」としての側面──見過ごせないリスクと、自治体が陥りがちな課題

さて、SNSが持つ大きな可能性について触れてきましたが、私たちはその一方で、SNSが「諸刃の剣」であるという側面、つまり、見過ごすことのできないリスクや課題についても、冷静に目を向ける必要があると考えています。特に、公的な立場である自治体からの発信は、一度信頼を損ねてしまうと、その回復には計り知れない労力と時間が必要となるからです。


1. 「信頼」を揺るがす、代表的なリスクとは?


まず、最も基本的なリスクとして、自治体のSNS運用において絶対に避けなければならないのが、「誤った情報を発信してしまう」というケースです。


閲覧者の方々は、自治体の公式アカウントからの発信に対して、「公の情報である」という一定の信頼を寄せています。だからこそ、発信する情報の正確性は、何よりも優先されるべき大原則です。例えば、観光情報であれば、関連する観光協会や施設の情報と齟齬があってはなりませんし、行政サービスやイベントに関する情報であれば、それは「確定情報」として受け止められるという前提で、細心の注意を払って発信する必要があります。


次に、「不適切なコミュニケーション」も、信頼を大きく損なうリスク要因となり得ます。

ここで私たちが特に懸念しているのは、いわゆる「お役所的」と表現されるような、機械的で温かみのないコミュニケーションです。


もしあなたがお店を訪れた際に、店員が全てのお客様に対して全く同じ定型文で応対したり、「その件については、あちらの資料に全て記載されていますので、ご自身でお読みください」といった対応をされたら、どのように感じるでしょうか? おそらく、決して心地よい体験とは言えないはずです。


しかし、驚くべきことに、SNSの運用において、同様のことが無意識のうちに行われてしまっているアカウントが少なくありません。


これは、単なる運用ノウハウの問題というよりも、「発信者側の姿勢」が問われる部分です。住民や関係者との信頼関係を築き、良好なコミュニケーションを目指す上で、このような対応は決して望ましいものではありません。


そして、特に注意が必要なのは、意図せずとも特定の誰かを批判したり、不快な思いをさせたりするような誤解を生む表現を用いてしまうことです。


例えば、ある取り組みを称賛するあまり、間接的に他の類似の取り組みや、それに関わる人々を否定するかのような印象を与えてしまうケース。


あるいは、場を和ませようとしたユーモアが、一部の人々にとっては不快であったり、差別的と受け取られかねない場合も考えられます。言葉の選び方一つ、表現のニュアンス一つで、思わぬ反発を招き、いわゆる「炎上」と呼ばれる状態に繋がる可能性も否定できません。


例えば、特定の地域住民や世代、職業などをステレオタイプ的に、あるいは揶揄するかのように表現してしまうこと。また、災害時などの非常にデリケートな状況下において、配慮を欠いた軽率な発言をしてしまうこと。個人のプライバシーに関わる情報を、本人の同意なく公開してしまうことなども、公共性を著しく損ない、自治体への信頼を失墜させる典型的な事例と言えるでしょう。


具体的なNGワードを全て列挙することは困難ですが、「この表現は、誰かを傷つける可能性はないだろうか?」「異なる立場の人からは、このメッセージはどう見えるだろうか?」といった多角的な視点と、慎重な吟味を常に心がけることが不可欠です。


2. 「バズ」や「フォロワー数」という目標設定の落とし穴


「とにかくバズらせたい」「フォロワー数を増やして、注目度を上げたい」――SNS運用を担当される方であれば、一度はそう考えたことがあるかもしれません。しかし、こうした目標設定が、時に自治体が果たすべき「公共的使命」と衝突する可能性があることにも、私たちは警鐘を鳴らしたいと考えています。


結論から申し上げれば、バズらせることやフォロワー数を増やすこと自体は、自治体のSNS運用における根本的な「目的」にはなり得ません。


なぜなら、多くの調査や事例が示すように、フォロワー数を増やしたからといって、それが必ずしも実際の行動変容(例えば、イベントへの参加者増、地域産品の購入増、移住・定住者の増加など)に直結するわけではないからです。


自治体が果たすべき「公共的使命」とは、第一に、住民の福祉向上や地域の持続的な発展に貢献するための「真摯な情報発信」ではないでしょうか。バズやフォロワー数は、あくまでその結果として付随してくるものであり、それ自体を追い求めるべきものではありません。


目標設定の段階で、フォロワー数のような表面的な指標ではなく、本来達成すべき「公共的使命」に資する指標(例えば、重要な情報への理解度向上、住民満足度の向上、地域課題への関心の喚起、具体的な行動への参加率など)を重視すること。この原点に立ち返ることが、何よりも大切なのです。


3. 私たちがこれまでの経験から学んだ、自治体SNSにおける「避けるべき罠」


これまでの私たちの経験や、様々な自治体様のSNS運用の事例を観察する中で、担当者の方が「つい陥りがちな思考の罠」や、「これは避けるべき」と考えるポイントがいくつか見受けられます。これらは、貴自治体のSNS運用をより良くし、本質的な成果へと繋げるために、ぜひ心に留めておいていただきたい点です。


  • 特定対象への偏重という罠

    特定のお店や施設、あるいは運営母体が同じ団体などを繰り返し取り上げる行為は、公平性の観点から慎重になるべきです。それは他の事業者への配慮を欠くだけでなく、アカウント自体の情報が偏り、多様性や魅力を損なうことにも繋がりかねません。

  • 無意識の「敵作り」という罠

    ある事業者や取り組みを称賛するあまり、結果的に他の事業者を貶めるような印象を与えていないか、常に俯瞰的な視点が必要です。「応援」のつもりが、無用な比較や対立構造を生み出していないか、細心の注意を払いましょう。

  • 過度な「属人性」という罠

    特定の職員の方を前面に出しすぎる運用は、一見すると親しみやすさを生むかもしれません。しかし、数年おきに人事異動が発生する自治体組織においては、その方が異動した途端にアカウントの魅力や運用ノウハウが失われてしまうという「再現性の喪失」という大きなリスクを孕んでいます。常に運用ガイドラインの整備やノウハウの言語化・蓄積を組織として並行して進め、誰が担当しても一定の品質を保てるような継続性を担保する必要があります。

  • 宗教施設への配慮不足という罠

    地域の文化財や観光資源として寺社仏閣などを紹介する際には、政教分離の原則という観点から、極めて慎重な配慮が求められます。過度な紹介や特定の宗派に偏った印象を与えるような発信は避け、あくまで客観的な情報提供に留めるべきでしょう。

  • 政治的中立性の欠如という罠

    特定の政党の活動を支持したり、特定の政治的なスタンスをアカウントとして明示するような投稿は、絶対に避けなければなりません。また、特定の議員のアカウントとの交流ばかりが目立つような状況も、自治体の公的なアカウントとしての中立性を疑われかねないため、慎重な対応が求められます。


これらの「罠」は、いずれも自治体のSNS運用における「公共性」という根幹に関わる問題です。SNSは、単なる情報発信ツールではなく、その自治体の姿勢そのものを映し出す鏡であることを、私たちは常に心に刻んでおく必要があるのです。


■SNSの「魔法の杖」としての側面──無限の可能性と、それを引き出すために


さて、SNSが持つリスクや課題について触れてきましたが、それらを理解し、適切に向き合うことで、SNSは自治体にとって、まさに「魔法の杖」とも言えるような、計り知れない可能性を秘めたツールとなり得ます。従来の広報手段では難しかった、地域と人々の間に新たな繋がりを生み出し、ポジティブな変化を促す力を持っているのです。


1. 「リアルタイムな双方向コミュニケーション」がもたらす、かけがえのない価値


SNSが持つ最大の魅力の一つは、やはりリアルタイムで双方向なコミュニケーションが可能であるという点です。これは、自治体と住民、あるいは地域内外の人々との関係構築において、これまでの広報のあり方を根底から変えるほどの、革命的な変化をもたらしました。


考えてみてください。自治体からの発信に対して、即座に「いいね!」やコメントといったリアクションがあり、時には具体的な質問や建設的な意見が寄せられる。そして、それに対して、自治体側も迅速かつ丁寧に応答する。こうした血の通ったやり取りは、自治体に対する親近感を育むだけでなく、これまで一方通行だった情報伝達ではなかなか見えにくかった、住民が本当に何を求め、何に関心を持っているのかという「生の声」や「ニーズ」を、よりダイレクトに引き出すことに繋がります。これは、従来の自治体広報ではなかなか実現できなかった、極めて価値のある側面と言えるでしょう。


例えば、新しい政策や地域イベントについて告知した際に寄せられる疑問や懸念に真摯に答えることで、住民の理解を深め、不安を解消し、より前向きな参加を促すことができます。また、何気ない日常の風景や、地域で頑張っている人々の小さな活動を発信することで、住民が自分たちの街の魅力を再発見したり、地域への愛着や誇りを深めたりするきっかけにもなるでしょう。


2. 「接触回数」という、見過ごせないマーケティング視点


マーケティングの世界には、「ザイオンス効果(単純接触効果)」という心理学の法則があります。これは、人や物事に対する接触回数が増えるほど、その対象への好感度や親近感が高まるというものです。実はこの考え方、自治体の広報活動においても非常に重要な視点となります。


SNSは、比較的低コストで、しかも継続的に情報を発信し続けることができるプラットフォームです。これにより、住民の方はもちろん、潜在的な観光客、移住を検討している方々など、様々なターゲットに対して、何度も繰り返し、その自治体の情報に触れてもらう機会を提供することが可能になります。


日常的にその自治体の魅力的な情報に触れることで、無意識のうちに親しみが湧き、いざ旅行の計画を立てる際や、新たな生活の場を検討する際に、その自治体が「ふと頭に浮かぶ候補(想起集合)」の中に入りやすくなるのです。これは、「多くの人に選ばれる自治体」を目指していく上で、非常に有効なアプローチと言えるでしょう。


3. 「公共の利益」に貢献するために求められる、「意識改革」と「新しい取り組み方」


では、自治体がSNSを真に「公共の利益」に資する形で活用し、その「魔法の杖」としての力を最大限に引き出すためには、どのような「意識改革」や「新しい取り組み方」が求められるのでしょうか。

まず何よりも大切なのは、「失敗を恐れず、積極的に人と関わっていく姿勢」だと、私たちKerzeは考えています。


SNSは、いわば「生き物」であり、「完成された情報を一方的に提供する場」というよりも、「未完成な部分も含めて、共に育てていくコミュニケーションの場」と捉える方が自然です。完璧を求めすぎるあまり、発信をためらったり、当たり障りのない、どこかで見たような情報に終始したりしていては、その可能性を十分に活かすことはできません。もちろん、前述したようなリスクへの細心の配慮は不可欠ですが、それを乗り越えて、住民との対話そのものを楽しむくらいの気概が求められるのではないでしょうか。


そして、「全てを効率化・合理化だけで推し進めない」という視点も、時には重要になります。


SNS運用は、時に非効率に見えるような、地道な一つひとつのコミュニケーションの積み重ねが、結果として大きな信頼や共感を生むことがあります。


人と人との繋がりを育む場として、また、自分たちの取り組みや地域への想いを、自分たちの言葉で積極的に広める場として、「楽しむ」という感覚を持ちながら積極的に活用していくこと。それが、結果として持続可能で、多くの人々に愛される魅力的なアカウント運営に繋がるのではないでしょうか。


さらに、こうした前向きな取り組みを組織として推進するためには、「管理職側の深い理解と積極的なコミットメント」が絶対不可欠です。


特に、様々な投稿内容に対する最終的な意思決定権を持つ方が、SNS運用チームの中に必ず参画していることが、初期段階においては極めて重要だと考えています。


最高意思決定者の方が、実際にどのようなプロセスで投稿が作成され、どのような反応があり、それが地域にとってどのような意味を持つのかという業務の全体像を肌で感じ、深く理解することで、担当者に安心して運用を任せられる信頼感が醸成されます。


ある程度軌道に乗り、運用方針やリスク管理体制が確立されれば、徐々に権限委譲を進めていくことも可能ですが、初期段階におけるトップの理解とリーダーシップは、SNS活用の成否を分ける何よりの土台となるのです。


4. 私たちが考える、SNSを「魔法の杖」として使いこなすための「心構え」と「譲れない価値観」


SNSを「魔法の杖」として効果的かつ倫理的に使いこなし、地域社会にポジティブな影響を与え続けるために、自治体が持つべき「心構え」や「大切にすべき価値観」として、私たちKerzeは以下の二点を特に強調したいと思います。


一つ目は、「どこまでも、閲覧者ファーストであること」です。

自治体職員側の都合や、組織内部の事情を優先するのではなく、あくまでも情報を届けたい相手、つまり閲覧者の方々が何を求めているのか、どのような情報に価値を感じ、どのような形で提供されれば最も心に響くのかを常に考え抜き、実践していく姿勢が求められます。


二つ目は、それと同時に、「自治体として何を達成したいのか、このSNS発信を通じて、地域にどのような未来をもたらしたいのかという、最も上位にある目標を明確に言語化し、組織全体で共有しておくこと」です。


そして、その崇高な目標が、日々の活動を通じてどの程度達成されているのかを客観的に把握するために、適切な数値的指標(KPI:重要業績評価指標)を設定し、定期的に測定・評価し、改善に繋げていくことも欠かせません。「閲覧者ファーストの徹底」と「明確な目標設定と効果測定」、この二つが両輪となって初めて、SNSは単なる情報発信ツールを超え、真に地域を豊かにする「魔法の杖」としての力を発揮するのです。


■「公共性」を高め、「信頼」を深めるSNS活用戦略──Kerzeが大切にする「思考法」と、お客様へのスタンス


SNSが持つ「可能性」と、そこに潜む「リスク」。そして、その力を真に「公共の利益」へと繋げるための心構え。ここまで、様々な角度から自治体のSNS活用について考えてきました。


では具体的に、日々の運用の中で、どのように戦略を組み立て、実践に落とし込んでいけば良いのでしょうか。特に、イベントへの集客といった短期的な成果と、地域ブランドの構築や住民との長期的な信頼関係といった、時に相反するように見える目標を、どのようにバランスさせていくべきか、悩まれる方も多いかもしれません。


1. 小手先のテクニックではなく、「徹底した理解」から全ては始まる


私たち株式会社Kerzeは、実はSNS運用における、いわゆる「バズる投稿の作り方」や「フォロワーを増やす裏技」といった小手先のテクニック論には、あまり重きを置いていません。

もちろん、効果的なハッシュタグの選定や、ターゲット層に合わせた投稿時間の最適化といった知識も、運用の一環として重要であることは理解しています。しかし、それらはあくまで、家を建てる際の「釘の打ち方」や「壁紙の選び方」のような、部分的な要素に過ぎません。


最も重要なのは、その家が「誰のために、何のために建てられるのか」という根本的な問いであり、SNS運用においては、「徹底的に顧客を理解すること」、つまり自治体であれば、「情報を届けたい閲覧者(住民の方々、観光客の方々、地域に関心を持つ全ての人々)を、心の底から深く理解しようと努めること」だと考えています。


彼らが日々何に興味を持ち、何に心を動かされ、どのような言葉に共感し、どのような情報に価値を感じるのか。どのような課題を抱え、行政に何を期待しているのか。こうした深い理解があって初めて、発信する一つひとつの情報が意味を持ち、単なる「お知らせ」を超えて、相手の心に響く血の通ったメッセージとなるのです。


その上で、様々な情報発信の「ニュース(話題性のある切り口や、伝えるべき本質的な価値)」を、戦略的に、そして誠実に組み込んでいくことが重要だと考えています。

そして、もう一つ欠かせないのが、「自分たちの街(自治体)が持つ、まだ光の当たっていないポテンシャルを最大限に理解すること」です。


同時に、私たちKerzeがクライアント様と関わらせていただく際には、まず可能な限り、その地域や組織に関するあらゆる情報――歴史、文化、産業、自然、人々の暮らし、そして抱えている課題や、大切に守り継いできた想い――に触れることからスタートします。


それら全てを深く、多角的に理解することで、初めてその街だけが持つ独自の価値や、他の誰にも真似できないオンリーワンの魅力、そして、まだ地域の人々自身も気づいていないかもしれない「宝物」が見えてくるのです。これこそが、真の成果を生み出すための、揺るぎない土台となると確信しています。


2. 私たちKerzeが、ご相談の際に必ず問いかける「本質的なポイント」


自治体の皆様からSNS戦略に関するご相談をお受けした際に、私たちKerzeが必ず問いかけること、あるいは、お客様と共に時間をかけて深く考えるようにしている「本質的なポイント」がいくつかあります。それは、表面的なSNSの活用方法やテクニックではなく、より根源的で、時に耳の痛い問いかもしれません。


  • 「結局のところ、あなたの自治体は、地域住民や社会全体に対して、何を最も大切にし、どのような価値を提供しようとしているのですか?」

  • 「5年後、10年後、この街がどのような姿であってほしいと願っていますか? そして、その理想の姿を、首長をはじめとする行政組織の仲間たち、そして何よりも住民の方々と、心から共有できていますか?」


こうした問いを通じて、まずは最終的に目指すべき「ありたい姿」や「提供すべき価値」についての、組織内での明確な合意形成を徹底的に行います。ここが曖昧なまま、あるいは担当者任せのままでは、どんなに優れた施策を打ったとしても、その効果は限定的となり、一貫性のないメッセージは人々の心に届きません。


さらに、

  • 「住民の方々を含め、あなたの地域に関わる全ての人々が、日々の暮らしの中で何を大切にし、何については、どのような形で扱ってほしいと心から願っているのでしょうか?」

  • 「これだけは絶対に傷つけてはならない、という、地域にとっての『聖域』や『タブー』のようなものはありますか? それは、なぜそれほどまでに大切にされているのでしょうか?」


といった問いも、私たちは非常に重視しています。これは、地域の人々が心の底から「何を大切にしていて、何を蔑ろにされたくないのか」を明確に理解し、尊重するためです。守るべき一線を正しく認識し、それに対する敬意を忘れないこと。それが、長期的な信頼関係を築き、地域に深く根差した活動を行う上での、大前提となるからです。


これらの問いに対する答えは、最初から明確である必要はありません。むしろ、私たちとの対話を通じて、皆様の中にある漠然とした想いや潜在的な課題、そして大切にしたい価値観が、少しずつ具体的な言葉となり、その輪郭を帯びていく。

私たちは、そのプロセスに、誠実に、そして辛抱強く寄り添い、共に考え、共に悩み、そして共に「答え」を見つけ出していく「伴走者」でありたいと考えています。


■おわりに:あなたの街の可能性を、共に考えるパートナーとして。


この記事では、自治体のSNS運用における「公共性」の重要性、SNSが持つ可能性とリスク、そして私たちが大切にしている本質志向の戦略アプローチについてお伝えしてきました。


日々の情報発信において、多くの課題や迷いに直面されているかもしれません。しかし、あなたの街には、まだ十分に伝えられていない魅力や価値がきっと存在します。


私たち株式会社Kerzeは、そのような「見えない価値」を共に発見し、それを多くの人々に届け、共感を広げるお手伝いをしたいと考えています。


私たちは、単にSNS運用を代行するのではなく、皆様が抱える本質的な課題に光を当て、持続可能な形で地域全体の活力を高めるための「仕組みづくり」を支援するパートナーです。


もし、この記事を読んで、少しでも私たちの考え方にご関心をお持ちいただけたなら、あるいは「自分たちの自治体の場合、具体的に何から始められるだろうか」といった疑問をお持ちでしたら、どうぞお気軽にお声がけいただけると幸いです。


株式会社Kerze(ケルツェ)


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