そのキャンペーン、「フォロワー」は増えたとしても、「ファン」は増えていますか?
- 株式会社Kerze
- 7月10日
- 読了時間: 9分
更新日:7月15日
このような方におすすめします
InstagramをはじめとするSNSを運用しているが、フォロワー数という数字の伸びと、実際の売上や事業への貢献との間にギャップを感じている中小企業の経営者・マーケティング担当者の方。また、施策の効果測定や目標設定のあり方に迷いがあり、より本質的で、戦略的な運用体制への転換を模索している方。
この記事から得られるもの
安易なフォロワー獲得施策が、実はブランドの「見えない負債」となり得る、その構造的な理解。そして、見せかけの数字(バニティメトリクス)に惑わされることなく、事業の持続的な成長に真に貢献するSNSの役割と、そのための戦略的な思考のフレームワークです。
内容の要点(3点)
キャンペーンの功罪: なぜ私たちは安易なキャンペーンに惹かれてしまうのか。その心理的・組織的背景を解き明かし、それがブランドにもたらす3つの「見えない代償」を具体的に解説します。
「質の高いファン」の重要性: 「数だけのフォロワー」と「真のファン」との決定的な違いを定義し、「虚栄の指標」に惑わされず、本質的な成果を追求するための視点を提示します。
戦略的であるための条件定義: キャンペーンが単なる「ばらまき」ではなく、事業全体の目標達成に寄与する「戦略的な一手」となり得るための、極めて限定的な条件を定義し、本質的なSNS運用のあり方を論じます。
「プレゼントキャンペーンを打ってフォロワーは増えたけど、お店の売上にはあまり変化がない…」「このフォロワーたちは、本当にうちのブランドのファンになってくれているの…?」「SNS運用にかけた時間と労力は、事業の成長にどう役立っているんだろう…?」
もし、あなたがSNS運用において、このような「もどかしさ」や「疑問」を感じているなら、少しだけ私たち株式会社Kerzeの考え方にお付き合いいただけないでしょうか。
私たちは、企業のマーケティング活動を支援する中で、お客様からご相談をいただいた際に、すぐに「では、キャンペーンでフォロワーを増やしましょう」とご提案することは、原則としてありません。
なぜなら、私たちは飛び道具的な施策に頼るのではなく、お客様の事業全体の「仕組み」と「本来の目的」を深く理解することを何よりも大切にしているからです。
その上で、SNSというプラットフォームがお客様の目的達成のために「今、本当に最適なのか」「具体的にどう活用すべきなのか」を丁寧に見極めます。
SNS運用は、あくまで広範なマーケティング戦略の一部分です。その効果を最大限に引き出すためには、事業全体の目標とのしっかりとした連携が不可欠なのです。
今回は、特にSNS運用において陥りがちなプレゼントキャンペーンの罠と、私たちが考える「本質的な成果に繋がる目標設定の秘訣」について、分かりやすく解説していきます。
第1章:なぜ「プレゼントキャンペーン」 の魅力に抗えないのか?
「フォロー&リポストで豪華景品が当たる。」この施策は、短期間でフォロワー数を急増させ、爆発的なエンゲージメントを生み出します。その分かりやすい成果は、非常に魅力的です。
短期的なKPI達成へのプレッシャー: 「今月中にフォロワーを〇人増やす」という目標に対し、即効性があるように見える。
企画工数の削減: 日々の業務に追われる中、ゼロからコンテンツを考えるより、定型的なキャンペーンは企画が楽に感じる。
競合他社の模倣: 他社が実施していると、「うちもやらなければ」と焦ってしまう。
これらの背景にあるのは、「フォロワーを増やしたい」という、あまりにも安直な、そして多くの場合、誤った目標設定です。
しかし、その「魅力的な成果」を前にした時、私たちは事業の本質的な問いを見失いがちです。
「このフォロワーは本当に顧客になるのか?」「この施策で、ブランドの価値は向上したのか?」「そもそも、私たちは誰に、何を届けたい事業なのだろうか?」
この問いを見失ったままの施策立案・実行は、長期的な勝ち筋から遠ざかる第一歩に他なりません。
第2章:安易なキャンペーンがブランドに残す「見えない負債」
一見華やかに見えるキャンペーンの裏側で、ブランドには着実に「見えない負債」が蓄積していきます。それは、後からでは取り返しのつかない深刻なダメージになりかねません。
1. 顧客の「質」の低下 – 集まるのは”ファン”ではなく”プレゼントハンター”
安易なキャンペーンで集まるのは、残念ながらあなたの商品に愛着を持つ未来の顧客ではありません。その多くは「プレゼント」だけが目的の、いわゆる”懸賞アカウント”層です。
彼らは商品にお金を払う意欲が低く、長期的な売上に貢献してくれる「LTVの高い顧客」にはなり得ません。結果として、フォロワーという「見せかけの数値」だけが増え、売上が一向に向上しない、という最も避けたい状況に陥るのです。
2. ブランド「価値」の毀損 – 「タダで何かくれるブランド」というレッテル
キャンペーンを繰り返すことは、自らブランドイメージを毀損する行為です。
「あそこは、いつも何かタダでくれる」「品質ではなく、ばらまきでしか注目を集められない」
このような認識は、顧客だけでなく同業他社にも広がります。「お金で人を釣ろうとしている」と、顧客を軽視している印象を与えかねません。一度定着した「安売り」のイメージを覆すのは、非常に困難です。
3. 既存ファンの「感情」の棄損 – 本当に大切にすべき人を傷つけていませんか?
最も深刻なのが、既存ファンへの影響です。日頃からあなたのブランドを愛し、定価で購入し、応援してくれているロイヤルカスタマー。彼らは、ブランドに興味もない人々へリソースが投下される光景を、どう感じるでしょうか。
「なぜ、いつも支えている私たちではなく、他の人を優遇するの?」
このような不満や失望が生まれるのは、当然の感情です。「お客様第一」という言葉が空虚に響き、大切にすべきファンが静かに離れていってしまう。これ以上の損失はありません。
そしてキャンペーン終了後、アカウントは「不健康な状態」に陥ります。フォロワー数だけが多く、通常投稿への反応は少ない。エンゲージメント率は急落し、プラットフォームからの評価も低下。かえって投稿が届きにくくなるという悪循環に陥るのです。
補足:もしもそれでもキャンペーンのような施策を行うなら
では、見せかけの数字に惑わされず、本質的な成果を出すためにはどうすれば良いのでしょうか。その鍵は、あなたのビジネス全体の「目的」から逆算して、SNSの役割と指標を戦略的に設計することにあります。
1. 「良い施策」と「悪い施策」の境界線
私たちが考える「良いキャンペーン」の絶対条件は、次の2つです。
費用対効果を定量的に試算できているか: 実施前に「勝ち負けのライン」を明確にし、大損しない設計になっていること。
既存ファンを大切にしているか: ブランドの世界観を壊さず、これまで支えてくれた顧客がむしろ得をするような設計であること。
目的と観測する指標を明瞭に設計できているか:どういった上流の戦略に対応する目的でこの施策は設計されているのか?そしてそれは上流戦略のどの指標を動かすために、今の施策の指標をどう動かすのか、そしてそのロジックは何か、これら3点が設計されていること。
2. キャンペーンが「戦略的な一手」になるための条件
単なるフォロワー稼ぎではなく、明確なビジネス目的と連動させることで、キャンペーンは有効な一手となり得ます。
例①:オフライン施策との連携(オムニチャネル)店舗への来店を応募条件にしたり、オンラインで当選した商品を店舗で受け取れるようにしたりと、オンラインとオフラインを繋ぐ「体験」を設計する。
例②:質の高いUGC(口コミ)創出を目的とするキャンペーン施策のような不特定多数へのばらまきではなく、信頼できるインフルエンサーやファンに商品を試してもらう「ギフティング」を行う。第三者による率直なレビューは、何よりも信頼性の高いコンテンツとなり、未来の顧客の購買を後押しします。
3. すべての活動は「最終ゴール(KGI)」のために
SNS運用は、それ自体が目的ではありません。あなたの企業が達成したい最終的なビジネス目標(KGI:重要目標達成指標)、例えば「年間の売上〇〇円達成」から逆算して、SNSで追いかけるべき中間目標(KPI:重要業績評価指標)を設定すべきです。フォロワー数の増加も、このKPIの一部として意味を持つ場合はありますが、それが最終的なKGIにどう貢献するのか、という視点が常に不可欠です。
結論:飛び道具ではなく、「お客さま」と向き合う
ここまで、プレゼントキャンペーンの功罪についてお話ししてきました。私たちが最も伝えたいのは、SNS運用に魔法の飛び道具はない、ということです。アカウントを本当に成長させるのは、結局、地味で、泥臭い活動の先にしかありません。
What:お客様は、どんな情報が欲しいのだろうか?
How:本当に発信すべきコンテンツの形式とは、どんなものだろうか?
この問いに対して、一つひとつ丁寧にリサーチと試行錯誤を繰り返し、正解を見つけていく。それこそがSNSマーケティングの本質であり、揺るぎないブランド資産を築く唯一の道だと、私たちは信じています。
「見せかけの数字」に惑わされることなく、本質的なアカウント成長を目指したい。日々の努力が「正しい方向に向かっている」という確かな手応えを感じたい。
もしあなたがそうお考えなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。小手先のテクニックではなく、あなたのブランドの価値を共に育てていくパートナーとして、力になれるはずです。
■まずは、あなたの「現在地」と「目指す未来」をお聞かせください
「何から相談すればいいかわからない…」「うちの事業でも、相談していいのだろうか…」
全く問題ありません。むしろ、そうした段階からのご相談こそ、私たちがお役に立てる場面かもしれません。
私たちの支援は、まず皆様の抱える背景や制約、そして目指す未来(目的)を深く、丁寧に理解させていただくことから始まります。対話を通じて本質的な課題や目指すべき方向性が見えてくることも多くあります。
まずは一度、ご相談からはじめませんか?ご一緒に、あなたの、そして皆様の未来に向けた課題解決と成長を考えさせていただければ幸いです。
■大切なご縁のために
弊社は、提供するサービスの品質を何よりも大切に考えております。そのため、既にご縁をいただき、継続的に支援させていただいているお客様への責任ある関与を最優先とさせていただいております。
とはいえ、新たな挑戦と誠実に向き合う方々との出会いは、私たちにとっても大きな喜びです。皆様との大切なご縁を通じて、少しでもお力になれることを願っております。お問い合わせいただけましたら、担当者より折り返しご連絡差し上げます。皆様の挑戦に貢献できる機会を、心より楽しみにしております。
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